「Half moon」番外編 ➎ スピンオフ”友香編”

こちらは「Half moon」のスピンオフです。それもマイナーな友香(-_-X)・・・。
爽風の話ではないので注意!

友香の本編の中の心情、その後など。(題名思いつかないのでなし)
興味のある方は以下からどうぞ↓

























不倫がいけないことだと普通の人間は思う。道徳的に道を外れている。でも実際やってし

まったら何てことない。彼と向き合ってる時は男と女。ただ未来がないだけ。


「ああ・・・今日も言えなかった」


友香は爽子と食事をした後、爽子を見送るとふぅ〜っと小さなため息をついた。


正直、爽子みたいな子に会ったことがなかった。真っ直ぐ一人の人を愛し、人に左右され

ない一本筋がある。23年も生きているのだから人間の汚い所も見てきているはずだ。し

かし彼女は決して汚れない。まだ半年の付き合いだから爽子のことを全て知っているわ

けではない。でもこれだけは分かる。自分とは違ってきれいだということ。


「今まで適当に生きてきたからなぁ〜」


人に酒癖が悪いと言われる。記憶を失くして男とベッドで目覚めたこと数知れず。そんな

こと今の子なら結構やることだと思っていた。周りにもそんな子が多かったし。でも彼女

にはそんなこと言えなかった。人間の種類が違うと言ったら変だけど、何となくそう感じ

ていた。でもそんな私も彼と出会った。それが不倫でもなんでも初めて心から好きにな

った人なのだ。最初は適当に遊んで危ないところで切ろうと思っていた。それなのにい

つの間にかこんなにのめり込んでいる自分。


爽ちゃんに彼がいると初めて知った時、思わず言った”「私も彼がいるんだ〜〜」”その

時は何の罪悪感も感じなかった。でも彼女を知る度、そう言ったことが恥ずかしくなった。

私の秘密を知ったら彼女は軽蔑するだろう・・・。



* * *



「私・・・・・不倫してるの」

「!」


これしかないと思った。ただ苦しそうな爽ちゃんを楽にさせてあげたかった。自分の秘

密を言うことでどうなるものではないけど、自分が正直にならないと爽ちゃんが心を開

いてくれないような気がした。


「今まで・・・言わなくてごめんね。初めの頃、爽ちゃんが仙台に行く日のロッカーで

 ”私も彼氏いるんだ”なんて言ったけど・・・・彼氏なんて呼べる人じゃない」


ずっと引っ掛かっていた。でも言ったことで自分から離れるかもしれない。それはかな

りショックだ。何でショックなんだろう。こんなに人の反応が怖かったことはなかった。

そっか・・・私、爽ちゃんが好きなんだ。


軽蔑されるとばかり思っていた私に爽ちゃんは予想外の言葉を言った。


”嬉しい”・・・と。


私が正直に言ったことに対して、嬉しいと。そして私が幸せならいいと・・・。それは

適当な言葉でないことを知っている。道徳に外れたことを良くないと分かっているの

に自分を受け止めてくれる。でも彼女が言った”幸せなら”という言葉。後から思った

が、それは結局警告なのかなとか・・・。よく分からない。あの後、あやねさんを呼び

出した時に聞いてみた。1回しかあやねさんには会ったことがないのに不倫のことを

よく言えるなと自分でも思ったけどそれより爽ちゃんのことが知りたかった。


「・・・それで、爽ちゃんに言ったら私が”幸せならいい”って言われたんだけど、それ

 はどういう意味かと思って。いや〜〜いつもなら流すんだけどさぁ」


少し茶化しながら言う。するとあやねさんはふっと意味ありげな笑みを浮かべた。


「え・・・何?」

「ああ、ごめん。バカにしてるわけじゃないから。友香さんもあの子の魅力にやられた

 かと思ってね」

「え・・・・?」


その時、あやねさんの高校時代の話を教えてもらった。爽ちゃんを知って自分の恋愛

観を見つめ直したこと。


「けっこー悩んだわ。あんな子いないからね。出会わなかったらずっと目を伏せてい

 たかもしれないから。自分が不純に見えてくんのよ」


あ・・・一緒だ。


その時のあやねさんの表情は少し寂しそうだった。今は何かを見つけられているのだろうか?

そんなことを思った。


「あの子は決して人を否定しないから、素直に友香さんの幸せを願って言ったんだと思うよ。

 自分にも他人にも正直だからさ、適当なことは言わないわね」

「・・・・・」


確かに恋愛はその人にしか分からない。ということは、私が本当に幸せであればいいのかな?

ちゃんと向き合ってさえすれば爽ちゃんは応援してくれるのかな。


こんな私でも応援してくれるのかな・・・。



* * *



「おめでとう〜〜〜!!」


ワーワー


「爽ちゃん・・・本当にきれい」


こんなに泣くんだ私。と思うぐらい泣いた爽ちゃんの結婚式。そして心から思った。これ

ほどきれいに花嫁さんは見たことないと。


「爽ちゃん、おめでとう」

「あ・・・ありがとう。友香ちゃん」

「私、今日ね、報告したいことあるの。こんな時にごめん」

「ううんっ・・・全然、何かな?」

「あのね、彼と別れた」

「!」


爽ちゃんは驚いたように目を見開いた後、心配そうな顔で私を見つめる。


「私、ちゃんと前を向いた恋愛したいの。爽ちゃんみたいにね」


きっとその時、私はすっきりした顔をしてたはず。

だって、爽ちゃんの顔が私の大好きなとびきりの笑顔に変わったから。なんてきれいな

笑顔なんだろう・・・。


そして、言ってくれる。予想通りの言葉。


”『友香ちゃんが幸せなら・・・』”


私はその意味を噛みしめるように笑った。きっとどんな私でも爽ちゃんは受け入れてくれる。

だからこそ、少しでも爽ちゃんに恥ずかしくないように前を向いて生きたいな・・・・。






<END>

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あとがき↓

友香のイメージ通りだったでしょうか?結構軽い子だったんですね。友香と向き合うと
こんな子でした。これは何人かの方がリクエストして下さいました。意外にも友香人気??
しかし、最近思うように時間が取れずにすみません・・・。更新がないのに訪問してくださる
皆様、ありがとうございます。もう少しつめて更新したいです・・・。