「Once in a blue moon」(19)


※ こちらは「Half moon」という話のオリキャラ(蓮)が中心となった話で未来話です。
  爽風も出ますが、主人公ではないので受け入れられる方以外はゴーバックで。

★「Half moon」は 目次 から。
こちらは「Once in a blue moon」1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 の続きです。 


☆ 蓮の過去を聞いて動揺した麻美はあの夜、先に帰った。その後の麻美は・・・?
麻美と蓮の回です。




















・‥…━━━☆ Once in a blue moon 19 ‥…━━━☆



















「はぁ・・・っ」


今日も仕事が全く手につかなかった。彼に過去があるのは分かってたこと。この年で

過去がない方が不思議だ。それなのになんでこんなショックを受けているのだろう。

いや、本当は分かってる。私は嫉妬しているんだ。川嶋蓮の・・・と考えただけで苦

しくなる。なぜならまだ彼の中でその存在が消えてないことを知っているから。


「・・・どんな人なんだろう」

「誰が?」


麻美は一瞬止まった後、”わぁぁ〜〜っ”と声を上げた。目の前に当の本人がいた。


「何ぼーっとしてんの?行くぞ」


この日は仕事帰りに川嶋蓮と約束していた。待ち合わせ場所にいきなり現れた蓮に思

わず飛び上がってしまった。今日、誘ったのは私。先週末、爽子さんの家に行った後

からちゃんと喋れてない。ずっと罪の意識がズキズキッと私を襲っている。勝手に、

蓮の過去を聞いてしまったこと・・・。彼に嫌われたくないっ。


(よしっ!)


「川嶋蓮」

「へ?」


麻美は大きく深呼吸すると、強い意志を持った目で蓮を見つめた。そしてばっと勢い

よく頭を下げる。


「ごめんなさいっ!!」


蓮は目をまん丸くする。麻美はゆっくりと頭を上げ、表情を曇らせながら言った。


「お・・怒ってるよね?そうだよね・・・っ嫌がってたのにね・・私っっ!!」


その時、一瞬何が起こったのか分からなかった。気づくと、私は川嶋蓮に強く手を引

かれて、路地にいた。


「・・・あれ?」

「危ねーだろが、道の真ん中で。車に引かれたいのか?」

「あっ・・・」


ハッとして横を見ると、車がびゅんびゅん走っていた。周りを全く見ていなかった自

分に驚く。川嶋蓮といると調子が崩れっぱなしだ・・・。


どくんっ


そして気づくと、壁にもたれている私を囲むように川嶋蓮が壁に手をついていた。い

きなりの至近距離に心臓が大きく動く。


「で、何?」


(やばいなぁ・・・やっぱかっこいいよ)


最初は付き合うことができたことが嬉しくて、一緒に居られるなんて夢みたいで・・・。

でも今はもっと欲張りになってる。もし川嶋蓮が離れていったらどうなるんだろう?

諦められるのだろうか?普通になれるのだろうか・・・?

そんなマイナスのことばかり考えるようになった。

どうしようもなく私は彼に・・・溺れている。


「何・・・泣いてんだよ」


蓮に言われて気づいた。私は泣いていた。そして段々、悲しくて涙が止まらなくなった。

川嶋蓮と離れるなんて、絶対嫌だ。すがってでも側に居たい。


「うぅっ・・ふっ・・ごめっ」


その時、さらっと川嶋蓮の髪が私の顔にかかった。


「はぁ〜そんなに俺が信用できないのかよ」

「違う・・ちがうのっ。探るような真似をしたことを・・・謝りたくて」

「探る?」

「あのっ・・・川嶋蓮の元カノのこと・・・っく」

「あ〜あのこと。しょーたに聞いた」


どくっっ


なんて正直な心臓だろう。ものすごい速さで脈打ってる。私は怖くて蓮の顔が見れな

かった。


「怒ってっ・・る、よね」


どくん、どくん


恐る恐る視線を上げると、熱い川嶋蓮の目とぶつかった。また心臓が飛び跳ねる。蓮

はふっと息を漏らすと優しい顔で微笑んだ。


「・・・怒ってなんかないよ。こっちこそ悪かった。麻美をそんなに不安にさせてる

 なんて思ってなかった」

「うぅぅ〜〜〜〜っ」

「ちゃんと答えるから、何でも聞けよ・・・わっ」


がばっっ


私は思わず川嶋蓮に抱きついた。好きで、好きでたまらない。この人を幸せにしたい。

私が幸せにしたいけど、もしそうでなくても川嶋蓮が幸せでいて欲しいとその時思った。


「好き・・・大好き」

「またっ・・お前なぁ〜」


川嶋蓮はそう言いながらも、熱いキスをしてくれた。その後、やっと私は川嶋蓮と向

き合えることになる。美穂さんという彼女がいたこと。その彼女が精神病でその原因

を作ったのは自分だったから支えていくつもりだったということ。そして、いまだに

美穂さんとはちゃんと分かり合っていないこと・・・。でも今は全く恋愛感情はない

と彼は言った。


ベッドの中で、優しく髪を撫でられると私はやっと安心できた。まるで宝物に触れる

ように髪を撫でる。すごく愛されてるって思う。きっと彼は離れたりなんかしない。

だから、信じていたい・・・。


「美穂さんって・・・きれい?」

「はぁ?またその話・・・」

「あっ!!何でも答えるって言ったでしょ〜」

「はいはい。麻美が一番きれいです」

「もぉ〜〜〜っ嘘だ!!」


あはは〜〜〜っ


枕を投げつけながら彼に甘える。こんなSWEETでいいのかと思うほど甘くて溶けそう。

このまま時間が止まって欲しいと思うほど幸せなのに、止まって欲しくなくて。蓮の

ことをもっと知りたい。でも知るのが怖い。私は今、そんな矛盾の中で生きている。


パサッ


癖なのか私の髪を何本かつまんでは落とす動作を繰り返す蓮。その仕草にどきどきし

ながらもふと脳裏を霞める。”こんな彼を美穂さんも知ってるんだ・・・”と。その時、

胸の奥に鈍い痛みを感じた。


(あ・・・っ)


眠りそうな蓮に私はそっと聞いた。


「・・・美穂さんも、髪・・・長かった?」

「・・・そうだな」

「・・・・」


ずきんっ


聞いておきながら、蓮の返事に妙に落ちている自分がいた。なぜなら、考えたくもな

い想像をしてしまったから。

まさか、私に美穂さんを重ねている・・・?


(あぁ"〜〜〜〜〜〜〜〜っなんて私は嫉妬深いのっ!!)



でも私はその後も髪を切れなかった。恋愛は好きになった方が負けだという。くやしい

けどそうなのかもしれない。私は自分に自信が持てなかった。髪を切ってしまったら、

川嶋蓮が離れていくような気がしていた。



その時の私は自分のことでいっぱいで何も分かっていなかった。

川嶋蓮の心の傷がどれだけ深いものなのかを。そして背負っていけると思っていた自分

がどれだけ傲慢だったのかを・・・。






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あとがき↓

オリキャラ同士を書くのも結構楽しい。蓮の恋愛話を書きたかったので満足。ここ
で満足したらいけないけど(汗)以前から三角関係の話があると必ず恋に破れた方
が好きだった私。大分昔のドラマですが(年齢バレる〜〜)「ひとつ屋根の下」で
は完全にちぃ兄ちゃん派でしたねっ!!だから最後は嬉しかったなぁ。あのドラマ
大好きでした。関係なくてすいません。