「Once in a blue moon」(12)


※ こちらは「Half moon」という話のオリキャラ(蓮)が中心となった話で未来話です。
  爽風も出ますが、主人公ではないので受け入れられる方以外はゴーバックで。

★「Half moon」は 目次 から。
こちらは「Once in a blue moon」 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 の続きです。 


☆ 麻美は気になっている人、蓮が爽子と翔太の知り合いであることを知る。自分が
  一緒に居るこの空間が信じられなかった。そして新たな蓮を知って・・・?


















・‥…━━━☆ Once in a blue moon 12 ‥…━━━☆













おいしい料理に楽しい会話。そして好きな人達ばかりが集まる場所。社会人になって

5年という月日が何気なく過ぎていった。人生こんなもんだろう・・・と達観してい

た私はそれが当たり前だと思っていたし、何の期待もしていなかった。子供の頃から

冷めていると言われていて、自分のことさえ傍観者のように見ているところがあった。


でも・・・なんだろう。この感じ。すごく楽しい。


思わずはしゃいでいる自分に驚く。そんな私を見て、ゆづちゃんは天使のように笑う。

なんだか私の気持ちに寄り添っているようで不思議に心が温かくなった。笑顔が絶え

ない空間にいつまでも居たくなった。


麻美は穏やかな表情で爽子と翔太を見つめて、独り言のように呟いた。


「結婚って・・・悪くないなぁ」


すると、その場が一瞬し〜〜〜んとする。麻美は自分が言ったことにハッとして焦

ったように目を泳がせた。


「いや・・・その、二人を見て素直に思ったわけで・・・っ」

「ははっ、ありがと。結婚と言うより・・・・」


翔太は照れた表情で笑うと、ちらっと爽子を見て言った。


「好きな人と一緒にいることが幸せなんだと思うよ」


爽子と翔太は二人で顔を見合わせ照れている。そんな二人に蓮は苦笑すると、から

かい気味に言う。


「ゆづ〜〜邪魔者はリビングに去ろう!ご馳走様!ほら、アンタも」

「あ、はいっ」

「蓮〜〜〜〜/////」


あはは〜〜〜〜〜〜っ


ゆづちゃんも川嶋蓮に抱き上げられてケラケラ笑っている。


本当に驚くほどラブラブだ。なんてお似合いなんだろう・・・。


二人は高校の同級生だと言った。これだけ長くいるのに何だろう・・・・全然慣れ合い

みたいなところがない。むしろ最近出会ったドキドキ期のようにも見えるから不思議だ。


(それにしても・・・川嶋蓮がいる前で私は何をぺらぺら喋っているんだろっ)


麻美は結婚の話をしたことに今更ながら急に恥ずかしくなってきた。


食後、蓮は結月とすごく楽しそうに遊んでいた。高い高い〜をしたり、肩車などを

してはしゃいでいる姿にまた新たな一面を見たようで麻美は目を輝かせる。

翔太もそんな二人を見ながら呟いた。


「蓮さ・・・ゆづといる時すごく楽しそうだよな」


麻美はハッとして夢中になっていたことを隠すように冷静を装って返事した。


「本当にびっくり。会社ではあんな顔見たことないから」

「だよな。ははって・・・瀬戸さんは蓮のこと知ってたんだね」

「あっ・・・はい。隣の部署だからさすがに・・・」

「だよなっ」


どくんどくん


(やばいやばい・・・焦っているよ私)


麻美はいつも通りの自分でいられないことに動揺していた。


(最近恋してないからなぁ・・・)


えっっ・・・恋・・・?


どくんっ


「ーさん・・・瀬戸さん?」

「は、はいっっ」


麻美がびくっとして返事すると、翔太はくすっと笑って言った。


「敬語とかいいから。爽子の友達でしょ」

「あ・・はいっ・・・いや、うんっ」

「あはは〜〜っ」


そう言って爽子さんの旦那さんはくったくのない顔で笑った。なんて話しやすい人

なんだろうと思った。きっと裏も表もない。だからかな・・この時、まだよくも知らない

旦那さんに思わず聞いてしまった。


「川嶋さんは・・・結婚しないんですか?」

「え?」


麻美の問いかけに翔太が驚いたように聞き返すと、麻美は恥ずかしそうに言った。


「・・・ごめんなさい。いや、漠然と子どもと一緒にいるのが似合うから・・・・」

「はは・・・そーだね。でもそう言うことは本人に聞くといいんじゃない?」


どくんっ


「はい。ごもっともです・・・・」


私は無意識に出た狡い下心を旦那さんに見透かされたようで恥ずかしかった。探るよ

うな真似をした自分自身がたまらなく・・・嫌だった。こんなの自分じゃないって思った。


麻美は視線を泳がせると、飲み物を口に含み落ち着かせた。翔太はそんな麻美を見

て優しく微笑む。


「これだけは言っといてあげる」

「え?」


麻美が顔を上げると、翔太はニッと笑って小さな声で言った。”彼女募集中!”

麻美は身体がかっと熱くなるのを感じた。


(やばい・・・・見破られている)


「爽子〜〜〜手伝うよ」


翔太は爽やかに髪を揺らして、台所でおつまみの用意をしている爽子のもとに嬉しそ

うに走っていく。


(まじ・・・爽やかだなぁ)


だけど、”自分”を持っている人だと感じた。一筋縄ではいかない・・?


その時パッと川嶋蓮と目が合った。


どきっ


「な、何でもないですよ。お気になさらず」

「?」


川嶋蓮は首を傾げながらまたゆづちゃんとの遊びに戻った。その姿をずっと見ていた

くなった。というか自然に見てしまう。


初めて自分が自分でなくなったのは高校の時、初めての恋をした。恋って不思議だ。

新たな自分を発見したり、恥ずかしい自分を見てしまう。今・・・私はとっても自分が恥

ずかしい。つまりこういうことだ。


私・・・川嶋蓮が好きなんだ。




「Once in a blue moon」 13 へつづく














あとがき↓

いやぁ〜こんなマニアックな話すみません。麻美はクールだけどかわいい。そんな
感じで書いていきたいです。ところで、「鮎川千紗」を投票してくださった方、どんな
お話がいいんでしょう・・・?他のお話を先書き始めてもいいですか?(一応、一位の
座を尊重してみる( ̄ー ̄)ニヤリ