「ある夏の日の・・・」Part3


短編です。高校生、電車通学という場面設定の話のケント編。
でも、なんか違ってしまい、本誌の補完みたいになっちゃいました(汗)
この設定では風爽はお付き合いしています。最初はケント×爽子だけ。
なので、ケントと爽子の姿を見て焦れる風早という設定にならなかったので、
このお話の後にちょこっと付けておきました。よければそれも読んでください。

※ 11月号本誌のネタばれ出てます。ご注意を!


それでは以下からどうぞ↓














「あれっ貞子ちゃん〜〜!?」

「師匠!?」


放課後女の子達と遊んでいて遅くなったケントは、駅に向かっている途中バケツをひっくり返

したような雨に突然降られた。駅には同じような状態の人々が溢れかえっていた。

タオルで必死で体を拭いていると、目線の先に長い黒髪を見つけた。ケントは少し躊躇した後、

表情を作って、爽子に声を掛けた。


「偶然だね!!貞子ちゃんも今、帰り?」

「う、うん。師匠も??」

「そう!あれ?貞子ちゃんが傘持ってないなんて珍しいね」


爽子がびしょ濡れになっている姿を見て、ケントは珍しそうに言った。


「あ・・・折りたたみを持っていたんだけれど、間に合わなくて」

「ハハ〜〜すごい雨だもんね。あ・・・・・」


いつも通り自然に会話していたケントは爽子の胸元に目がいき、表情が固まった。

雨で爽子の下着が透けていたのだ。


ケントは風早が爽子と付き合い出してからは、なるべく爽子と二人にならないように

気をつけていた。


爽やかクンは思ったより、ヤキモチ妬きで、思ったより貞子ちゃんLOVEだった。

俺は何も分かっていなかったことに気付いた。そして、自分の気持ちが思っていた

よりずっと本気だったということ。だから・・・・二人にならないようにしていたのに。


風早といる貞子ちゃんは幸せそうに微笑む。もう、何も教えることはないんだ。その

笑顔を見て時々苦しくなっても、二人が幸せな方がいい。幸せになって欲しいから。


「・・・貞子ちゃん、これ着てて」

「・・・え?」


ケントはカバンに入っていた、薄いベストを爽子に渡した。


「だ・・だめだよ。濡れちゃうから」

「大丈夫だよ〜。多分そんな姿、爽やかクンが見たら大変だからさ〜」

「え・・・・」


爽子はケントが指さした先に視線を下ろすと・・・・。


「うわっ!!/////」


爽子は真っ赤になって、カバンで胸元を隠した。


「す、すみません〜〜〜〜!!お目汚しを・・・・」

「・・・目を汚すとか思う男いないし。それよりこれ着ててよ。師匠からの

 命令だよ〜!!」

「う、うん・・・ありがとう」


貞子ちゃんの魅力に気付いてからは、爽やかクンの気持ちが分かるようになった。

好きな子とかにヤキモチとか妬かない俺だけど、ちょっと分かるというか。そして

こんな彼女の姿にドキドキしてたりするんだから笑える。


***********


がたんっごとんっ


帰る方向が途中まで一緒の爽子とケントは同じ電車に乗り込んだ。この日、雨で電車

が遅れたので、珍しく満員電車になってしまった。


ぎゅう、ぎゅう


「大丈夫??貞子ちゃん」

「う、うん!!師匠も・・・」

「俺は、大丈夫だけど」


二人にならないようにしていたどころか、めちゃくちゃ体が密着している今の現状をどう

回避したらいいのか。


(うわっ・・・・風早が見てたらめっちゃ怒られんなぁ〜〜〜)


「し、師匠と同じ電車って・・・初めてだね」

「うん、そうだね」


そりゃそうだよ。一緒にならないようにしてたんだから。


「今日は風早と一緒じゃなかったの?」

「うん、風早くんは今日、お家の用事があるようで。」

「でも貞子ちゃん、下校時間からは遅いよね」

「あ・・・花壇の植え替えをしていたらこんな時間になっちゃって・・・」


やばい・・・近いなぁ。近すぎて、恥ずかしいんだろうな。貞子ちゃんの白い肌がほんのり

ピンクで、それってやばいんだよな。男なら普通に欲情するし。それも好きな子とかなら

尚更ってやつで。


がたんっ


その時、電車が大きく揺れて、自然に皆から驚きの声が上がった。

気付いたら、彼女を守るように角に持っていき、抱きしめる形になっていた。


「・・・・・・」

「・・・・・・」


正直、童貞じゃないし、女の子と触れあうのは自然に出来る方だ。そんな俺が初恋みたいに

触れあうことがこんなに嬉しいとかドキドキするとか・・・・そんなこと感じてる。


大丈夫だよ。爽やかクン。ちゃんと気持ちストップできるから。二人には幸せになってもらい

たいんだ。風早の側で笑っている貞子ちゃんが好きだから。


想いが走りださないように、俺はずっと”貞子ちゃん”なんだ。


だから今だけ・・・次の駅までの5分間だけ・・・・。


そんなケントのある夏の日の出来事





<END>


「ある夏の日の・・・」Part4

おまけ・・風早焦太編




突然の豪雨で、傘の持っていなかった風早は急いで駅に向かった。駅に着いた頃には

びしょ濡れになっていて、必死でタオルで頭や体を拭いていた。その時、人込みの中で

見つけた光景に愕然とする。


そこには黒沼と三浦が一緒に笑い合っていた。


(何で、二人でいるの?)


それに、黒沼はいかにも男物だろうというだぶだぶのベストを着ていた。それはどう考え

ても三浦のもの。

考えるより、先に体が動いていた。


「あ・・・・」


爽子の驚いた顔を見て、ケントも振り向いた。二人の視線を先には・・・・。

風早は爽子の手を取ると、そのまま人込みの奥に、爽子を連れ去った。


「・・・・へ?」


訳の分からない表情のケントなんて関係ない。今はただ、あいつから遠ざけたいだけ。

風早はぐんぐんと人込みをかき分けて、先に進んだ。ホームには沢山の人で溢れかえっていた。


はぁ、はぁ、はぁ―


「−ごめん・・・我慢できなかった」


ただ、驚いたように顔を紅潮させて俺を見る彼女。そんな純粋な目で見ないで。嫉妬でドロドロ

なんだから。俺ん中。そんな彼女にまだ止まらない俺。


「・・・なんでそんな服着てんの?」

「あ・・・これは師匠が貸してくれて・・・その、ちょっと脱げなくて・・・」

「なんで?」

「その・・・///////」


真っ赤になって俯く彼女に、嫉妬心がさらに膨らんでいく。


「・・・・三浦の・・だから?」

「!」


爽子は風早が何を言わんといているのか、ただ状況が分からず、必死で考えていた。

その時、背後から声がした。


「ちょっと爽やかクン、俺、いいことしたと思うけど?」

「え?」


背後の声はケントだった。二人は一斉にその声の方に視線を向けた。


「そのベストちょっと脱げないんだよな。爽やかクンこっそり見たら?」

「・・・え」


風早は真っ赤になって俯く爽子にますます困惑した表情を浮かべた。


「あ・・・あのっ・・・その雨で、ブラウスが濡れてしまって・・・そのお目汚しを・・・」

「・・・え??・・・あっ!!」


やっと状況に気付いた風早はかぁ―――――っと真っ赤になって、手で顔を覆った。


「ご、ごめんっ//////」

「う、ううんっ////」


風早は先ほどのドロドロした感情はなくなっていた。そして、そっと顔を上をあげる。


「あ・・・・・」


ケントはもう姿を消していた。


恥ずかしそうに真っ赤になっている二人。ケントは遠目に”純情だね〜〜〜”と思いながら

薄ら笑いを浮かべた。その後、ふっとせつない表情になる。


「・・・・またあやねに肩かしてもらお」


こうして一人で電車に飛び乗った。


平穏な気持ちに戻った風早は後で思った。


(でも・・・あいつ、透けたブラウスの中を見たってこと??)


「うぅぅ〜〜〜〜〜〜っ」


やっばり彼氏彼女になった今でも風早焦太は健在なのであった。





<END>








あとがき↓

あまりにもA様の書いていた妄想っぽくなかったのでおまけ付けときました。
ケントのイメージこんな感じなんですけど。いかかですか?「君に届いたら」の
健人は健人っぽくないと思ってます。2次なんでそれもありとは思いますが、や
はり原作に近い方が萌えますよね。それではまた遊びに来て下さい。

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