「瞳は知っている」16 

※ 前書きから読んでください。こちら⇒前書き
※ 風早×爽子カップルではありません。オリキャラ登場します。


このお話は 「瞳は知っている」         10 11 12 13  14 15 の続きです。

あらすじ*やっとハルと会うことができた風早は一つのわだかまりが取れたがもう一つは・・・?
それでは以下からどうぞ↓











「瞳は知っている」 episode 16








「マジかよ・・・ほんま・・・・アホやなぁ」

「アホって・・・・」

「いや・・・やっぱ翔太やわ」


そう言って、ハルはどかっと風早のベッドに横になった。訳の分からない風早は

ただ茫然とハルを見ていた。ハルは何を言っているのだろう?


ハルはしばらくしてがばっと起きて思いついたように言った。


「あ、そうか。翔太彼女おるん?」

「えっと・・・今いないけど」

「へぇ〜離れてる間はおったんや」

「ま・・・それなりには」


風早は留学して、持ち前の性格で外国でも友達を作っていった。その中で、それなりに

気が合った外国人と付き合ったり、同じ留学している日本人と付き合ったりしてみた。


「へぇ〜〜〜翔太も変わったんやな。なんで?」

「なんでって・・・・そりゃ外国で触発されたというのもあるし、変わろうと思って・・」

「ふぅ〜ん、なんで変わろうと思ったん?」

「なんでって・・・・一体なんだよっ?」

「・・・ちゃうやろ」


ハルは風早を真っ直ぐ見て、真剣な目で言った。


「ちゃうやろ。爽子のことがあったからやろ」


風早は目を大きく見開いてハルを見た。


「・・・もうええって言ってるやろ。もうええねん。もう全部ええねん。」


風早はハルの一語一句、聞き逃さないように身動き一つせずハルを見つめた。


「もう、あれから6年や。あの時のことを言うつもりはもうない。」

「・・・・・」

「つらかったやろ。ごめんな。俺もつらかったけど・・・・翔太はもっとつらかったと思う」


ハルは全部分かっていた。あの時・・・・苦しんでいたのは自分だけじゃなかった。

風早は拳をぎゅっと強く握りしめた。


「あのまま引きずった関係はもういやや。翔太とはずっと付き合っていきたいねん!!」


大きな声で自分の気持ちを必死で伝えようとしているハルの姿を風早はしばらく茫然と見た後、

がくっと頭を項垂れた。


「―翔太、なぁ、翔太!?」


返事のない風早を掴んでハルは自分に向かせた。


「え!!翔太!?お前、何泣いてんねん」


風早は止まらない涙を必死で拭った。それでも次から次に溢れてくる。


「うう・・・・っ」

「な・・・何泣いとんねん・・・・何・・・うっ」


うおぉぉぉぉぉぉ〜〜〜〜っ


「ハルも泣いてんじゃんっ・・・くっ」

「ふ、ふんっな、泣いてへん・・うう」


うおぉおおおおおおおおっ!!


この夜、二人の男の男泣きがいつまでも近所に木霊したのであった。

もう一つのわだかまりが洗い流されていく。まるで山の上の雪が溶けて川になるように。


”いつか良かったと思える日がきっと来る”


風早はあの海で思った言葉を思い浮かべて嬉しそうにハルと肩を抱き合った。



***********


ザバーンッザバーンッ


ハルが大阪に帰った後、風早は懐かしの海へ出かけた。家からは電車で2時間程かかる

この海には帰国後も行きたかったけどなかなか足を運べなかった場所だ。

打ち寄せる波しぶきが足元にやってきては引き下がり、泡のように消えていく。5月の海は

もう冬の海ではない次の季節を思わせる。そう、あの賑やかな夏を待ち構えているような・・・・。


たった1年の大学生活だったけど、沢山の想い出が残っている。何よりハルと出会った。


”「もっと翔太と大学生活送りたかった・・・」”


苦しかったあの時。決して出会わなかったら良かったなんて思わない。

でも、ときどき思う。出会わなかったらどんな人生になっていたのかって。

今も目を瞑るとあのふんわりした笑顔が浮かんでくる。


風早はそんなことを考えては、すっかり長い月日が自分を癒してくれたことにふっと笑った。


***********


ピロピロ〜〜ンッ♪


「爽子〜〜〜?元気か?」

『あ・・・うん。ハルくんは?』

「元気やで。彼氏できた?」

『そ、そんなの無理だよ・・・・』

「そうなん?俺は?聞いてくれへんの?」


別れた後もハルはこうやって爽子に電話をいれる。それが爽子はとても嬉しかった。


『あ・・・ハルくんは?』

「実は、最近彼女できた。」

『本当〜〜〜〜??』

「うん、まぁな〜〜〜爽子にはきちんと言いたかってん」

『・・・・ありがとう』


電話口の奥から鼻水を啜る音が聞こえる。


「泣くなよ〜〜〜〜こんなんで」

『違うよ〜〜〜鼻水が出ちゃっただけ』

「おっ?それボケてるつもり??」


ハルのギャグにも答えられないほど、爽子は言葉が発せず涙が溢れていた。


「・・・・だからもう、何も考えんでええから」

『・・・・・』

「まぁ、そんだけ俺の存在が大きかったって!?」

『・・・うん。大きいよ。ハルくんは大きいよ』

「冗談やから。マジで答えんなよ・・・」

『・・・・・・』

「まっとにかくそういうことやから、これで電話も最後な。最後にゆーとくわ。俺の遺言

 やと思って聞いて」

『ゆ、遺言!?』

「だからっ冗談やがな。ほんま爽子やなぁ〜〜わははは〜〜っ」

『・・・・・』

「もう、俺は守る存在がいる。だから爽子は自分の思ったところに行ったらいい。以上!」

『・・・・・・』

「コラッ分かったか。もう電話せえへんで。頑張れよ」

『・・・うん、うん・・・ありっがとっう・・・ハルくんも』


(幸せになれよ・・・・爽子)


ピッ


ハルは携帯をしばらく見つめた後ぽつりと呟いた。


「・・・やっとほんまに終わりや」


そして最後の一枚になった爽子の写メを消して、晴々した顔で携帯を閉じた。







あとがき↓

ハルに本当に彼女が出来たかはご想像におまかせします♪後、ハルの心理描写に

ついては番外編を書いてみました(いらんって?)最後に載せますね。

次で終わりです〜〜〜♪それでは最後まで見てもらえると嬉しいです。

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