「Half moon」(48)

社会人の二人の物語。オリキャラ祭り。オリキャラ紹介⇒(1)をご覧ください。
光平と爽子が一緒に居たことを知って、ショックのあまり何も考えられなく
なった風早は街を彷徨い歩いていた。そんな時、爽子の携帯から電話が・・・!
こちらはHalf moon         10 11 12 13 14 15 16 17  18  19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29  30 31  32 33 34 35 36 37  38 39 40 41  42 43  44 45 46 47 の続きです。
それではどうぞ↓






















ザーザー


少し前から降り出した雨が勢いを増してきた。


「・・・・・・」



ザーザー


沙穂はバスに揺られながら、爽子の携帯を握りしめていた。窓には雨の雫の中に自分の顔が

映る。その顔は紅潮していた。それは”女”の顔だった。そして、沙穂は携帯に視線を移した。

携帯の待ち受けには風早の寝顔・・・・。


さっきから同じ思考を繰り返している。


初めて見た風早の寝顔。見るだけできっと誰もが好きになる。そんな愛らしい寝顔・・・・。

自然に笑みが零れる。


そして・・・同時にどくんっと胸を突くような鈍い痛み。

沙穂は考えがそこにいくと、それ以上の思考をストップさせた。小さい頃からそうだった。

嫌なことや面倒なことに出合うと、考えるのを止めた。


”風早に会える・・・・”


曇っていた沙穂の顔がぱっと輝いた。そのことを考えると自分の奥底にあるどろどろした

気持ちが消えていくように感じた。


自分でも驚くほど期待感で胸がドキドキしている。


(・・・もうすぐ会えるんだ)


沙穂は心でそう呟きながら、今日の出来事を思い浮かべた。


* * * *


『―え??また美穂がいなくなった?』


美穂がいなくなった事実を母から聞き、沙穂は驚いた。あの後まさかそんなことが起こると

は考えもしなかった。あれから近くで美穂はすぐに見つかったのだが、母に呼ばれて病院に

行った時に美穂が握りしめていたという携帯を見てさらに驚いた。それは爽子の携帯だった

のだ。その後、彼女が美穂を探し続けていることを知り、連絡を取る手段として、すぐに光平

が頭に浮かんだ。その時はただ、秘密を知っている光平しか思いつかなかっただけ。

でもまさか、一緒に居たなんて・・・・。


母には彼女に携帯を返すからと言ってすぐに病院を出た。




カランコロンッ


沙穂は喫茶店に入り、すぐに風早を見つけた。心臓がはちきれそうな程ドキドキしてる。

まさか二人で会える日がくるとは思わなかった。


沙穂はぱっと表情を明るくして、風早に向かって声を掛けた。


「風早!!」

「あ・・・・」


店の奥の方に風早は重い表情で座わっていて、沙穂の声で現実に戻ったように顔を上げた。


「ごめんね、待たせた?」

「ああ・・大丈夫だよ」


そこにはいつもの爽やかな風早ではなく、疲れきって暗い表情の風早がいた。それは沙穂と

まるで正反対だった。沙穂はしとやかに座ると店員に飲み物を注文し、風早に視線を移した。

心なしか緊張している自分がいる。


「・・・どうしたの?何かあった?」

「・・・・・」


風早は沙穂の問いかけには答えず、コーヒーをひと含みした後、携帯のことを聞いてきた。


「はい。これ、爽子ちゃんに返しておいて」

「これ・・・どこで?」


沙穂は聞かれると思っていたので考えていたことをそのまま口にした。


「あ・・これね、なぜか光平の会社の近くを通りかかった時見つけたの。すごいよね!

 まさか知り合いの私が拾うなんて・・・・。導かれたのかなぁ〜あはは」

「・・・・・!」


風早の表情が変わった。


「爽子ちゃん、困ってるでしょ?早く返してあげて」

「・・・・・」


そんな風早に追い打ちをかけるように沙穂は続けた。


「そう言えば・・・今日、爽子ちゃん、光平と会ってたみたいだもんね。なんか用事

 あったのかな?」


風早の様子をちらっとみる。会った時から風早は別人のように沈んでいた。沙穂は女の勘で

分かった。二人の間に何かがあったこと。


「実は・・・・何もないと思うんだけどね〜〜〜2日前も二人で一緒にいる時に会ったんだよね。

 たまたま、爽子ちゃんが会社訪問してたんでしょ?でも夜だったけどね・・・」


風早は俯いていたかと思うと、すくっと立ちあがった。


「・・・ありがとう。それじゃ、これ彼女に返しとく。またお礼は改めて・・・」

「あっ・・・うん。気にしないで」


最後まで風早に笑顔はなかった。沙穂は明るく風早を見送ると、視線を下に落とした。


(・・・・どうしても・・・好きなんだもん・・・・)


沙穂は拳を握りしめながら、心の中の罪悪感を追い払った。言ったことは全てが嘘じゃない。

何より、光平と彼女が一緒に居たのは事実なのだから。


沙穂は心の奥底にある思惑を肯定するかのように、自分に言い聞かせた。









あとがき↓

昨日の「スルーしない宣言」の皆様、ありがとうございます(笑)有難いです。くどくど
長いですが、お付き合いくださいませ。さて・・・沙穂と光平の嫌な奴キャラ発揮な展
開になってきてしまいました。やっとここまできたか(汗)という感じ。二人とも普通の
いい人なんですが、好きになりすぎたんですねぇ。恋は駆け引きといいますが、みな
さんはいかがですか?それではまた遊びに来てください。

Half moon 49