「クリスマスの夜」


MERRY CHTISTMAS!
皆様、どうぞ良いクリスマスを!


爽・風が大学1年生の頃のクリスマスのお話。オリキャラ出てきます。気の強い・・・。

*イブの日に待ち合わせ場所で翔太を待っていた爽子だが、翔太が時間になっても来ず・・・!

よければ以下からどうぞ↓







今日はクリスマスイブ。翔太くんとお付き合いして3回目のクリスマス。今年は大学に

入って、色々生活が変わった。会えない日も前より多くなったけど、会えない日には彼

への愛しさが募って、今まで以上に気持ちが膨らんだ。そんな生活も慣れてきた今日こ

の頃、今年がもうすぐ終わっていく。


爽子は雪の中、クリスマスイルミネーションに彩られ、クリスマスソングが流れる街中

を嬉しそうに眺めていた。街中は仲良さそうに腕を組むカップルであふれていた。


翔太くんを待つ時間はドキドキした気持ちとせつない気持ちが交差して想いが溢れそう

になる。今にも心臓が壊れそうなのにこの時間が好きだ。こんな気持ち、翔太くんに恋

をしなかったら、ずっと知らなかった時間。


爽子は今にも壊れそうな心臓を手で抑えながらちらっと時計を見る。


(・・・・珍しい。翔太くんが遅れるだなんて・・・・)


でもこの時間をもう少し味わっていられる・・・・。爽子はそう思って嬉しそうに顔を

上げた。しかし、翔太は30分たっても現れなかった。


「・・・どうしたのかな。翔太くん」


さすがに心配になった爽子は携帯をチェックしたが、なんの連絡も入ってなかった。

爽子は携帯に連絡してみる。

トルゥルゥルゥ〜〜〜♪


プツンッ


「・・・・・・」


かかったが、切られたような音がした。

爽子は不安になった気持ちを振り切るようにもう一度携帯のボタンを押そうとした時、

向こうの方で何やら大きな声がした。爽子ははっとしたようにその声の方に目を向けた。

そして、じっと凝視すると目を大きく見開いた。


「あ・・・・・」


そこには翔太と女の人が何か言い争っていた。爽子は引きつけられるようにそこに向か

て歩き出した。


「いいかげんにしてくれよっ」

「いやっ返さない!!」

「それじゃ、もういいよ・・・。俺、行くから」

「うっ・・・ううっ・・・」


翔太の前の女の人は周りも気にせず大声で泣き出した。それでも翔太は背を向けてその場

を去っていこうとしていた。その背中姿の翔太に彼女は言った。


「す・・・好きなの。ずっと好きだったの。風早くんのこと」


爽子はそのシーンを目の当たりにしてどうしたらよいのか分からず、身体を固まらせた。


「このイブは・・・・風早くんと居たいの!!」

「あのねぇ〜俺、彼女いるって何回も言ってるよね?」

「で・・・でも、そんなに風早くんと合ってないっていうよ。皆。私じゃだめ?」


爽子はズキンッと胸が痛んだ。翔太くんにふさわしいとか考えたことはない。ただ彼に

対して誠実にいたいと。でもこうやって実際言われるとショックは隠せない。そして、

ちょっと羨ましい気がした。こうやって自分のことを堂々と言えるこの女の人が。


「だめも何も・・・・!」


その時、翔太の目は人混みの中にいた爽子を捉えた。


「爽子っ!!」


そして、躊躇せず、翔太は爽子のところに走って行った。


「はぁ、はぁっごめんっ!!待たせて!」

「あっ、う、ううん・・・」


翔太はいつもの愛くるしい顔で爽子を見て、せつなそうに言った。


「折角のイブなのにな」

「・・・・・」


いつも通りの翔太を爽子は不安そうに見上げた。


「あっ・・・あの、あの人・・・ごめんなさいっ見てしまってっ」

「ああ・・・ごめんな。嫌な想いさせたよな」

「いや・・・その」


その時、後ろからさっきの彼女が声を掛けた。


「この子が・・・・風早くんの彼女?」

「・・・そうだけど?」


翔太は爽子の手をぎゅっと掴んで離さない。するとその彼女は悔しそうにぎゅっと唇を

かみ締めてキッと爽子を睨むように言った。その目には涙がにじんでいる。


「あなたなんだ・・・風早くんの彼女。」

「あっ・・・く、黒沼爽子と申します」


爽子は慌てて頭を下げた。


「・・・私、風早くんと同じ大学の富野香って言います。私・・・風早くんがずっと好きなの。

 彼女になりたいの。私・・・あなたよりずっとふさわしいと思うから」

「・・・・・」


翔太の大学でビジュアル的に目立つ彼女は男達の憧れの的だった。そんな彼女と爽やか

な風早はお似合いだといつも囃し立てられていた。風早に好意を寄せていた香は、いつ

しか、自分が風早の彼女になるという想いが芽生えていった。そしてこのイブの日、友

達とのクリスマスパーティーに向かう途中、待ち合わせ場所に居た風早と偶然会ってし

まう。イブということもあり、香の気持ちが一気に溢れ出した。


「ちょっと・・・!「−あのっ」」


風早が怒った顔で言い返そうと言葉を発した時、爽子が口を開いた。


「私も・・・私もしょ・・・風早くんがずっと好きです。人の気持ちはそう簡単に変えられないもので・・・」

「爽・・・・」


香は爽子の言うことを冷めた表情で聞いていた。そして、きっと睨んで言った。


「・・・何よ。自分は彼女だから人の彼氏に手出すなって言いたいの?」

「あの・・・クリスマスってイエス様の誕生日でして、日本ではイベントっぽくなってますが・・・」

「はぁ・・・だから?」

「だから・・・特別な日なので、大切な誰かを想うのは止められません」

「へ?」


香が訳が分からないという顔で聞き返すと、爽子は恥ずかしそうに言った。


「クリスチャンではない人も・・・クリスマスは”大好きな人を大切に想う日”だから・・・」

「・・・・・」


それを聞いていた翔太は爽子を優しい眼差しで見つめた後、香の方に歩いていき、

真正面に向き合った。そこにはいつもどおりの優しい表情の翔太がいた。


「ごめんな・・・感情的になって。俺、マジで彼女にベタぼれなんだ。彼女以外好きに
 なれない。だから・・・ありがとな。気持ちだけもらっとく」


香はしばらく風早を見上げた後、俯いて言った。


「・・・・・。気持ちだけもらってもらっても・・・・」


そして、大きなため息をついた。


「ふっ・・・・風早くんってさ・・・彼女以外どうでもいいんだよね結局。八方美人でもなく

 ってその優しさは”地”というか・・・。」

「え?」


そう言って、不思議そうにしている風早に取り上げた携帯を返した。


「・・・ごめん。こんなことするつもりはなかったのに。イブに会ったってことと風早くんの

 変貌振りにやけちゃったの」

「・・・・・・」

「それじゃ・・・・まだ彼女とお幸せにとか言えないけど・・・・」


そう言うと、香は爽子をちらっと見て、ゆっくりと去っていった。


翔太はしばらくその後姿を見た後、くるっと身体を爽子に向けぎゅっと抱きしめた。


「しょ、翔太くんっ!?////」

「身体・・・・冷たくなってる・・・。ごめんな」

「は・・・恥ずかしいよ////」

「イブだから・・・・許して」

「何を?」

「全部・・・俺の無礼講」

「ぶ・・・無礼講??何の・・・?そんなのないよ」


爽子はそう言うとそっと優しく翔太の頬に手を持っていく。


「翔太くんの頬も・・・冷たいよ。それに・・・そんな哀しい目をしないで」

「・・・・・!」

「さっき・・・言ったよね?”大切な誰かを想う日”だって。私・・・こうやって大切な

 翔太くんを想うことができてこれほど幸せなことないよ」


翔太は爽子の言葉をかみ締めるように聞いていた。そしてくっと顔を上に上げる。まるで

涙を堪えるかのように・・・・・。


「本当に・・・大好きな人を想ってられるって幸せだな」

「・・・・うん」


翔太の言葉に、二人はさっきの彼女のことを思った。

そして、翔太は爽子をせつない顔をして見つめた。願うように、届くように・・・・。


「・・・絶対離さない。これからもずっと」


翔太は再び、爽子をぎゅっと強く抱きしめた。ホワイトクリスマスの中・・・・幸せをかみ締めながら。

そして、照れた表情で身体をそっと離すと、いつも通りの笑顔で言った。


「メリークリスマス!爽子」

「メリークリスマス!翔太くん」



二人は幸せそうに微笑んだ。二人のイブの夜はこれから始まる。



<END>









あとがき↓

”無礼講”はその後の行動だったりして・・・(笑)今回の話は翔太の爽やかさから誤解する
女の子はいるだろうけど、それは”地”であって、決して八方美人でないということを書きた
かったんです。セリフ通りですが・・・。私はクリスチャンではないけど、教会にゆかりがあっ
てクリスマス礼拝など行くことが以前あったのですが、その時感じたことでした。
アメリカとかではクリスマスに自殺が多いって聞きます。クリスマスは”幸せ”の象徴になっ
てるんですね。誰かの幸せを祈るには生活に余裕が必要かもしれませんが、絶対人は人
によって支えられて生きてますから、そんなことを想う日にしても良いのかもしれません。
それでは、なかなか更新できないですが、また遊びに来てください。

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