「Half moon」番外編 ➊ 後編


補足・番外編リストをまとめて作ろうと思っていたのですが、とりあえず出来た順に載せ
ていこうと思います。一発目、リクエスト第一弾はEpi88の二人が再会した日の補足話。
甘い〜〜夜のつもり。風早目線の話です。そして、また一回にまとめられず前編・後編
でお送りします(汗)題して「After the rain」後編です。


再会した二人は時間が経つのも忘れるほど沢山話をしていた。その時、爽子から出た
言葉に動揺した風早は・・・? 「After the rain」 前編 の続きです。




















〜「After the rain」〜 後編












「ご・・・ごめんなさいっ・・・そのっ」


俺は気付いたら乱暴にキスをしていた。


「・・・んっ・・・・」


彼女の甘い吐息が漏れる。


泣いてるのに、不安にさせてるのに、どうしたらいいか分からない。止められない。


分かっている。爽子を前にすると心を奪われた男は触れたくなる。全部欲しくなるんだ。

田口が本気だと分かっているからこそ、どこかで見ないようにしていた。

そのことを考えてしまうと、どうにかなってしまいそうだったから。


風早は爽子から口を離し、熱い目をして見つめる。爽子の息が上がる。


はぁ・・・っ


「違う・・・ごめんは俺の方。爽子の側で守れなかった俺の方・・・」

「そ、そんなっ・・・違うのっ・・・田口くんはそんなつもりじゃ・・・あっ違う。わわっ」


パニくっている爽子の唇を塞ぐように奪う。爽子は分かってない。どれだけ一緒に過ごしても

分からないだろう。俺がどれだけ独占欲が強いか。そして俺がどれだけ君を好きなのか・・・・。

だからこそ、ずっと不安だったんだ。


「・・・・これ以上、田口の名前出さないで」

「あっ・・・・・」


爽子はハッとしたように目を見開いた。大きな瞳が揺れている。

ごめん、もう我慢できないんだ。止めることはできない。今日だけはせめて、本当の俺を

君に見て欲しい。


「今は・・・・俺のことだけ考えて。俺だけを見て」

「・・・・風早くん」


こんなことを言ったことはなかった。困らせたくなかったんだ。この時、俺のブレーキは完全

に壊れていた。きっと君を欲っしすぎておかしくなってる。


風早は不安そうに爽子を見つめた。


「私・・・・ずっと風早くんしか見えてないみたい。風早くんは・・・ずっと、ずっとね、特別なのっ///」


真っ赤になって言う君に俺は救われた気分になる。いつもそうなんだ。自分の中の汚い

感情を全て浄化させてくれるように君は笑う。その笑顔は俺に幸せをくれる。

そして、そのまま全部奪いたくなるんだ。自分のものにしたくなる。


どれだけ背中に羽があったらと思ったことだろう。月に願ったことだろう。今もずっと思っ

ているんだ。


”今すぐに飛んでいきたい”・・・・と。


二人は見つめ合うと、照れたように笑った。そして、風早が爽子の身体に手を伸ばそうとし

た時、爽子が恥ずかしそうに瞳を揺らして言った。


「我慢・・・・できないのは私の方です」

「え・・・・」

「ずっと・・・・会った時から風早くんに触れたくて・・・/////」

「ちょっ・・・・っ/////」


そんな爆弾を落とされて、風早は我慢できるはずもなく、押し倒したのは言うまでもない。

しかし、食事をどうしても作りたいと拒否されることになる。風早は無意識に爽子に振り

回される運命なのであった。



★゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・゜




そして、食事を終えたその夜・・・・。


「はぁ〜〜〜うまかったなぁ〜〜〜っ」


洗い物を一緒に済ませた後、お茶を飲みながら風早は幸せそうに言った。さっきから何回言

ったか分からない。でも自然に口から零れる。爽子はその度に嬉しそうに微笑んだ。その顔

に自分の顔も綻ぶ。


「良かった・・・。あのね、どうしても夕食を作りたかったの」

「うん?」

「あの日、食べてもらえなかったから・・・・」

「え・・・?」


爽子がこだわった訳はあの夜にあった。俺達の嵐の夜。自分が自分でなくなったあの夜、

爽子はずっと俺を待っていた。


風早はせつない目をすると、爽子の頬に手を当てた。そしてそのまま見つめ続ける。

すると爽子もその風早の手に自分の手を添えた。言葉はいらない。

想いは同じなのだから・・・。


ブレーキの壊れた自転車が坂道を一気に駆け下りていく。


「ごめん・・・もう二度とあんな想いさせない」

「風早くん・・・」


風早は爽子の紅潮した顔を見つめながら、ゆっくりと指を絡めた。そして身体を近づけていく。


「わっ/////お風呂・・・私、汚いから・・・」

「・・・爽子が汚いわけないじゃん・・・そのままの爽子がいい。全部・・・全部欲しいんだ」

「か・・・ぜはやくん」

「さっき・・・もう俺死にかけた。極限状態ってあんなのを言うんだな///」

「え??極限・・・?」

「ふっ・・・・もう、マジ限界」


風早の熱い瞳に爽子は溶かされていくのを感じだ。言葉だけでも溶かされていく。触れら

れたところから感じていく。


「爽子の全部が・・・・欲しい」

「あ・・・・・」


風早が優しく髪をなでると、爽子はぎゅっと目を瞑った。それはずっと変わっていない。

受け止めようとする彼女のサイン。その様子にくすっと笑う。指を絡めながら唇を重ねる。


「爽子・・・・愛してる」

「私も・・・・」


”・・・あいしてる”


とても小さな声だったけど俺には聞こえた。恥ずかしそうに言う、とっておきの君の告白。


お互いの体温が溶け合って一つになっていく・・・・。


例え夢でもいい。この瞬間俺は死んでもいいと思えるほど幸せだった。そして、もう誰にも

触れさせない。まるで隠すように俺は爽子の身体を包みこんだ。

この時が永遠であるように・・・・・。




★゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・゜




ぱちっ


爽子は目を覚ますと、まつ毛が触れそうな距離にいる風早を見て声を上げた。


「うひょ〜〜〜っ」

「え??何?」

「か、風早くんがいるので////」

「傷つくなぁ〜」

「き・・・傷つく??す・・すみません、まだ信じられなくて・・・・っ」


必死に言う彼女に笑みが零れる。寝起きの顔で言われるからまた、たまらない。


「うん・・・俺も。爽子の寝顔をずっと見ててもまだ夢みたい・・・・」

「え??ずっと!?」

「うん、もったいなくて寝れなかった。っていうか・・・・爽子を疲れさせたよな。止まんなくて////」

「//////」


いつも一人のベッドに爽子がいる。その温もりにやっと実感する。本当に居るんだ。そして、

やっと一つになれたこと。でも、俺の中のブレーキはすぐに壊れてしまうんだ。


「あれ?まだ暗い。今・・・何時だろう?」

「夜中の3時」

「え??風早くん・・・・・寝てないの?」

「だから言ったろ?もったいなくて。爽子の寝顔・・・かわいかった」

「わわっ//////」


(こーふんして寝れなかったんだけど////)


そして、風早はぎゅっと爽子を抱きしめると耳元で囁いた。


「えっ//////??」


再会の甘い夜はまだ続く・・・・。


”『ねぇ・・・・もう一回・・・いい?』”



<おわり>

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あとがき↓
12日と言いながら時間が取れたのでUPしま〜〜〜す。甘い感じになったでしょうか?さて、
いよいよ別マ発売!!二人のキスはどうなるでしょうか?私はして欲しくないです!!楽し
みはもっと後でゆっくりね。それでは次のリクエストも萌えのまま書けそうなものを書いて
いこうと思います。Rさまありがとうございました。