「Half moon」(19)
社会人の二人の物語。オリキャラ祭り。オリキャラ紹介⇒(1)をご覧ください。
甘い週末も終わり、二人に別れの時がきます。
こちらは「Half moon」1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 の続きです。
それではどうぞ↓
あっという間の週末は終わりを告げようとしていた。
空港の中には薄ピンクの夕日の光が差し込んでいる。二人は何も言わずに
ベンチに座っていた。その時間がどれだけ続いたのだろう。
爽子がそっと風早を見て、くすっと笑った。
「な、何?」
この深刻な雰囲気の中、いきなり笑った爽子に風早は不思議そうに眼を向けた。
「あ・・・ごめんなさい。風早くんの目がとっても赤いから・・・」
「なっ////・・・それ、爽子もだから」
お互い、くすっと苦笑いをした。
実は最後の夜だった昨晩、二人は号泣していた。風早は北海道を離れる時
よりもつらくて、切ない気持が止まらず、爽子の前で泣いてしまったのだ。
爽子の肌を感じた今、離れるのがこれほどつらいとは思っていなかった。
でも、離れなければならない。
「すぐに・・・また会えるから」
風早は泣いている爽子に、自分に言い聞かせるように呟いた。
二人は空港の出発ゲートの前でぎゅっと抱きしめ合った。二人にこれ以上、
言葉はいらなかった。しばらく抱き合った後、ゆっくり身体を離し、風早は
名残り惜しそうに爽子を見送った。彼女の姿が見えなくなるまで・・・。
爽子の姿が見えなくなった後、風早はそこに立ったまま、携帯を取り出した。
そして、待ち受け画面を眺める。そこには安らかに眠る爽子の写真。
普段はカメラを向けると固くなってしまう爽子とは違い、そこには天使の
ような爽子の寝顔があった。爽子が側にいない寂しさを埋めるためにも
こそっと撮らせてもらったのだ。風早はそっとその画面にキスをした。
「これからよろしくね。爽子」
風早は携帯の爽子に愛しくて仕方ないという顔で呟いた。
そして、切り替えるかのように、きりっとした顔をして、搭乗口に背を向け
前を歩き出した。
***************
「ふふ・・・」
一方、爽子も・・・・
飛行機に乗る前、携帯の電源を切ろうとして待ち受け画面を眺める。
風早と同じく、眠っている風早の写メをこっそり撮っていたのだ。
「風早くん、ごめんなさい」
そして、愛おしそうに眺めた後、電源を切った。
風早に愛された2日間。夢のようだった。何回も耳元で言われた”愛してる”
と言う言葉。そして言葉以上に感じる愛しい温もり。
しかし、その温もりはもう側にはない。胸の奥が焼けつくように痛い。こんな
につらい気持ち知らない。出会って6年。変わることのない想い。そして新たに
知った想い。もう”好き”だけでは足らなくなった、欲張りな私。
「うっ・・・ううっ」
爽子の右手の薬指には次々に落ちてくる涙が当たって濡れていった。
そして、飛行機は大きな音を出して加速していき、北海道に向け離陸した。
風早は空港の外から、爽子は飛行機の窓から、光り輝くハーフムーンを見ていた。
お互い”愛してる”と心で呟いて・・・・。
********
「えっ!!風早!?」
「あ・・・っ」
空港を出ようとした風早は前から聞こえる声に顔を上げた。そこには光平や蓮
達がゲートに向かって歩いて来ていた。
「偶然!彼女送ってたの?もう行ったんだ?」
昌が大きな声を上げて風早のところに足早に走って行った。
光平を送りに来た、沙穂はびっくりしたような表情をした後、大きく肩を動かし、
深呼吸をした。
「風早、昨日はごめっ??うわっ・・・どうしたの?」
普通に話そうと風早を見上げた沙穂は驚いた。
「え?」
沙穂が驚いたように言うので、皆、一斉に風早の顔を見た。そこには目を腫らし、
明らかに泣いたと思われる顔の風早がいた。
「あ・・・////// み、見んな!!」
風早は恥ずかしそうに顔を隠した。そんな風早に昌は大笑いをした。
「ぎゃははは〜〜〜〜!!かわいいなぁ、風早!」
うわはっははは〜〜〜っ
昌が大笑いをしたのをきっかけに全体が笑いの渦になった。
「くそっ〜〜〜蓮まで笑ってるし/////」
光平もそんな風早に少し笑った。そして、芽生え始めていた恋心をきっぱり捨てよう
と決心した。
そんな中、光平は風早と目が合った。
「・・・変わってあげたいけどな。今から」
光平がそう言うと、風早がふっとせつなそうに笑った。
「向こうでの爽子を知らないから、ほんとはちょっと・・・いや、すっげぇー田口
がうらやましい。」
そして、俯いてぷっとほっぺを膨らましている。
光平はそんな風早を呆気にとられて見ていた。そして、お腹を抱えて笑いだした。
「な・・・なに??/////」
「あはははっ〜〜〜いや・・・ごめんっ。あはは〜〜〜」
風早は照れて怒っている。そこに皆も入ってくる。もう何の壁も感じなかった。
光平は思った。こんな風早だから彼女の笑顔を守れるんだと。
「まぁ・・・なんだ。なんかの縁というか、これからもよろしくな」
「こちらこそな」
風早の言葉に光平は笑って返した。そんな二人を見つめる蓮、昌、太陽。そして
沙穂・・・。そこには6人それぞれの想いがある。その時はまだ、誰も知らなった。
すでに様々な想いが絡み合ってきていることを・・・。
あとがき↓
と、ここで第一弾ラブイチャが終了。やりまくった週末とも言えるでしょう(笑)
二人はいつもの生活に戻り、それぞれの場面でお話が進んでいきます。そして夏!
というところで風早先生に戻ります。いつも拍手・コメント、ありがとうございます。
昔の妄想話にも拍手下さった方、ありがとうございます。楽しんで頂けたら
幸いです♪それではまた遊びに来て下さい。