「君までもうすぐ」1 


風、爽が高校3年、大学が決まった後の話。たった一日の話です。それなのに

5話ぐらいまで長くなってしまい・・・。


* 長い受験戦争から開放され、久々のデートを楽しむ二人だが、ちょっとした
ハプニングが・・・? 適度にSWEETな話です。



以下からどうぞ↓













進路が決まり、高校も卒業間近のある3月の日曜日、黒沼と久々に遠出のデートに出

かけることになった。全てが終わった解放感と、久々に彼女とゆっくりできる休日に胸

の鼓動が高鳴る。ずっと楽しみにしていた。その気持ちは自分の中だけでは収まりき

れていなかったようで、風早家では・・・。


「しょーた 絶対デートだぞ! かあちゃん!」


風早家ではあやしい翔太の態度を皆でからかいまくっていた。


「あの子、分かりやすいもんね!」


と夕食の準備をしながら息子の様子を嬉しそうに語る母。そこに風早家の主登場!


「ただいま」 

「あ〜父ちゃん、おかえりなさい!」

「ただいま。透太」

「あら、お父さん、おかえりなさい。早かったね」


台所から元気よく声をかける母。


「翔太はまだ帰ってないのか?」


町内会の会合から帰ってきた父は部屋の中を見渡して言った。


「お兄ちゃんね、今日は爽子ちゃんとデートだって。」

「あいつ、大学が決まったからって早速・・・。」

「そりゃ〜ずっと我慢してたんじゃないの?」


翔太の嬉しそうな姿を母は思い浮かべた。いつの間にかすっかり彼女が一番になった

息子に、成長を感じる。また、爽子のこともとてもかわいがっていた。

そんな時、透太はゲームをしながら何気なく独り言を言った。


「しょーた、さわこと何してるんだろう??いーなぁ」


小学5年生の素朴な疑問に思わず顔を合わせた夫婦。


「あいつ・・・ちゃんと分かってるだろうな?」

「そこまで責任感がない子に育てた覚えはありません、でもねぇ・・・」

「ん?」


爽子を知っている母は、二人のペースの違いをちょっと心配していたのでした。

そして、それが現実となることを母はまだ知らない。



**************



「−っくしょん!」

「風早くん! 大丈夫? 風邪?」


電車を乗り継いで、二人は家から2時間ぐらいかかる北海道のとある街に来ていた。

ここは街自体がおしゃれで、ちょっとした若者のデートスポットになっている。そこに爽子

が前から行きたがっていた、薬草カフェというのがあり、まあ言えばそこを目的に二人は、

日帰りデートを決行したというわけだ。


「大丈夫、大丈夫」


そう言って爽やかに笑う風早に爽子はぽっと頬を赤くした。


「このお茶・・・おいしい。ありがとう、ここに付き合ってくれて・・・」


また嬉しそうに笑う爽子を風早は照れたように見つめた。お互い久々のデートに緊張感が

隠せなかった。


(まるで、初めてのデートみたいだ・・・)


風早は爽子を会った時から直視できずに、目が合うと、恥ずかしくなった。


「そ、それでさ〜ジョーがさ・・・」

「そ、そうなんだぁ〜〜〜!」


二人がぎこちないウブコントを繰り広げているうちに、時刻はすでに6時を回っていた。

今日は遠出をするということで帰りが遅くなるというのを親に了解を取っているのだが、

爽子の両親を心配させないように、風早はいつも時間を気にしていた。


「うわぁ〜もう6時だ!早いなぁ。」

「ホント? 帰らなきゃねっ!」


久々に二人きりになれた俺達の甘い時間はあっという間に過ぎていく。


店を出て歩き出す二人。風早はそっと爽子に手を差し出した。爽子は、恥ずかしそうに手

を重ねる。こうやって手を繋いで外を歩くのも久々だった。二人は幸せそうに笑い合った。


真っ白のワンピースにブーツを履いている彼女は雪の中によく似合った。久々に私服を

見た風早は、ずっと伝えたい気持ちを言葉に出せないでいた。


二人で歩く雪の道。幸せを感じる一方、もうすぐ高校を卒業する。大学生になるんだ・・・。

そう思った瞬間、風早はなんだか不安になった。


一方爽子も、久々の私服姿の風早にドキドキしていた。黒の皮のジャケットがやけに大人

っぽく感じた瞬間、爽子もまた不安になった。


大学生になると今までみたいに会えなくなる。



「−あうね。」

「えっ?」

「・・・・ワンピースよく似合うねって言ったんだよ」

「えっあっ ありがとう〜〜////」

「会った時から・・・ずっと思ってた」


風早に見つめられて、爽子はぽっと顔を赤くした。


「か、風早くんも素敵です。/////」

「あ、ありがとう////」


か――――――――っ/////


やっと伝えられた気持ち。風早は嬉しそうに微笑んだ。


沈黙の中、雪を踏む音が響く。でも、この間が心地いい・・・。幸せを感じながら、風早は

何度となく、自分の中の欲望と戦っていた。実際、受験のため、もう3ヶ月以上は彼女に

触れていなかった。と言っても、まだキス以上の関係ではないのだが。


風早は自然に握っていた手を恋人繋ぎに握りなおした。


「!」


彼女の身体がびくっとして恥ずかしそうに俯いたのを横目に感じた。でも俺は知らない

ふりをして前を向いたまま。本当はもっともっと君に近づきたいとか、そんなことばか

り考えてる。そんな俺の下心・・・。黒沼はどう思うんだろう。




「あ・・・・」


その時、駅の前で爽子が驚いたように立ち止まった。


「か、風早くん!見てっ」


爽子が指差した方向を風早が見ると・・・・!


「えっ!」


しぃ〜〜〜〜〜〜〜ん


駅の改札前にある看板に目を注ぐと、電車のシステム異常が発生して、電車が当分動か

ないという案内が書いてあった。二人は呆然とその看板の前で佇んだ。


「あの、すみません」


風早が近くの駅員を捕まえて状況を聞くと、後、3,4時間は動く見込みがないそうだ。


「・・・・・・」

「・・・・・・」


二人は思わず黙り込む。隣の主要都市までバスで代替え輸送はあるそうだが、それでも

今の時間なら家までたどりつかない。風早は焦った。


(どうしよう・・・黒沼を帰さないわけにはいかない)


「あのさ、黒沼、このままだと家に帰れないんだ。家に電話してくれる、とにかく」

「う、うんっ」


その時は、風早は必死で爽子の家のことばかり考えてた。この後、まさかの展開になる

とは知らずに・・・。





<つづく>


「君までもうすぐ」  




あとがき↓

このお話、ブログを始めてすぐに書いた話なんですが、ものすごく文章が怪しかった
ので書き直すとだらだらとまとめられなくなっちゃって・・・(いつもながらの私)5話ぐら
いになりそうです。それと、風早母の印象が違ったので少し書き換えました。たった一
日の出来事なのですが、よければまた見に来てください!