「Half moon」(28)

社会人の二人の物語。オリキャラ祭り。オリキャラ紹介⇒(1)をご覧ください。
オリキャラの回。仙台の生活が始まった光平は仲間に迎えられて・・・。
こちらはHalf moon         10 11 12 13 14 15 16 17  18  19 20 21 22 23 24 25 26 27 の続きです。
それではどうぞ↓














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「え〜〜〜〜!!!マジ??光平!何で言ってくれなかったの〜〜??」


いきなり飲み会に現れた光平に昌は目を丸くした。


「驚かそーと思って」


そのびっくりイタズラに昌は嬉し涙を流し、パカパカっと光平を叩いた。


「ばかぁ〜〜っ!もっと早く言ってよね!!」

「ごめんっごめん〜〜そんな嬉しかったの??」

「違うわ!ボケっいきなりで驚いただけじゃい!」


そんな二人を皆は微笑んで見守っていた。

今日は沙穂も来ていた。気持ちを固めて来た沙穂は、風早欠席を聞き、意気消沈

していた。


「とりあえず、光平の左遷にかんぱ〜〜〜〜い!!」

「おいっこら、左遷じゃね〜からな!ただの出張。それも短期!」

「マジで?新人3ヶ月でいらないって言われたんじゃねーの?」

「ちがうっ〜〜〜〜!!」


あははは〜〜〜〜っ


追い打ちを掛けるように冗談で昌と蓮が言うと、光平は必死で弁解した。それでなくても

親にそう言う風に思われて誤解が解けない。


(だからやだったんだよ・・・・・。)


光平がぶすっとしていると蓮が横で”冗談だよ。皆分かってるから”とコソッと耳打ちした。


「なにわともあれ、嬉しいよ。光平が帰って来てくれて」

「また遊べて嬉しい!!」


太陽と沙穂も光平に声を掛けた。そんな皆に”ありがとうと”光平は優しい笑みを浮かべた。

そこには今までと変わらない光景があった。変わったのは自分の気持ちだけ。光平は以前の

自分になろうと必死だった。そんな光平をそっと昌は見つめていた。


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一方沙穂は・・・あれから風早への気持ちを断ち切ることを止めていた。会えなかった間に

余計に気持ちが膨らむのを感じたからだ。


「ああ・・・会いたかったな」


先日の飲み会で風早に会えなかったことで、どれだけ風早に自分が会いたかったのか分かった。

彼女がいたショックというのはすっかりなくなっていた。というか自分の中で消していた。

それより今は前に進みたい。


「秋山さん〜〜〜ほら、お酌してよ〜〜〜」

「あっはい」


今日は、病院の飲み会だった。さっきから隣の上司がほろ酔いで沙穂に絡んでいた。

職場で上手く人間関係が作れない沙穂は飲み会の席でため息ばかりついていた。

隣のテーブルでは同期の女子達が恋バナに花が咲いている。


「でさぁ〜彼氏がさぁ〜」

「マジで〜〜〜!」


それなりに同期達とはやっているが、彼氏の話しとかで盛り上がっているのを聞くと

なんかむしゃくしゃしてくる。写真を見せてもらったりもするが、レベル低くっとか

思ってしまう。


そんな時は決まって、風早に会いたくなる。会いたい!会いたい!頭の中はそればかり。

ふぅ〜〜〜っ


「秋山さんはかわいいねぇ〜彼氏とかいるんだろうねぇ〜」

「あ、まぁ〜あはは・・・」


(酒くっさ・・・・)


「ちょっと・・・トイレに」


上司を上手く交わし、沙穂はトイレに逃げ込んだ。


(はぁ〜早く終わらないかな。社会人ってつらいよ)


「秋山さん?」

「え・・・?」


トイレのドアを開けようとしたその時だった。沙穂はその声に素早く反応して振り返った。

もう、声だけで分かってしまう。その運命の人は。


「か・・・風早!?」


そこには会いたくてたまらない人が立っていた。


「飲み会?あの向こうの集団でしょ?俺、その隣の軍団。ははっ偶然」

「そ・・うなんだ!」


沙穂は思わぬところで偶然に風早と会え、舞い上がってしまった。風早も職場の飲み会で来ていた。


「蓮は一緒じゃないの?」

「うん。今日は営業だけだから」

「もう、帰る?」

「もー少ししたらかな。秋山さんは?」

「私も・・・・もう少ししたら」


『お〜〜い!風早!早く』

「おっ、今行きます!んじゃね。秋山さん。今度の飲み会は行けるようにするよ」

「あ・・・っ」


沙穂はこんな飲み会より風早と居たかった。でも風早はやはりどんなところでも中心に

なる人物だ。風早中心に笑いがおこっていた。皆と笑う風早を遠目に愛おしそうに沙穂

は見つめた。


「秋山さん、誰?彼氏?」

「え!?」


同期の一人がトイレでの様子を見ていたらしく声を掛けてきた。


「と、友達」


”彼氏”なんて言われるとドキドキしてしまう。本当にそうならいいのに。


「かっこいーねぇ〜!!コンパとか出来ない??紹介して欲しいなぁ〜」

「え・・・」


思わず同期の軽々しい発言にむっときたが、少し引きつりながら、適当に交わす。


(そんなこと何があってもしないっつーの!)


その同期の女子は男に色目を使うと有名だった。確かに胸もあるし、男からしたら魅力的

なのかもしれないけど、沙穂は以前から敬遠しがちの同期だった。


「私もそんな知り合いじゃないしね〜あはは」

「ふぅ〜ん。そうなんだ」

笑顔で交わす沙穂を同期は鋭い目で見ていた。そして不屈の笑みを浮かべたのを沙穂は知ら

なかった。そう、同期の彼女はまだ諦めていなかったのだ。


それから苦痛な飲み会も無事終了し、沙穂の職場集団は店をぞろぞろと出て行った。

沙穂は風早と帰りたくて、ちらちらと風早グループの動向を伺っていた。


(こっち見ないな・・・・。)


沙穂はこんなチャンスを逃したくないとばかりに、店の外で風早を待つことにした。

すると戸口の方で風早の声が聞こえた。どうも幹事のようで皆から飲み代を集めていた。


(声だけでドキドキする・・・・。)


沙穂は胸の鼓動がどんどん早くなっていくのを感じた。壁にもたれかかって必死で自分を

落ち着かせた。そして、夜空を見上げて目をぎゅっと瞑る。

こんなチャンスはなかった。風早はなんだかんだ言って、女の子と二人になるのを避ける。

メールをしてもそっけなかったりして、上手く繋げない。

”だから・・・神様、二人なるチャンスを下さい。”


沙穂は胸の前で手を合わせ、心の中で祈った。









あとがき↓
またまた偶然会った沙穂は運命なんて思っちゃうんですね〜。さて、次回も風早&沙穂の
回なんであんまり面白くないと思います。でも続きなんでよければ見に来て下さい。

Half moon 29