「Half moon」(64)

社会人の二人の物語。オリキャラ祭り。オリキャラ紹介⇒(1)をご覧ください。

北海道の職場に戻れた光平は久々に彼女の存在を感じて幸せを感じるが・・・?

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それではどうぞ↓






















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10月初め、北海道本社―――


爽子の部署は光平が戻ってきたことに賑わっていた。


「田口光平!只今帰還致しました!!」


おお!!〜〜〜〜ぱちぱちぱち


朝礼時の光平の紹介で軍人のようなポーズをしている光平に部署は笑いが湧き起こった。


「お前左遷だったんじゃないの〜〜〜」

「違いますよ〜〜〜っ」


あははっ〜〜〜


先輩達にからかわれている光平を遠目で見ながら友香が言った。


「なんか、たぐっちゃん嬉しそうだねっ!!」

「うん・・・」


爽子は友香と一緒に光平を見つめた。


あれから1ヵ月半の月日がたった。爽子はあの夏の日から自分の中にある感情に

”見ないふり”をしていた。ただ変わらない日常を送っていた。そうしなければ生きて

いる感覚を感じることさえできないことが分かっていた。


「爽ちゃんとこれから会えるからじゃない」

「え・・・・」


そう言って、友香はにやっと笑った。


「爽ちゃんにはあんなかっこいい彼氏がいるからだめですよぉ〜〜っ」


友香は自分で言っておきながら、自分で突っ込みを入れて一人で笑っている。そんな

友香に爽子は苦しそうに笑った。


「友香ちゃん・・・・それ誤解なので」

「ん?そんなことないよ。爽ちゃん時々危ないからなぁ〜」

「え?危ない?」

「いや・・・あんまり気付いてないと思うけど、天然で誤解させるっつーか」

「ご、誤解!?」


爽子は友香の言葉に固まってしまった。”誤解”という言葉に今もトクンッと心臓が疼く。


「それはどんな風に・・・・」


拳を握り締めて真剣な表情で聞いてくる爽子に、友香は苦笑した。


「まっそういうとこが天然でかわいいっつーかね。私もかわいいもん」

「えっ///////」


焦って真っ赤になる爽子に友香は”やっぱりかわいい”と頭をなでなでした。そして、

男には時々誤解させるだろうなぁ〜とやっぱり思った。


(・・・こりゃ、彼氏大変だ)


「これから、またよろしく!!」


そこに今まで爽子をちらちらと見ていた光平が先輩達に解放され、顔を出した。


「わっ、たぐっちゃん!!おかえりぃ〜〜」


友香と変わらない挨拶を交わした後、光平は高揚した気持ちを抑えながら、爽子に視線

を移した。目が合った爽子はハッとした様子で言った。


「お・・かえりなさい」

「・・・ただいま」

「あ、あの、メールありがとう・・・」

「いや・・突然ごめんね」

「ううんっ・・・」


光平は昨日爽子に職場復帰することをメールしていたのだ。本当は毎日でもメールや声

を聞きたいけど、彼女の反応が正直怖かった。でも、これからはずっと一緒・・・。

風早がいない土地でずっと一緒。


光平はやっと会えた爽子を見ると、帰ってきた実感が湧いた。彼女がいるだけでこんなに

幸せな気持ちになれる。そして、彼女が同じ土地にいないと思うだけで言いようのない

虚無感に襲われた。風早も同じ気持ちなのだろうか・・・。


「―ぐちゃん、たぐっちゃんてばっ!!」

「・・・え?」


光平はトリップしていたことに気づいて慌てて友香に目を向けた。


「だから〜早速今週末、同期会でたぐちゃんの復帰会するから」

「えっ??マジ〜〜〜嬉しいな」


そう言って、光平はそっと爽子を横目で見る。彼女は来てくれるのだろうか・・・・。


「黒沼さんは・・・黒沼さんは来れる?」

「あっうん。行かせてもらうね」


俺は心の中でガッツポーズを決めていた。しかし、一瞬で彼女の表情が変わったのが分

かった。光平は爽子をそっと盗み見る。


(・・・・なんかあった?)


笑顔が曇っている爽子に、光平は少し首を傾げた。


「・・・黒沼さん痩せた?」

「そ、そっかな??」


ずっと爽子を見ている光平に友香は二人の間に割り込んで言った。


「ちょっちょっとぉ〜〜〜〜なんかたぐっちゃん見すぎじゃない??私の爽ちゃんなんだ

 からね!!」

「え?いつ決まったの?」


ぎゃあ、ぎゃあ〜〜っ


二人の様子を微笑ましく見ていた爽子だが、そっとその場を離れて、窓に視線を移す。

秋模様の空に目を細めると、ぎゅっと胸に手を当てた。


「・・・・・」


そんな爽子を光平は目で追う。窓からの光に当たっている彼女はとても儚げに見えた。

今にも消えていきそうで、思わず手を伸ばしそうになる。自分の気持ちが以前より膨ら

んでいるからそう感じるのか、それとも彼女の心に影を落とす何かがあるのか・・・。


光平はそんな爽子の横顔を見つめながら、仙台の最後の日に会った風早を思い出す。


”「俺に・・・・止める権利はないよ。決めるのは爽子だから。」”


風早と言う人間はどういう奴なのか。ますます分からなくなった。彼女に対してその程度

の想いなのか?でも、最後のあの目は・・・?

何であんなことが言えるのだろう。自分なら・・・・言えるのだろうか?自分だけを見て

欲しいって思う。それを他の男にあんなことを言われたら許せないだろう。


光平は不思議な感情に戸惑いながら、仕事に戻った。












あとがき↓

flumpoolのアルバム買っちゃいました。結構好きです。「君に届け」は風早が元気になって
爽子に向かって走る時に是非、BGMにしたいもんです(笑)しかし・・・アニメやばいっすね。
ハマッてます。やはり9巻あたりが大好きです。それではまた遊びに来てくださいませ♪

Half moon 65