「大好きな気持ち」 

ショートなお話です。時期は付き合って半年ぐらいの頃。爽子目線です。
以下からどうぞ↓
















「あーっ!風早さんだ♪」

「うっそーどこどこ?」

「うわっサッカーやってる!!めちゃ上手いね〜」

「真田さんもカッコよくない?」

「ねーっ!!」


「でもさーっ風早さんって彼女いるんでしょ?」

「あの暗そうな人?やだ〜〜!!それってマジ?」

「絶対趣味悪いよね〜」


今日も1年の女子達は風早くんの噂に夢中だ。


聞きたくないけど、人気者の風早くんの噂はどうしても耳にして

しまうわけで・・・。

そう、私、あの暗そうな人の黒沼爽子です。


私もうそだと思ってしまうことがあるのだけれど、一応現実

らしいのです。あの学園祭の日から付き合って、半年が過ぎた。



風早くんはいつも真っ直ぐに気持ちを伝えてくれるけど、

やっぱりこんな噂を聞いてしまうと、私で良かったの?

なんて思ってしまう。


そして、陰で言っているだけではなく、直接告白する人も

やっぱりいるわけで・・・・。つい先日も――


その日、風早くんと帰る約束をしていた私は、花壇の手入れを

して、荒井先生に呼ばれた風早くんを待っていた。

しばらくの間、花壇の手入れをしていたのだけど、なかなか

来ない風早くんを心配に思い、見に行くと、通りの廊下で

人の声が聞こえた。



「す、す、好きです!」



あわわわ〜〜〜!大変!見てはいけない場面を見てしまった!

とその場を足早に去ろうとすると・・・・そこに居たのは

1年の女の子と風早くんだった。


(早く、行かないと!人様のプライバシーが!)


私はくるっと身体を向き直して、帰ろうとすると、目の前に

野球のユニフォーム姿の人が立っていた。



「何で、逃げんの?」


そこに居たのは真田くんだった。


「あの・・・人様のプライバシーなので」

「あんたさ、しょうーたの何なの?」

「・・・・・・。」

「言わないと伝わらない」


それだけ言って、真田くんは去って行った。取り残された私。

何だろう・・・?この気持ち。

何を言ったらいいの?言葉にできないよ。真田くん。



「黒沼!ごめん。遅くなって」

「!」


どれぐらい居たんだろう。気がついたら壁にもたれていた。


「ずっとここに居たの?」


待ち合わせの場所じゃないところにいた私に気付いてくれた風早くん。

なんだろう?この気持ち。

私は無意識に涙が頬を伝っていることに気づいた。


「あ・・・・。」


風早くんはその涙をそっと手で拭ってくれる。


「見ちゃったんだよね?」

「ご、ごめんなさい!!」

「なんで?黒沼が謝ることじゃないよ」


私達の間にしばらくの沈黙が流れた。


”「言わないと伝わらない」”


私、いつも風早くんに言葉をまかせてばかりだ。

思ってること・・・・伝えてない。



「か、風早くん!上手く言葉に出来ないけど、聞いてくれる?」

「え?うん。何でも言って!」

「私・・・風早くんとお付き合いしてもいいのかな?っていつも思って

 た。噂される度にやっぱり風早くんに似合わないって・・・」


「で、でも・・・やっぱり風早くんが他の人を好きになっちゃったら

 悲しくて、嫌だなって・・・ぐすっ」


こんな独占欲いっぱいの私なんてきっと嫌われる。そして思った以上に、

気持ちを言うって恥ずかしい――!

そう思った時、ふわっと何かに包まれる。


「やっと気持ち言ってくれた。」


私は気がついたら風早くんの腕の中で抱きしめられていた。


「いつも不安だった。俺ばっかり突っ走ってるんじゃないかって。」

「いつも黒沼に気持ちを押しつけてるんじゃないかって。」

「えっええええ??」


そんなことあるわけないのに・・・。そっか・・・。言わなきゃ

分かんないね。


「ごめんなさい。風早くんを不安にさせてたんだね」


すると、風早くんはぐいっと私の身体を引き離して真剣な目を

向けて言ってくれる。


「周りや噂なんて関係ない。俺が見る黒沼が大好きなんだ!」


そう言って、とびきりの笑顔で笑った。

初めて会った時から私自身をちゃんと見てくれている。

そんな風早くんだから・・・きっと受け止めてくれる。


「私も、風早くんが・・・・だ、大好きです」

「うわっ//////」


風早くんはなぜだかうずくまって、手で顔を覆っていた。そして


いつもの優しい笑顔で


「ありがとう―――!」


って笑ってくれた。 ありがとうはこっちの方だよ。

ありがとう。風早くん。

ありがとう。真田くん。


「ちょっとはやきもち焼いてくれたのかな〜なんて」

「え?」

「何でもない///////」


風早くんはそう言うと、いきなり歩き出した。


「ん」


そして、後ろを向いたまま、手を差し出した。

その手にそっと私の手を重ねる。

こうやって、手をつないで帰るのは何回目だろう?そのたびに

どきどきしてしまう。


温かい・・・・。


手だけでなく、心までとっても温かかった帰り道。



<END>









あとがき↓

初々しい二人を書いてみました。大学生ぐらいの話が好きなん
ですが、たまにはこんな時期も書いてみたくなりました。
またよろしければ私の妄想にお付き合いください。

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