「Half moon」(52)

社会人の二人の物語。オリキャラ祭り。オリキャラ紹介⇒(1)をご覧ください。

家を出て行った風早は・・・?そして、爽子は?
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それではどうぞ↓















*********


『蓮?』

「悪いな、遅くに」


蓮が電話をした相手は沙穂だった。沙穂が携帯を拾ったのはおかしなことではない。

でもなぜか、蓮はそこに引っかかった。


「今日、翔太と会った?」

『・・・え?どうかしたの?』

「あの子の携帯拾ったんだって?」

『!』


電話口から緊張感が流れる。


「翔太に携帯渡したろ?」

『・・・うん。それがどうかした?』

「いや・・・何時頃会った?」

『夕方頃だったけど・・・何かあったの?』


蓮は少し躊躇してから言った。


「・・・翔太がいなんだ。どこ行ったか・・・もしかして知ってる?」

『!!・・・えっ??』

「・・・知らなかったらいいんだ。−んじゃな、遅くに悪かった」


ピッ   プープープー


パタンと携帯を閉じて、沙穂は一点を見つめたまま考え込んだ。そして、時計を見る。

時刻は夜11時を指していた。


沙穂は考えるより体が動いていた。


慌てて服を着替えて、母に見つからないように家を出て行った。



***********



風早はただ街を歩いていた。哀しいという感情も感じられないほど、生きているか

死んでいるかも分からない状態で歩いていた。

そして、繁華街を歩いていて、目に留まった店にふらっと入った。そこは、昼はカフェ

で夜にはバーになっていた。昼と夜では全く雰囲気が違っていた。

風早は引き込まれるようにそこに入って行った。


「ーらっしゃい。あれ?お客さん、こちらに来られたこと・・・ありますよね?」


バー若い店員が何か違和感を感じながら言った。そして何も言わない風早に戸惑った。

このバーは昼間に爽子と以前、行ったことのあるカフェだった。


「・・・きついお酒くれる?」

「・・・はぁ、何でもいいんですか?」

「・・酔えれば何でも」


店員は危ない様子の風早に少し心配そうな顔を浮かべて、バーカウンターに入って行った。

店の中は盆休みということもあり、意外にも客が入っていた。


**********



「ーはぁ、はぁ・・・っ」


家を飛び出した沙穂は、必死で風早の行方を捜した。携帯に電話をしても出ない。メールも

もちろん返信がなかった。仙台の風早が行きそうなところを手当たり次第探していた。

探しながら、昼間の風早の姿を思い浮かべる。彼はいつもの姿ではなかった。


沙穂は、無心で風早を捜した。初めて本気で手に入れたいと思った恋。その人には相手が

いた。だけど・・・神様、人の不幸の上に幸せを掴もうとするのは悪いことですか?


沙穂は興奮を抑えきれなかった。ただ自分の信念のまま、想いのまま突っ走っていた。


はぁはぁ・・・


「・・・見つけた」


沙穂は深夜営業の店を片っぱしから当たっていた。ある店のウィンドウから風早の背中が見えた。



***********



「・・・風早くん」


カチカチカチ


一人きりの部屋は時計の秒針が大きく聞こえる。この部屋で感じたことがなかった音。

風早と出会う前までは一人で居るのが当たり前で、寂しさを感じたことがなかった。

彼を知って初めて感じた切ない気持ち、そして孤独感。その気持ちは遠恋になって

もっと強くなった。でも遠く離れていても、いつも彼を感じられた。


パカッ


爽子は携帯を開けた。そして、柔らかく微笑んだ。


あれから、爽子はずっと考えていた。追いかけたら良かったのかと・・・。でも、怖かった。

拒絶されるのが怖かったのだ。今もあの目を思い出しては、悲しくなる。


爽子は、風早が出て行った後、沢山のご馳走を作った。昨日、今日と出来なかった夕食

を作って並べる。作っている間、爽子は幸せだった。風早の好きな物を思い浮かべては、

幸せそうに微笑んだ。


しかし、風早は帰ってこない。時刻は真夜中の12時を回って新しい日付になってしまった。

明日の朝には北海道に帰らなければならない。今日は仙台最後の日だった。


(・・・会いたい・・!!)


爽子は立ち上がり、窓を開けると夜空の満月をせつなそうに眺めた。








あとがき↓

爽子ちゃんもすぐに動ける人じゃないかなって思います。結果的には内面にある、
「漢」を見せる人なんですが。風早はますますヤバイ〜〜〜!沙穂に捕まる!
逃げて!なんちゃって。書きながら自分も楽しんでいる管理人です。
爽子が北海道に帰ったらちょっとまたこのお話お休みします。まだまだ長く続くので・・・。
あまり詰めたくないのです。「早く終われオイっ」と言う方がいたらスルーしてください。
後、このお話以外面白くないと言う方もスルーしてくださいませ。
それではまた遊びに来てください。

Half moon 53