「Once in a blue moon」(13)


※ こちらは「Half moon」という話のオリキャラ(蓮)が中心となった話で未来話です。
  爽風も出ますが、主人公ではないので受け入れられる方以外はゴーバックで。

★「Half moon」は 目次 から。
こちらは「Once in a blue moon」 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 の続きです。 


☆ 川嶋蓮が好きだと自覚した麻美。麻美の恋はどうなっていくのか・・・?


















・‥…━━━☆ Once in a blue moon 13 ‥…━━━☆


















楽しい時間はあっという間に過ぎていった。皆が年上というのもあったかもしれない。

私は普段よりずっと幼く見えたんじゃないだろうか・・・?と後で気になった。

でもとにかく居心地が良くて、 ”また来てね” と言う爽子さんに ”絶対来たい!”

と一つ返事で言ってしまった。そんな私に本当に嬉しそうに笑うから私まで嬉しくなる。

そして視線を下に降ろすとゆづちゃんも同じ顔で笑っていた。なんて優しい笑顔だろう。


(やっぱ天使だな・・・)


私はその素直な笑顔と優しい空間にすっかり魅せられてしまった。



* * *



「すみません・・・いいんですか?」

「駅まで同じだから」

「でも、泊まるんじゃなかったんですか?」

「見たろ?あの二人。さすがにジャマだって」

「・・ですよね」

「あ、敬語止めてくれる?年上助長されているような気がするから」

「あ・・・うんっ」


そう言って、川嶋蓮はにこりともせずに前を歩いていく。思いがけなく一緒に帰ること

になった、二人っきり・・・。でも、さっきから無口な彼とは会話が途切れがちだった。

ちょっとぶっきらぼうな言い方や表情が乏しいから誤解されやすいかもしれない。何

を考えているか確かに分かりにくい。でも、私は見てしまった。いろいろな川嶋蓮を。


どくん、どくん


(やばい・・・・やばいよ)


ずっと心臓がうるさい。いつもなら沈黙なんて平気なのに。何も思ってない人なら

”へ” なのに。今は”へ”なんかじゃない。気の利いた言葉さえ浮かんでこない。


沈黙に耐えられなくなった私は思わず切り出す。ずっと心の中で思っていたこと。


「あの・・・この間、社員食堂で会ったの覚えてますか?あっ覚えてる?」

「うん。覚えてるよ」


そして、蓮は突然立ちどまって麻美を見つめた。


「な・・・何かついてます??」

「・・・・・」


ドクン、ドクン、ドクンッッ


彼に見つめられると、心臓の音がやばい。見つめられると視線を外せなくなった。

でも冷静に”かっこいいな・・・”なんて思ってる自分も笑える。

すると川嶋蓮は私の髪に手を掛けた。一瞬状況が分からなくなった。頭の後ろの方

でパチンッという音が聞こえた。


(え・・・・?)


バサッ


「この方が似あう」


蓮はそう言ってニッと笑うと、麻美の髪留めを取った。長い髪がばさっと広がる。


どっき〜〜〜〜〜んっ


「・・・・」


心臓が壊れるかと思うほどすごい衝撃が走った。そして今の顔が脳裏に焼き付く。


「わ・・・笑ったっ・・・」

「え?」


彼の笑顔を見た瞬間、すべてがぶっ飛んだ。


後から考えたらよく出来たな・・・この行動と思った。それも恋を自覚してすぐなのに。

彼のこともよく知らないのに。

でもその時は無我夢中で本能のまま彼の服を掴んでいた。


「ずっと好きです!!つ・・・付き合って下さいっっ!!」

「・・・・!」


夜空にはきれいな満月が私たちを照らしていた。



* * *


人生は何が起こるか分からない。ビックリ箱のようなものだ。開けるまで予想がつか

ない。ある程度想定していても外れてしまう。あまり自分の人生に期待をしていない

だけに予想外のことが起きると嬉しいもんなんだなぁ・・・。


「あのねっ・・・それはすごいことだと思うのっ!!」

「え?」


爽子さんが興奮気味に拳を握りしめて言った。

あれから一ヶ月が経ち、また落語鑑賞会がやってきた。この日はゆづちゃんが実家

へ行く日とかで爽子さんと二人でランチをした。ずっと言いたかったけど、恥ずかしく

てなかなか言えず・・・。メールを打とうと思っては止めるという行動を繰り返すうちに

一ヶ月が経過していた。そして勇気を出して今までの経緯と川嶋蓮に告白したことを

伝えた。実は信じられないのだがあの夜、突然の告白の結果、あっさりOKをもらった

のだ。あの時はとにかく嬉しくて・・・・踊って帰ったのを覚えている。

あの夜・・・。


* *


『・・・いいよ』
『え??』


私は耳を疑った。今、”いいよ・・・”って言った?


『ええ〜〜??』

『あんたのことまだよく知らないから、段々って感じで良かったらだけど・・・あんた

 ならいいよ』

『ま・・・まじっすか?』

『まじっす。あんた群れないじゃん。そういうとこ良いと思ってた』


見てくれていた。私のことを見てくれていた。それだけで飛び上がりそうだった。

その時はそれで別れた。


かくして、私たちは初めてちゃんと喋った夜に付き合うことになった。でも、次第に

不安になっていった。もしかして、川嶋蓮は誰とでも適当に付き合うのだろうか?

と・・・・。


* *


「だってね、蓮さんこの数年誰ともお付き合いしていないと思うのだけれど・・・」

「ほんと??」


爽子さんはそう言って、手をぶんぶんと振って”無責任な発言をしてしまった!”と

焦っていたけど、それが本当だとすると・・・かなり嬉しい。


麻美は心臓がトクンッとなった。


「すっごく・・・お似合いだと思っていたの。・・・嬉しい」


爽子さんが涙を浮かべて本当に嬉しそうに言ってくれるから、実感が湧く。なにせ

一ヶ月経ってもあまり状況は変わらず、川嶋蓮の仕事が忙しくちゃんと会えていな

い。だからあれは違う意味だったんじゃないかとか、夢だったんじゃないかとか思っ

て不安になっていた。


「うん・・・ありがとう」


私はやっと実感した。川嶋蓮と付き合うこと。そして幸せな未来を一緒に作っていけ

るのだということ。だけど、それと同時に気になった。


”『だってね、蓮さんこの数年誰ともお付き合いしていないと思うのだけれど・・・』”


川嶋蓮はどんな恋愛をしてきたのだろう・・・?と。




「Once in a blue moon」 14 へつづく















あとがき↓

「鮎川千紗」リクエストありがとうございます。投票された方は何かないですか?折角
票を入れて下さったので、見たいお話があったのかな・・・と思って。まだ受けつけます
のでよければメールでも拍手コメントでも下さいね。(拍手コメントは管理人しか見れない
ように選択できます)今年中に1〜2個ぐらいオリキャラ投票のお話を書ければいいなぁ
と思っています。