「かなわない恋」1

今度はオリジナルキャラが主人公というよく分からない感じの話です。
3話ぐらいです。爽子が最後しか出てきませんが、よければどうぞ↓
























あの時、あの時間にあの人に出会ってから私の人生は変わった―

毎朝の、満員電車。私は高校が遠くにあるため、ラッシュ時の

電車に乗るのが必須になっていた。時には気分が悪くなり、

どうしてこんな思いをするのかと、また、平凡な毎日に嫌気が

さしていた。今日も、覚悟を決めて電車に乗り込む。

ぎゅうぎゅうづめの中、電車は音を立てて動き出した。

動き出してしばらくしたその時・・・。




「あっ・・・・。」





私はお尻のあたりに何か違和感を感じた。痴漢だ!初めての体験に

全身が震えた。どうしよう・・・。

とっさに手をつかんだり、大声を上げたりと、友達の例を聞いたことが

あったけど、いざ自分となるとそんなこと無理だ。身体をのけぞったり

動いたりすることが精一杯だった。相手を見ることもできない。

そしてひたすら早く駅に着くのをじっと耐えて待っていた。

ところが、その違和感はエスカレートしていき、私は段々頭が真っ白に

なって、倒れそうになったその時―





「― 止めてください!痴漢はれっきとした犯罪ですよ!」






とスーツを着たかっこいい男の人が痴漢の手を取って冷静な声で言った。






「な、な何言ってんだよ。な、何を根拠に!!」






40代ぐらいの薄気味悪い男が明らかに動揺してそう言った。

電車の中の人たちは一斉にその騒ぎに目を向ける。

私は、恥ずかしかったけど、それよりもその勇敢な男の人に感動して

言葉も出ないほどぼーっと見惚れていた。

そうしているうちに電車は駅に着き、勇敢な男の人にに睨まれて怖気づいた

男は慌てて電車を降りた。







あっちょっと―!」







男の人が追いかけようとしたけど、私はもう十分で、それより

その人しか見えなくて、痴漢の恐怖はすっかり頭になかった。






「あの、大丈夫です!あ、ありがとうございました。」






そして、私はやっと言葉を発することができた。すると、男の人は






「大丈夫?本当に?」

「あっは、はい。」

「怖かったね。満員電車は女の子大変だよね。」






そう言って優しく、爽やかに微笑んでくれた。

私は、ドキドキが止まらなくて、いろいろ話したいのに言葉が出なくて・・・。

そのうちに、男の人は次の駅で降りてしまった。






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「若菜!どうしたの?明らかにぼーっとしているけど?」





学校の昼休み、親友の愛美の声ではっとした。私は朝の出来事が

頭から離れなかった。





「あのね・・・。」親友にぽつりぽつりと話しだす。

「えっつ??それで何にも聞かなかったの?信じられな〜い!」

「で、でも社会人だし、高校生の私なんか・・・・。」







そう、今となってはお礼のしようもない。どうして名前だけでも

聞かなかったんだろう。

あんな爽やかで勇敢でかっこいい人いない。





「ばっかね〜!恋に年の差なんてないし、肉食でいかないとダメよ!」






愛美は私と違って、恋愛豊富でとてもこういう時頼りになる。







「まっ若菜の初恋?応援するよ!とりあえず・・・その降りた駅周辺を
 ぶらつくしかないんじゃない?スーツ姿ならその駅から行ける会社とかね。」






また、会えるだろうか・・・・。

本気の大人の恋ができそうな予感に胸がドキドキした。

















あとがき↓
遠くから二人を見たらという視点で書いてみました。ラブラブじゃないけど
よければ読んでください。

「かなわない恋」  へ