「Half moon」(83)

社会人の二人の物語。オリキャラ祭り。オリキャラ紹介⇒(1)をご覧ください。

爽子と風早が同じ気持ちで動き出した時、まさかのすれ違いが起きた。でもこれ以上失う
ものがない風早はもう迷うことはなかった。でも爽子目線です(笑)

こちらはHalf moon          10 11 12 13 14 15 16 17  18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29  30 31  32 33 34 35 36 37  38 39   40 41  42 43  44 45 46 47 48 49  50 51  52 53  54 55 56 57 58 59  60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 の続きです。
それではどうぞ↓





























**********



「・・・・・」


爽子は仙台に着いた後、そのまま風早のアパートに向かった。そして何度ベルを鳴らして

も返事がないドアの前に佇んだ。中に風早がいる気配は全くなかった。

それは予測できていた。突然尋ねたのだから。とにかく顔を見て話したかった。


「はぁ・・・」


爽子はアパートの壁に背中をつけると、ぼーっと夜空を眺めた。北海道の空と同じく

ハーフムーンが浮かんでいる。爽子は仙台に近づけば近づくほど、不安が増していた。

自分から別れを告げたのに彼は会ってくれるだろうか・・・。

顔を見て話したいのはもちろんだけれど、本当は電話をするのが怖かった・・・。


「・・・・・」 


し〜〜〜〜〜〜んっ


30分経過


風早は帰ってこない。

時刻は22時を過ぎていた。段々と爽子は不安になってきた。このまま帰ってこなかったら

どうしようと。


「―っしゅんっ」


(だめだ・・・風早くんに会うまでに風邪引くわけにはいかないっ!)


爽子はドアの前をうろうろした後、意を決したように顔を上げた。


(よしっ電話しよう!!)


爽子は自然に体が震えていた。それは夜風が寒いだけではなかった。自分の弱さからくる

震えだ。でももう逃げないと決めた。


爽子はぎゅっと目を瞑った後、携帯をカバンから取り出した。そして決心したように携帯を開

けた。そこには今も穏やかに眠る風早の待ち受け。その写メに少し表情を緩めた後、ボタン

に手をかけた。


プルプルプルッッ


「うわっ!!」


その時だった、携帯から鳴ったコールに爽子は携帯を落としそうになった。

そして表示を見ると・・・。


「か・・・風早くんっ!?」


ピッ


「は・・・はい」

『・・・爽子』


(ど・・・・うしよう。声が震える)


電話口から聞こえる風早の温かい声。爽子は声を聞いただけで涙が出そうになるのを必死

で堪えた。


『俺・・・久しぶり・・・』

「う、うん。ひ、久しぶり・・・」

『・・・・・・』

「・・・・・」


どうしよう・・・伝えたいことは山ほどあるのに言葉が出てこない。ただ心臓の音だけが激しく

聞こえる。でも別れを告げたあの時とは違う。なんだろう・・・気持ちが違う。


どくん、どくんっ


爽子の緊張は頂点に達していた。震える手をもう一つの手で支える。


(言わなきゃ・・・今のこと・・・)


「あっ・・・あのね、私、今『―きた』」

「え?」

『爽子に・・・会いに帰ってきた』

「・・・・・」


爽子は風早の言ったことを頭の中で反芻した。


(・・・え?)


『俺、北海道にいるんだ。爽子に会いに』


し〜〜〜〜〜〜〜んっ


しばらくのタイムラグの後、爽子は絶叫するように言った。


「え・・・えええええ〜〜〜〜〜っ!!」

『爽子は・・・今、仙台?』

「えっ・・う、うん?」

『爽子のお母さんに聞いた。ははっ・・・こんなことってあるんだな。まさかって・・・思った

 けど、爽子が仙台に来るなんて・・・』

「・・・・・」


爽子は風早の声にそっと目を閉じた。そして壁に背中をつけながらゆっくりとその場に

座り込んだ。話していると自然に震えが止まっていた。


”爽子・・・”


そっと目を閉じる。ずっと呼んで欲しかった自分の名前。なんて温かい声なんだろう・・・。

名前を呼ばれるだけでこんなに幸せな気持ちになる。


爽子は頬を染めながら携帯に力を込めて言った。


「わ、私・・・風早くんに会いに来たの」

『・・・・俺も爽子に会いに北海道に来たんだ』


不思議だ・・・。外は寒いのに、なぜか心がぽかぽかしてくる。風早くんの言葉で自分の体

が温まっていく。どうして今まで一人でいられたんだろう。


『ははっ・・・だめだっ・・・良かった・・・・爽子が側にいなくて』

「え?」

『恥ずかしいけど・・・マジぼろぼろっ・・ううっ・・・ははっ・・ごめんっ』


電話口の向こうで風早が泣いているのを感じると、爽子も今まで堪えていた涙が一気に

あふれ出した。二人の涙が月明かりに光る。


爽子も風早も想いを電話口で伝えるにはあまりにも足りなかった。同じ空気を吸って、互い

の表情を見ながら目を合わせて吐息、声を感じながら・・・・想いを伝えたい。


『・・・明日、一番の飛行機で仙台に帰る。だから・・・待ってて』

「うん・・・・っ」

『今度こそ・・・・今度こそ、絶対会いたい』

「うん・・・・私・・・伝えたいことがあるの」

『うん、俺も。絶対明日会おう』

「・・・うん」


爽子はこれ以上言葉に出来なかった。風早の言葉に必死で頷いた。こくこくっと何回も。


もうお互い迷わない。ただ真っ直ぐ気持ちを届けるだけだった。

二人は同じ夜空のハーフムーンを見上げて嬉しそうに微笑んだ。



********



「ごめん・・・待った?」

「蓮さんっ!!」


爽子は風早のアパートの前で蓮の姿を見つけると、慌てて駆け寄った。


「ごめんなさい・・・こんなに遅く」

「何言ってんだよ・・・翔太から連絡もらって驚いたよ」


蓮は自転車を押しながら息を切らして言った。遅くに自分のアパートの前に爽子がいると

知った風早は蓮にすぐに連絡を取った。一番信頼のある蓮に全てをまかせようと思ったのだ。


「昌に連絡しておいたから、そこに泊めてもらったらどうかな?気ー遣う?」

「い・・・いえっ・・・でもいいのかな?突然・・・申し訳なくて」

「大丈夫だよ。昌も・・・全部分かってるから」

「え・・・・」


蓮はそこまで言うと、自転車を押しながら爽子を優しい目で見つめた。爽子は蓮の視線に

気付くと、大きく目を見開いた。


「良かった・・・仙台に来てくれた」

「あ・・・・」


”「―絶対また、帰ってきて。仙台に」「・・・待ってるから」”


爽子は、蓮が空港で言った言葉を思い浮かべた。そして息を切らしながら自分のために

必死でここに来てくれたことに胸が熱くなった。


話したいことは沢山あるのに気持ちを上手く言葉にできない。たった一言しか・・・。


「蓮さん・・・ありがとう」


目に涙をためて必死で想いを言葉にしようとしている爽子を蓮は目を細めて見つめた。


「・・・ありがとう」


”ありがとう”  全てこの言葉に込めるように伝えたお互いの想い。

二人はそれだけ言葉を交わすと、同じ気持ちで微笑みあった。













あとがき↓

お決まりのすれ違いでした。なんかすんなり二人を会わせたくないな〜と思っただけなん
ですけどね。もっと恋しくなるように(笑)もうすぐ会えます〜〜!!早くラブラブしたいなぁ〜
( ^ω^)蓮は爽子と似た雰囲気を持っているのかな〜と思ってます。言葉がなくても分かり
あえる感じ??それではまた遊びに来てください。

Half moon 84