「Half moon」(2)

社会人の二人のお話。しかもオリキャラ祭り。オリキャラ紹介⇒(1)をご覧ください。
社会人生活が始まって無我夢中で仕事をしている光平だが、なぜか気になる人
がいて・・・。最初は光平目線、後半は爽子目線です。
こちらはHalf moon の続きです。
それではどうぞ↓



















俺の部署に同期が何人かいるが、まだ喋ったことのない奴も多い。年上の奴もいるが

だいたいが大学出の同い年が多かった。その中で、なぜか気になる存在がいた。


黒沼爽子 22歳

北海道生まれで色が透き通るぐらい白い。真っ黒でさらさらの髪は腰まであって、

一見近づきにくそうな雰囲気を醸し出している。よく見ると顔は整っていて美人だ。

しかし喋りにくく、時々睨まれているような気がする。ついこの間も、会社全体が

停電になって、薄明かりの中、彼女に声を掛けられた女性社員は悲鳴を上げたほど

だ。しかしこの美人、仕事ができる。情報処理能力も高いし、 意外と細かい配慮

をしていたりする。


(ってなんで俺、こんな分析してんだか・・・怖いもの見たさかな)


「こーへー!ぼーっとしてんじゃねぇぞ、外回り行くぞ!」

「は、はい!」


新人営業マンには食事をゆっくりとれる時間もない。光平は彼女から視線を外して

慌ててカバンを持ち、部署を出て行った。

長い廊下を歩いていると、通りすがりにツンと鼻にくる香水の匂いがした。


「あ〜あ、このお花もうだめだわ〜〜」


そこには秘書課の華やかな女性社員がいた。そこはまるで別世界のように感じた。

完璧な化粧で高そうなスーツを着こなしている秘書は枯れかかった植木鉢をごみ箱

にボイッと捨てた。なんとなく見ていた俺と目が合った。


「あの?何か?」

「い・・・いえ」


彼女は魅惑の微笑みを浮かべて、秘書室に入っていった。

その時なぜだか黒沼爽子が頭に浮かんだ。思わず??と自分自身でもなったのだが、

あまりにも彼女と正反対だったからだとその時は思った。



****



「黒沼さん。お昼一緒しない?」


昼休みに入っても仕事をしている爽子に向こう隣りのデスクで仕事をしている同期、

沢渡友香(ともか)が声掛けてきた。その声にぱっと驚いたように爽子は顔を上げた。


「え・・・いいんですか?」

「いいって・・・同期じゃん!」

「うわぁ・・・・一緒したいです!」


ぱぁ・・・っと顔を赤らめて嬉しそうにしている姿に友香はぷっと笑った。


「黒沼さんって印象違う!あはは〜〜」


爽子は明るい友香をぼーっと憧れるような目で見ていた。高校時代に初めて出来た友

人は特別な人達。それまで友達のいなかった爽子は新しい環境になる度に、また一人

かもしれない。でも頑張って自分から作ろう!と意気込んでいたのだ。大学でも友人

が出来、そろそろ人慣れしてもよい爽子だったがやはり初めての時はいつも緊張して

いた。それがこんな風に明るく声を掛けてもらえるなんて・・・・。


二人は会社の社員食堂に行くことにした。


「あっ黒沼さんお弁当作ってたんだね。ごめんね」


社員食堂に誘った友香が謝ると、爽子はぶんぶんと手と顔を振り、


「社員食堂も行ってみたいので!」


と必死に言う姿に友香はまた爆笑している。


「やっぱ面白いわ〜〜黒沼さんって。あはは〜〜〜」


(そんなにおかしいかな・・・////)


「いや〜ね〜黒沼さんって美人でちょっと近づきにくい雰囲気があったからさ」

「そ・・・そんな!び・・美人??あ、ありえません」


またぶんぶん否定する爽子に笑って友香は続けた。


「ほんとよ〜結構同期の男どもなんて注目してるんじゃない?特に・・・田口くん

 なんてさ」

「田口さん?」

「あら?もしかして知らない?」


友香は定食をテーブルに運びながら言った。


「知ってます。同期の方全員」

「え!?まじ??すごい数いるのに!?」

「えと・・・一応名前は」


友香はまじまじと爽子を見た。そして尊敬の眼差しで見つめた。


「あんた・・・思った以上にすごい娘ね」

「??」

「そのお弁当の中身もすごいし・・・」

「あっ・・・食べますか?」

「ほんと??やったぁ〜〜!ぱくっ! うまっ」


爽子は素直に表現する友香の様子に高校時代の友人、ちづの姿を重ねた。

入社して3ヶ月、こんな風に食事をする友達が出来るなんて・・・。


(なんていい人なんだろう・・・)


ほんのり頬を赤らめて嬉しそうにしている爽子に友香はすんなり言った。


「黒沼・・・あっ爽ちゃんとかでいい?」

「え〜〜〜〜う、嬉しいです!」


じぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん。


「ヤダっ泣いてるの??」

「嬉しくて・・・・」

「爽ちゃん・・・かわいい奴ね。私のことも名前で呼んでよ」

「えっと・・・・いいの?」

「もちろん」

「と、友香ちゃん・・・・」

「はい!」


わははは〜〜〜



風早くん・・・友達が出来そうだよ。とてもいい人なんだよ。

爽子は嬉しそうに食堂の窓から青い空を眺めた。











あとがき↓
爽子と光平は同じ会社の同期で、北海道にいるという設定です。さて風早は??
このお話、仙台に旅行に行ったときに思いつきました。オリキャラは蓮だけ
思いついて書きたくなりました。あやしい妄想ですね〜〜〜(笑)
それではまた遊びに来て下さい。

Half moon