「Half moon」(10)

社会人の二人の物語。オリキャラ祭り。オリキャラ紹介⇒(1)をご覧ください。
久々再会して、風早の家に向かった二人。一つ一つ幸せをかみしめていた。
こちらはHalf moon         の続きです。
それではどうぞ↓















電車を乗り継いで、二人は風早のアパートに着いた。


「うわぁ〜〜きれいにしてるね」

「いやっきれいにしたんだよ。爽子が来るから。男の一人暮らしなんて

 みじめなもんだからさ」


爽子はおじゃましますっと遠慮深そうに上がって、そわそわしている。


「どうしたの?」

「なんか・・・初めての場所なので緊張して・・・」

「あはは〜俺も爽子が来て、きんちょーしてるよ」

「一緒だ・・・」


二人は顔を見合わせてにっこりと笑った。


「え〜〜〜こんなに持ってきてくれたの?仕事帰りなのに?」


爽子のすごい荷物の理由は手作りの食材がいっぱい入っていたからだ。一つ

一つ風早が保存しやすいように、食べやすいようにと全て工夫されていた。

風早は好物の数々を目の前して目をきらきらさせた。


「保冷剤も入れてきたので大丈夫と思うんですが・・・」

「あっこれ〜〜爽子の料理食べたかったんだ!!早速食べていい??」

「う、うん」


一生懸命作って持ってきてくれた爽子に風早は嬉しさが込み上げてきた。


「うまっ!!やべ〜〜〜ちょっと泣きそっ」

「えっ!!ど〜〜〜しよっ」


あわわ〜〜と爽子はおろおろしながら風早の様子を本気で心配している。

大学の一人暮らしの時に爽子はよく風早のアパートで食事を作ってくれた。

本当に料理は天下一品で、優しさがこもっていた。その味を久々に感じた

風早は今まで欠けていたものが埋まっていくのを感じた。


「やっぱり・・・・一緒にいないとだめだな・・・」

「え?」

「ううん・・・幸せだなって」

「うん・・・・」


爽子も今までの寂しさが一気に解消されていくのが分かった。長かった3ヶ月。

爽子は優しい眼差しで風早を見た後、身体を向き直した。


「え?何?」


そして、いきなり正座して頭を下げた爽子に風早は目が点になった。


「ありがとうございました」

「え??」


戸惑う風早に、爽子は家での出来事をぽつりぽつりと話し始めた。

今回、風早に会いに行くにあたって、両親にどう話そうかと思っていた。

これだけ遠距離では宿泊しないと会えない。父が許してくれるだろうか・・・。

悩んでいた爽子に母が声を掛けた。「実はね・・・」と。

爽子はその話を聞いて、驚きと同時に涙が止まらなかった。


風早と爽子が離れ離れになると分かってしばらく経った頃、風早が一人で

両親に会いに来た。


『あらあら・・・風早くん、どうしたの?爽子はいないけど』

『はい・・・今日はご両親にお話しがあって』


改まった雰囲気の風早を母はリビングに通した。


『こんばんわ』

『あ・・・どうも』


父は爽子を大切にしてくれている風早を内心認めてはいたのだが、頭では分かって

いても・・・というところだ。この日、一人で現れた風早に父はちょっとビビりながらも

冷静に振舞った。


『何だね・・・突然』


新聞を読むふりをしながら、いつも通りソファーでゆったりと腰を掛けている。

そこに母がこっそり耳打ちする『あなた、新聞反対ですよ』


(ヒィェ〜〜〜〜〜〜)


慌てて新聞を直す父。

父は正直ビビっていた。なぜかというと4月から離れ離れになる二人。まさか

風早が結婚を言いだすのではないかと・・・びくびくしていたのだ。もちろん

若い二人を許すわけはないのだが・・・・。


『それで話しとは・・・』


風早はこほんと一つ咳払いしながら深呼吸して言った。


『俺・・・爽子さんと・・・』


(ヒィェ〜〜〜〜〜キタ〜〜〜)


父は必死で平静を装ったが、表情は隠しきれずすごい形相になっていた。


『結婚・・・・したいんですが、まだ出来ないので』


(えっ???)


父は風早の言葉に張りつめていた緊張感がしゅるしゅると溶けていくのを

感じた。


風早の話しはこうだった。これから遠距離の付き合いが始まるので、それを

認めて欲しいということ。将来的に彼女と結婚したいと思っているけど、まず

は、自分でしっかり歩けるように頑張っていきたいので、彼女にふさわしい男

になるまでどうか見守っていて下さい。と頭を下げてきた。


『おこがましいかもしれないけど・・・おじさんが彼女を大切に想うように、

 自分にとっても大切な存在なんです。未来の保証なんてないけど、自分は・・・

 彼女にベタボレですから・・・・』


照れていたが、風早の真っすぐの瞳に母は誠実さを感じた。もちろん、今までの

付き合いから風早の人間性は認めていた。でもこの時、この人は思っていた以上

に娘のことを大切に思っているのだと実感したのだ。だって、こういうことって

スルーしようと思ったら出来ることなのに・・・。


『爽子を・・・よろしくお願いします』


母が頭を下げようとした時、先に父が頭を下げていた。

母と風早はしばらくの間固まったように、その姿を見ていた。


『は・・・はい!』


風早は心からの笑顔で応えた。


「爽子・・・・いい人に出会ったわね」


母はその話をしてくれ、今回の仙台行きを快く送り出してくれた。父は何も

言わなかったが、止めることはなかった。





「そっか・・・お母さんに聞いたんだね」

「うん・・・・。そんなこと知らなかった」


風早は俯いて、照れながら髪をくしゃっとした。


「だってさ・・・・こそこそ会うのだけは嫌だったし。爽子にこちらに

 来てもらうことがあると思うと・・・ちゃんと話しておきたかったんだ」


風早の真っすぐの瞳が爽子を捉える。

爽子は風早が真剣に自分のことを想ってくれていることを実感して、胸が

熱くなった。


(ありがとう・・・・風早くん)


「お父さん・・・大丈夫だった?」

「あ・・・・うん。こちらを向いてはくれなかったけど」

「そっか・・・」

「あっ、今、他に作ってきたの出すね!」


そう言って、爽子は持ってきた、白いエプロンをつけて、ばたばたと動き出した。


(やばっ久々に見た。かわいい〜〜っ//////)


風早は父親の気持ちが分かるような気がした。小さい頃から大切に育てて、父

しか見てなかった娘が、いきなり横入りした男にさらわれる。


(正直・・・・こんなかわいい娘、手放したくないよな・・・)


爽子を知れば知るほど、愛しさが増していく。おじさんが大切に想うように、

俺も、彼女を大切に守っていきたいんだ。しっかりおじさん達に認めてもら

えるように、俺はこの土地で頑張っていきたい。


風早は愛おしそうに台所にいる彼女の後ろ姿を見つめていた。







あとがき↓

今回はそんなにラブイチャに出来なかった〜。とにかく、風早は爽子を大切
に想っていることを書きたかったんです。まだまだ続きます。ラブラブ週末!
それではまた続きを見てもらえると嬉しいです♪

Half moon 11