「Half moon」番外編 ➍  「もう一つの結婚式」

こちらは「Half moon」100話の風爽Weddingをちょっとギャグ化してのお話です。


風早は北海道に戻ってから仕事や引っ越しに追われ、十分に結婚式準備に関われなかった。
そうこうするうちに結婚式の日を迎えることになったが・・・?ジョーも出ます。
※ ギャグ風なので風早キャラ、ちと違いますのであしからず!!
※ 「Half moon」の内容とは異なります。


Half moon」の話は目次からどうを!






















4月のある日、春の日差しの中、北海道の小さな教会では一組の若いカップルの結婚式が

挙げられようとしていた。



「ついにこの日がやってたね〜〜〜」

「沙穂、そのワンピかわいいじゃん」

「昌も決まってるね〜〜〜」

「馬子にも衣装だな」

「何よ馬に蹴られたくせに。ヒヒッ」

「ほら、式に遅れるぞ」

「わわ、急げ〜〜〜っ!!」


4月1日付で仙台転勤になった光平と、もとの仙台組の4人は二人の結婚の知らせを受け、

5人一緒に北海道にやってきた。


あれから半年・・・・風早はついに念願の爽子との結婚式の日を迎えることができた。

しかし、4月に転勤が決まった風早は仕事が忙しく、結婚式当日までバタバタしていた。

爽子の花嫁衣装合わせや打ち合わせなどには全く参加できず、泣く泣く仕事をしていたの

だった。


迎えた当日、高校時代の友人、千鶴、あやね、龍、ケント、くるみも式に来ていた。

また会社からは友香やその他の同僚も来ていた。皆に見守られながら二人の式が始まろう

としていた。


二人を待ち受ける教会では・・・


コソコソコソ


「ねぇ、風早忙しくて爽子の花嫁姿見てないんだってね」

「へぇ〜〜〜まじ?控室でやばかったんじゃないの?」

「それがさ、この際だから爽ママが本番で会うのがいいんじゃないって言って見せて

 ないんだってよ〜〜〜」

「おもしろっ〜〜〜っあいつ卒倒すんなっ」


あはは〜〜〜っ


千鶴とあやねは祭壇の前に立っている緊張気味の風早を見てくすくすと笑った。そして、

二人の予想通り、風早の想像を超えた爽子の美しさに驚愕することになる。


バタンッ


教会の扉が開いた。そこには純白のウエディングドレスに包まれた爽子の姿があった。爽子

の透き通るような白い肌にウエディングドレスはよく似合っていた。それは真っ白な爽子の

心を象徴するかのような美しさだった。


「うわっきれっ!!」


昌と沙穂は思わず感嘆の声を上げた。蓮も光平もその姿に見とれていた。そして友香は声

が出ないほど感動していた。

爽子の横には真っ赤な目をして堪えるように歩いている父親の姿。教会にいる誰もがその

姿に同情するほどだった。


「うわぁ〜〜〜〜お父さんかわいそっ。女の子の父親って大変だね。くるみっ」

「あれはひどい方じゃない」


ケントとくるみは二人の微笑ましい姿を見て呟いた。


そして、初めてウエディングドレス姿の爽子を見た風早は・・・・?


「・・・・・」


あまりの爽子の美しさに動きが止まった。


「ほら・・思ったとーり。王子危機だよ。龍、ちょっとつついた方がいいんじゃない?」


あやねに言われ、手伝い役で前の席にいた龍は”ああ・・・”と言って、風早のタキシードを

引っ張った。それでも気付かず、爽子に茫然と見とれている。


「だめだ・・・」

「ちょっ龍・・・だめって」


二人が焦る中、爽子が横を通る。爽子は千鶴とあやねを見つけると、にこっと微笑んだ。

その姿に二人もぼーっとなる。


「爽子・・・きれい」

「爽〜〜〜っ」

「ほら・・・二人とも同じじゃん」


そして、龍はおいおい〜〜と泣き始めた千鶴を呆れたように見つめた。


父の手から爽子を風早に渡される時、爽子の父は懇願するような目で言った。


「風早くん・・・爽子を頼む・・・」

「・・・・・」

「風早くん??」


返事のない風早を父は心配そうに見つめた。爽子も目の前の風早を見て、ぽっと頬を赤ら

めるとぼーっといている風早の顔を覗き込んだ。


「翔太くん・・・?」

「うわっっ!!」


風早は、爽子の顔が近くに来てやっと現実に戻ったように身体をのけ反らせた。


「さ・・・爽子!?」

「翔太くん・・・式だよ」

「う、うんっ」

「ちょっと・・・頼むよ。風早くん」

「は、はいっ!」


父から渡され爽子の小さな手を優しく包み込むと風早は必死で胸の鼓動を落ち着かせた。


風早は式の間も爽子に見とれていた。自分の予想を遥かに超えていた。


(やばい・・・・きれすぎるっ・・・)


風早は込み上げてくる想いをぐっと押さえて、牧師を見上げた。牧師の声を上の空で聞き

ながら夢心地で横にいる爽子を見つめる。このまま夢なら醒めないで・・・と願いながら。


こんな時でさえ、誰にもこのきれいな爽子を見せたくないなんて思う俺はどこまで独占欲

の塊なんだって思うけど、それが本心なのだから仕方がない。この場が二人きりなら・・・っ!


「・・・なんか爽子見えないんだけど」

「風早邪魔だな」


あやねと千鶴がぶつぶつ言う。風早の身体が爽子とかぶっているのである。周りのみん

なも爽子の顔を見ようと、背伸びをしたりしていた。まさか風早が意識的にやっているとは

知らずに・・・。皆にはあまり気付かれなかったが、風早は神父からジェスチャーでもう少し

離れるように何回も言われていたのである。


そして式が無事終わり、ガーデンパーティーが引き続き行われるが・・・。



* * *


ワーワー


「うわぁ〜〜〜〜おめでとう!!」

「おめでとう〜〜〜!!」


ガーデンに現れた二人を皆、フラワーシャワーなどで迎える。皆に祝福されてこの上ない

幸せなはずなのだが、風早の心情は複雑だ。笑顔が引きつってしまう。


「ああ・・・・だめだっ」

「え・・・・?」

「耐えられない」

「・・・何が?」

「いや・・・何がって・・・」


爽子の純粋な目が風早に向けられる。そんなきれいな目を向けないでなんて思ってる。俺

の心はそんなにきれくない。こんなきれいな爽子を誰にも見せたくない!なんて結婚式でさ

え思ってるのだから。俺・・・終わってる。


「ちょっ〜風早、爽子とくっつきすぎ」

「ほんとほんと〜〜〜爽子の顔見えないからどいて」

「なっ!!俺、新郎なんだけどっ??」


わはは〜〜っ


風早は無意識で爽子を自分の方に寄せ、顔を見られないようにしていた。そんな二人を

見るでもなく、食べることに夢中のジョー。


「むしゃむしゃっ・・しっかし、貞子きれいになったよなぁ〜〜〜!むしゃっ・・さすが風早だよ。

 見る目あるな。これじゃくるみちゃんも目じゃないや。がはは〜〜〜っ!」


トントントン


「−ん?」


振り向くと、青筋を立てて口角を上げているくるみの姿あった。


「うわぁっ!!くるみちゃんじゃんっ!呼ばれてたんだ!いや〜〜〜変わらずかわいいねっ!!」


バコンッ


「むぐっっ !いててっ・・・冗談だよっ冗談!!」


そして、落ち込むでもなくまた食い続けるジョーの姿があった。


「・・・誰だよ。あれ呼んだの」

「知り合いじゃないことにしよう」


ジョーのもとから去るかつてのクラスメイトであった。


* * *


風早は皆に祝福されながらもやっぱり爽子のことが気になって仕方がない。


「あ″〜〜〜〜早く二人っきりになりたい。あ・・・・」


思わず心の声が漏れていた。


(しまったっ!・・・こんな大切な日に何言ってんだか)


風早が恐る恐る爽子を見ると、きょとんとした様子で頬を赤らめている。


「ご・・・ごめんっ・・こんな時に。でも・・・爽子がきれすぎて・・・俺っ」

「わわっ・・・翔太くんもか、かっこいいです///」

「ありがとう・・・。でも俺、マジやばい」

「翔太くん・・・あのっ・・私も早く二人になりたい・・よ?////」

「え・・・・」


二人で真っ赤になってウブコントをしている姿を友人たちは呆れ気味に見ていた。


「あのさ、それ二人になった時にしてくれる?」

「あ・・・/////」


くるみが一言、いらっとした表情で吐き捨てる。そこにケントも現れる。


「いや〜〜〜しかし貞子ちゃんきれいだなぁ。俺、惚れ直しちゃうよ」

「はぁ?」


ケントの言った一言に爽子より先に反応して訝しげな表情を浮かべる風早。結婚式でさえ

余裕がない風早にケントはぷっと吹き出した後、さらにからかうように煽る。


「貞子ちゃん〜〜〜〜結婚しても遊んでね!!」

「あ・・あのっ「−だめっ」」

「だめっ〜〜〜〜〜〜〜爽子は俺の奥さんなのっ!!」

「お・・・奥さん!?/////」


ついには自分の中に花嫁を隠すようにぎゅっと抱きついた新郎であった。相変わらずの二人に

周りが大笑いしたのは言うまでもない。そしてそのウブコントは結婚後も末長く続くのである。

さて、その群れの外では相変わらずのジョーの姿。


「龍達食べないのかぁ〜〜〜。全部食っちゃうぞ〜〜っ」


がつがつがつっ


「まじうめっ・・・・!!」


がつがつがつっ


・・・・・・?


「ん?」

「ん?」


同じおかずを手に取った男二人は目が合い、思わず動作が止まる。


「これ、うまいっすね。どーぞどーぞっ!」

「まじうまいっす。こちらこそいっぱい食べましたからどーぞどーぞ!」

「じゃ、遠慮なく!」


ジョーは最後の一個になったおかずを口に放り込む。そしてもう一人の男は休む間なく、

他のご馳走にがっついていたのである。二人は今、幸せの絶頂だった。


「「う〜〜〜〜んっ幸せ!」」


幸せ一杯の二人はほんわかした顔で叫んだ。


「太陽〜〜〜〜〜っ!!ほらっ食べてばっかいないで写真撮るよ!!」

「ほ〜〜〜いっ今、行く」


そんな太陽を見て、ジョーは二カッと笑う。太陽も笑い返す。同じ空気を嗅ぎ取った二人は

その後、意気投合して飲みに行ったとか行かなかったとか・・・?







<おわり>

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あとがき↓

Half moon」100話を書いている時に、なぜかギャグ方面に話が行き、これではいかんっ!と
修正したのですが、その時書いたものをリクエスト頂いたジョーのネタを絡ませて作りなおして
みました。多分、ジョーネタには満足していただけないと思いますが、これでお許しを。さすが
に主人公にはできなかった。いつか気が向いたらジョーの話とか書くかも。多分向かないけど。
こんな時でも一人占めしたい風早が浮かんできてギャグ風にしてみました。さすがにしないだろ
うけどね。さて、次のリクエストは・・・・。思いのままに書きます。何が飛び出すか??期待は
しないでね(-_-X)それではまた〜〜〜!いつもご訪問ありがとうございます!!