「Half moon」(89)

社会人の二人の物語。オリキャラ祭り。オリキャラ紹介⇒(1)をご覧ください。

風早と爽子は再会を果たし、一緒にいることの幸せを噛みしめた。同じ気持ちを感じ合った
二人の絆はさらに深まった。

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それではどうぞ↓
































*************



二人は会えなかった時間を埋めるように、沢山の話をした。誤解から生んだ今回のこと。

爽子の気持ちは何一つ変わっていないことに気付くと、風早は自分の精神力の弱さに落

ち込んだりもした。結局、高校時代の友人にも心配を掛けたり、何より爽子に悲しい想い

をさせてしまった。そして行きつく想いの先はいつも同じ。


結局、俺が爽子を好き過ぎるんだよな・・・。


分かってはいるけど、押さえることなんかできない。あの目、仕草、表情、君の全てが俺

を夢中にさせる。そして、全部欲しくなるんだ。だからまた繰り返すのかな・・・。


「でも・・・もうあんなことはごめんだな・・・」

「え?」


横を歩く爽子が不思議そうに風早の独り言に反応した。


「あ・・・漏れてた。心の声が。ははっ」

「・・・・」


お日様のような風早の笑顔に爽子は幸せを噛みしめた。


「幸せ・・・」


風早は爽子の言葉に嬉しそう微笑むと爽子も恥ずかしそうに微笑んだ。そしてどちらから

ともなく繋がれた手を風早は恋人繋ぎに握りなおした。


ぎゅっ


お互い頬を染めながら幸せそうに歩き出す。その道がどこまでも続けばいいと願いながら・・・。



「あのさ・・・俺、さっきからいるんだけど」

「「あっ!!」」


待ち合わせ場所で半ば呆れたように立って見ている蓮を見つけると二人は恥ずかしそうな

様子で真っ赤になった。蓮はその姿に苦笑すると、優しい目をして言った。


「・・・よかったな」


爽子が帰る前、二人は蓮と近くの店で会うことになっていた。


「いろいろ・・・ありがとな。蓮」

「だから、俺は何もしてないじゃん。してないどころか・・・・」

「ははっ・・・でも・・・ありがとう。ほんと救われたんだ。俺」


蓮は風早を見て口角を上げた。そして爽子に目を向ける。


「やっぱ・・・二人でいるのが似合うよ」

「あ・・・ありがとう。蓮さん。あのっ」

「ん?」

「美穂さんに・・・会いたいのだけれど・・・」

「あ・・・」


その時、蓮の表情が曇ったのを二人は見逃さなかった。


「蓮?」

「うん・・・ごめん。ちょっと会えないかも。あれからちょっとな・・・」

「あれから?昨日・・・ですか?」


あれから美穂は目覚めた後、また小さい子供のようになっていた。一瞬だったが大人

の美穂に戻った時に発していた言葉・・・。


”「さわこって子のこと好きになったの?」”


どこでどうなってそういう思考になったのか分からないが、今爽子を近づけることは

なんとなく危険だと感じていた。


「ちょっと具合悪くてさ」

「あ・・・そうなんですか。大丈夫かな・・・・」

「うん、大丈夫。これからはちょくちょく仙台来るよな」


蓮はにやっと笑って二人を見た。二人はぼっと顔を赤らめる。


「その時でも会ってやって」

「う、うん」


爽子は嬉しそうに顔を輝かせた。その笑顔を蓮は少しつらそうに見つめた。


「蓮・・・それじゃ、爽子を送っていくから」

「さんきゅな、貴重な時間を割いてもらって。」

「ははっ何言ってんだよ。昨日もありがとな。真野さんにもお礼言わなきゃな」

「ほ、本当にっ!すごくお世話になったの」

「あいつ嬉しかったと思うよ。誰かを泊めるとか好きだからさ。・・・気をつけて帰って」

「ありがとう・・・」


蓮は幸せそうな二人の後ろ姿を目を細めながら見ていた。あの廃人の時期を知っているから

こそ、余計に風早が輝いて見えた。


(っとに・・・・分かりやす)


蓮は思わず苦笑した。彼女が全ての男。その迷いのない目はどこまでも曇りのない青い空だ。

その一直線の瞳は憧れずにはいられない。初めて会った時からそうだった。


そして、自分は・・・。


蓮は二人と別れた後、しばらくの間青い空を仰ぐと、肩で大きく息をして美穂の家に向かった。




*************




それから二人はいつも通りの生活に戻った。風早は一層仕事に力を入れ、自分を高めるた

めに仕事が終わったら建築の勉強にも取り組んでいた。そして、次に爽子がやってくる日を

楽しみに毎日を意気揚々と過ごしていた。


一方爽子も風早同様、次に会える日を楽しみに一生懸命仕事をしていた。穏やかな毎日。

あの時のような胸を切り裂かれるような想いはない。同じ想いでいられる幸せ。つらさを

知ったからこそ、この幸せがかけがえのないものだと思える。そんな爽子を友香は嬉しそ

うに迎えた。そして、あやねや千鶴にも報告すると自分のことのように喜んでくれた二人に

爽子は胸を熱くした。


光平はというと・・・最初はぎこちなかったものの表面的には普通に爽子と接していた。堅く

なられることが嫌で必死で爽子に接しているうちに爽子も以前の様子に戻ってきたという

のが正しい。


彼女は何も言わないが、風早と上手くいったことが見ていて分かった。彼女からあの笑顔

が見られるようになった。それほど風早の力は絶大なんだと実感させられる。

自分では彼女を笑顔にさせることはできなかった。


でも、簡単に諦められるわけなんかない。全てを終わりにできるほど人間ができてないし、

何より彼女は近くにいる。まだ、胸の痛みは消えなかった。君の前で自然に笑うことが俺

にとってどれだけ無理があることかきっと君は知らない。


いっそ目の前から風早がさらってくれたらいいのにと思えるほどだ。


俺って・・・こんなに未練がましかったっけ?


光平は今日も幸せそうな爽子の横顔をせつなそうに眺めた。


ポンポンッ


「ん?」


そんな時友香がやってきて、にっこりと笑って光平の肩を叩く。最近そうされることが多い

ということは、余程俺は情けない顔をしているのかもしれない。


「沢渡さ・・・酒癖さえ悪くなければ結構いい奴なのにな」

「ちょっ〜〜〜!どーいうこと?こんだけ労わってやってるのに」

「別に頼んでないけど」

「ったく・・・諦めの悪い男ね。爽ちゃんが自然の笑顔を見せるようになったんだよ。これ

 ほど嬉しいことないじゃん。爽ちゃんは私の天使なんだからねっ」


必死で熱弁する友香に光平は呆れ気味に言った。


「なんじゃそれ・・・」


そんなの分かってるけど割り切れないんじゃん・・・。


「まっ・・・そんなに簡単なもんじゃないよね・・・」

「沢渡?」


珍しく真面目な顔をした友香に光平は不思議そうに問いかけた。



Plululu〜〜〜〜〜〜♪



その時光平の携帯が鳴った。友香に断って携帯をポケットから取り出すと表示された文字を

見て驚いた様子で呟いた。


「おっ・・珍し〜蓮だ」


ピッ


「蓮?どした?・・・・え??」



光平は滅多にない蓮からの電話に急くようにボタンを押した。そして蓮が話す内容を理解で

きず、咄嗟に聞き返す。すぐには信じられない内容だった。















あとがき↓

前回の話には沢山の有難いコメントをありがとうございました。みなさん、再会を心待ち
にしていたんだなぁ〜と実感しました。これで終われたら良かったんですが、まだ続きま
す。皆ハッピーにしたいもんですが・・・・さて。次の更新は5月になりそうですが、半ばに
は終われるかな〜と思ってます。最後までよろしくお願いします。

Half moon 90