「Once in a blue moon」(20)


※ こちらは「Half moon」という話のオリキャラ(蓮)が中心となった話で未来話です。
  爽風も出ますが、主人公ではないので受け入れられる方以外はゴーバックで。

★「Half moon」は 目次 から。
こちらは「Once in a blue moon」1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 の続きです。 


☆ 蓮を知るほど、想いが強くなっていく麻美。そして麻美にはもう一人知りたくなる人物がいた。




















・‥…━━━☆ Once in a blue moon 20 ‥…━━━☆



















その後、爽子さんとは月1の落語鑑賞会の他に落語同好会というのに入り、会う機会

が増えた。寄席の中の掲示板に会員募集の案内があり、それを見つけた爽子さんは大

学以来と目を輝かせていた。大好きな爽子さんと会えるのは嬉しくて、またその帰り

に爽子さんの作ったご馳走を食べるのが何よりの楽しみになっていた。


「爽子さんみたいに料理上手くなりたいなぁ〜」

「そんな・・・良かったら、今日の夕食一緒に作ってみる?」

「ほんとっ!?やりたい」

「うんっ。何にしようかなぁ」


同好会の後、恒例の爽子さん家のへお邪魔した。同好会がある日は両親に預けている

らしく、ゆづちゃんには会えなかった。あまり料理は得意でない私だけど、爽子さん

と一緒にすると楽しい。エプロンを借りて一緒に台所に立つ。


「あれっおかしいなぁ〜」

「あ・・・それはこうがいいかな・・あっ!」

「え?」

「す、すみません・・・出しゃばっちゃって」

「へ?全然っ。さすが爽子さん!教えてもらえて嬉しい」


そう言うと爽子さんはぱぁぁっと嬉しそうに笑った。


(かわいいなぁ・・・この人)


つくづく思う。すごい人なのにこの謙虚さ。なんだろう・・・胸がきゅんっとなる。


最近、落語研究会に入ってまた新たな発見をした。

麻美は先日の出来事を思い出す。


★゜・。。・★゜・


一つ一つのことをとても一生懸命取り組む爽子さん。また研究熱心で、落語もとても

上手い。そして人の気づかないところで雑用をやっている。それも嬉しそうに・・・。

すごいとは思うけど、そこまでする必要はあるのだろうか?と心の中では思っていた。


その日も資料を揃えたり、借りていた部屋の掃除をしたり、と爽子さんは最後まで残

っていた。私は思わず聞いた。


『そんなこと爽子さんがやらなくていいんじゃないの?』

『あ・・・ごめんなさいっ・・待たせてしまって』


爽子さんは私を見つけると慌てた様子で言った。


『私が勝手に待ってただけだから。でも・・・どうしていつもそこまでするの?』


その日の私はちょっとイラついていたような気がする。できない上司に理不尽なこと

を言われたことが頭に残っていた。


『・・・誰かに喜んでもらえたら私が嬉しいから』

『喜んでもらうって・・・誰も見てないよ』

『えっと・・・見てもらうというより、自分がやりたいだけでっ・・自己満足です』


★゜・★゜


その時は分からなかった。ただ、彼女の性格から見返りは求めてないのが分かる。

働くのが単に好きなのか・・・と思ったこともあった。でも、それだけじゃなかった。


ちょっとした場面で彼女が用意したものなどが役に立って” これ欲しかったんだ〜 ”

なんて声が聞かれると嬉しそうに微笑む彼女。


ああ・・・そうか。人が好きなんだと思った。


見た目は華やかな花ではないかもしれない。でも、吹雪の中でも折れずに咲いている

花のように、強くて凛と咲く花。それはきっと本物の愛を知ってるからだ。だから人

を大切に思えるのかな・・・。そんな彼女に憧れずにいられない。


爽子さんがいつか言ってたことがある。

”私、言葉足らずみたいで時々誤解されるの”・・・と。

その時の彼女の目は寂しそうだった。

自分は爽子さんのようにはなれない。でもその解りにくい彼女を”解る”自分が少し誇

らしかった。そして時々風早さんの気持ちが分かる。自分だけが解っていたらいい。

他の人に簡単に解って欲しくないなんて、変な独占欲なんか生まれたりして。


(ーってヘンタイかっ!私)


「ははっっ」

「?どうしたの?麻美ちゃん」


料理をしながらトリップしていた私を爽子さんは不思議そうに見つめた。爽子さんだ

からかな?こんなことも素直に言える。


「私、人に憧れたのって初めてかもしれない。・・・羨ましいの爽子さんが」

「えぇぇっ??」

「だって・・・私、川嶋蓮と付き合ってから自分にどんどん自信がなくなっていく」


爽子さんは料理の手を止めて、真剣な表情で私を見る。私は蓮のことで悩むと爽子さん

に相談していた。いつも一生懸命聞いてくれる。


「私も・・いつも自信がなかったよ。翔太くんとお付き合いしていて。あ、今もだけど」

「爽子さんでも?」

「わ、私だからです。どこがいいのかな?って今も思うよ〜」

「え?爽子さん素敵だよ。きれいし」

「あわわっ・・・思いがけないサービス・・ありがとう」

「いや、私、社交辞令言えないから」

「わわっ」


そう言うと爽子さんは大きく目を見開き、いかにもきょとっている。年上なのに無垢

だなぁ〜なんて思ってしまう。あまり言われ慣れてないのかな?不思議だ。あれだけ

風早さんをヤキモキさせているのに気付いていないのかな?意外と自分のことを分か

っていない爽子さんに驚く。


(もしかして、ものすごく恋愛音痴だったりして・・・)


「でも、それを言うなら麻美ちゃんだよ。初めて見た時、なんてきれいな人だろう〜

 って思ったよ・・・」

「ははっありがと。でもさ、爽子さんのことを好きになった人今までいたでしょ?」

「えっ?え・・とっ・・うんっ」

「どんな人??一人教えてっ!!」


恋バナに花を咲かせているというよりはちょっと興味本位だった私の真意を見透かさ

れたのか、爽子さんは先ほどまでのきらきらした目を少し曇らせた。


どきんっ


(あっ・・やばっ)


「あっごめん・・・聞きすぎた」


私は焦った。爽子さんには嫌われたくない。人には必ず距離感が必要だと思っている。

どんなに関係が深まっても入ってはいけない場所があるのだ。ついつい爽子さんのこ

とを知りたくて先走りしてしまう時がある。こんな自分は初めてだった。


「・・・とてもいい人だよ」


爽子さんは私の言ったことにゆっくり首を横に振ると、そう言って優しく微笑んだ。

どんな私も受け入れてくれる心から優しい人。だからもっと知りたくなるんだ。

” いい人だよ ”ということは今も知っている人なのか?なんて深読みしてしまう。

どんな人も受け入れようとする爽子さんは風早さん以外の人に恋愛感情を持たれたら

どんな風になるんだろう?


(・・・風早さん絶対ヤキモキしそう)


「さ、できたっ・・・麻美ちゃん、手伝ってくれてありがとう」

「わぁ〜美味しそう。こちらこそありがとう」


私たちはにっこりと笑い合った。

その夜もいつも通り、二人のラブラブな風景を見て蓮がからかい、風早さんが照れる。

和やかな雰囲気は全部二人が醸し出すもの。


”『・・・何もないカップルなんてないだろう。二人は遠恋だったしさ』”


以前、蓮が言っていたことを思い出す。

興味があるから知りたくなる。爽子さんのこと。そして川嶋蓮のこと。



そんな私の思いが通じるように、二人のことを知る機会がすぐにやってくることになる。


でもそれは、川嶋蓮の過去を知る始まりでもあった。










「Once in a blue moon」21 へ


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あとがき↓  

過去の話に沢山コメントを下さった方々、ありがとうございます(´ε`*)ゝ エヘヘ
楽しんでもらえたと思えて嬉しいです。マニアックなこの話にも拍手をありがとう
ございました。この話も20話になりましたねぇ。さてどんだけいくんだろう??
30話は確実だと思います。相変わらずまとめられず、すみません。そしてここで
また、ちょっと脱線。3月感想で書いた、第三者目線の話をUPしたいと思います。