風早家シリーズ「突然の訪問」<後編>

付き合って半年の二人。デートの途中に突然の豪雨に降られて!?
風早家シリーズ短編の後編です。
以下からどうぞ↓













そして、それぞれ風呂を済ませ、風早家の夕食の団らん場面になる。

遠慮する爽子を必死で母は引きとめ、父が帰宅し、5人で賑やかに

食卓を囲んでいた。


「何だ、翔太。爽子さんが来ているというのに無口じゃないか」


父はさっきから不機嫌そうな息子の姿を見て声を掛けた。翔太が何かを

言う前に母が代弁する。


「だってね〜〜〜!!こんなことあったのよ」

「もういいって!!母さん!」


遮る翔太をもろともせず母は続けた。そしてそこに追い打ちを掛けるような

透太の発言。


「俺、またさわこと入りたい〜〜〜〜!!」

「なっ!!」

「////////」


怒りを表情に出す翔太と真っ赤になる爽子。



「こらっ!透太はもう小学4年になるんだからそんなことを言ってはだめだ。

 謝りなさい」


厳格な父に弟は叱られて、バツが悪そうにしていた。


「ごめんなさい・・・」


「だ、大丈夫です!私も図々しく人様のお家でお風呂をお借りするなんて・・・」


これはいつもながらの風早家の風景なのだが、透太が叱られたと思った爽子は必死

で弁解した。


「いいんですよ。うちは男が多いから何かと女の人に対する礼儀がなってなくて」


そう言って、優しそうに爽子に微笑む父に3人は目をまん丸くする。


(初めて見た〜〜〜〜!こんな父)


3人は同じことを思っていた。風早家の主である父は厳格で、頑固親父であった。

そんな父が爽子に優しく微笑んでいる。母はそんな父を見て、娘が欲しかった

のだと実感した。そして爽子の存在を嬉しく思った。


「とにかく、こんなことがあって、爽子ちゃん自身がうちに来るのを嫌になら

 ないか心配だわ〜〜〜!」

「そ、そんな、おこがましいです。こんなによくして頂いて・・・」

「よかった!!うちは女の子がいないから来てくれたら華があって嬉しいわ」

「は、花??・・・・!」


爽子は母の思いがけない言葉に目をまん丸くした。そして、思いっきり手を振り、

真っ赤になって否定した。


「本当ですよ。爽子さんが来てくれると皆嬉しいんだよ」


爽子は、風早両親からそう言われると、ぽーっとして目にうっすら涙をためた。


「あらあら〜〜〜!どうしたの爽子ちゃん」

「う、嬉しくって・・・・」


そんな爽子の姿に風早家の誰もがほっこりと笑った。翔太を除いては・・・。


****************


「今日はありがとうございました」


深々と頭を下げる爽子に


「また来てください」

「いつでも待ってるからね。爽子ちゃん」

「さわこ〜〜〜〜今日はごめんな。またね〜〜〜!!」


と家族に声掛けられ、爽子は嬉しそうにまた頭を下げた。

そして送ると言った翔太と風早家を後にする。


外の雨はすっかり上がっていた。

二人はしばらく夜道を歩いた後、爽子が申し訳なさそうに言った。


「・・・わざわざ、送ってもらってごめんね」

「あのねっ・・・そんなの当然だから。むしろ俺が送りたいの」


二人は顔を見合わせてにっこり笑い合った。そして爽子が幸せのため息を

を一つ落とす。


「風早くんのご家族は本当に素敵な家族だね・・・」


翔太は、夢心地のように嬉しそうに話す爽子に嫉妬で一杯一杯になっていた

自分自身が恥ずかしくなった。


「今日・・・ごめんな。弟が」

「ううん・・・。透太くんかわいいね。私兄弟いないから・・・」


嫉妬していた自分を恥じたのも束の間、爽子のほんのり赤くなった顔を見て、

また嫉妬のボルテージが上がっていく。


「と・・透太に、み、見られた?」

「?」


恥ずかしそうに顔を手で隠す翔太に何を言っているのか理解した爽子は・・・。


「あ・・・・一瞬だったと・・・思いますが////」

「あ"〜〜〜〜〜〜!!」

「!!」


頭を抱えて声を上げる翔太を、爽子はおろおろして見ていた。


「俺、黒沼が思うような奴じゃないから。ちょっとのことでこんなだし・・・」


語尾が小さくなって恥ずかしそうに言う翔太に爽子は反論する。


「そんなことないよ!!風早くんはいつも爽やかで人との壁がなくて・・・それから!」


話しの途中で翔太は爽子をぎゅっと抱きしめた。


「俺・・・爽やかなんかじゃないんだって!!」


いきなり抱きしめられた爽子は何も考えられず、ただ翔太の胸に顔をうづめていた。


「いつもこんなこと考えてる。黒沼に触れたいって!」


いつも自分を過大評価する爽子に日頃からジレンマを抱えていた翔太はついに爆発した。


「ご・・・ごめんな。こんな俺で」


そーっと身体を離して、爽子の顔を覗き込むと・・・。


「・・・・・。」

「黒沼?」


爽子は驚きのあまり、一瞬、意識が飛んでしまっていたのだ 。


「黒沼!!」

「あ・・・は、はい」


翔太は、やっと我に返った爽子に目が点になった。


(もしかして・・・今の聞いてない?)


思わず、感情に流された翔太だったが、爽子の姿に安堵の表情を浮かべた。


「あ・・・あの、ごめんなさい。////」

「お、俺もごめん。突然//////」


その後もぎこちない二人は無言のまま、爽子の自宅へ向かった。


*****************


後日談


あの風呂場でどこまで弟が見たのか?気になっていた翔太だったが、ショックが

大きくなるような気がして、あえて聞いていなかった。しかしある日のこと――


「さわこの肌白かった〜〜〜〜!やっぱ母ちゃんとは違うわ!」


思わず呟いた弟のK・Yなひと言に、翔太の顔は見る見る変わっていった。

その時やっと透太は悟った。”さわこ”の名前を出すと、翔太が青くなったり

赤くなったりすること・・・・。


兄の新たな一面を知って驚いた透太は、その時のドキドキした感情は

自分の胸の中だけにしまっておこう・・・。と心に誓ったのだった。




<END>









あとがき↓

それなりに風早シリーズは全部つながっている感じで書いています。
この時から弟は爽子に憧れていたと。誰にでも嫉妬する風早くんが好きなんです。
それではまたHalfmoonに戻りますか。風早先生に戻りますか。気分でUP
しま〜〜〜す。それではまた見に来てもらえると嬉しいです。

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