After Glow 7

オリキャラ主人公、爽風CP揺らぎなし。爽子は新任の高校の保健の先生、風早は大学を
卒業して家業を継ぐという設定。原作高校卒業後のパラレルです。そしてただいま、風早
アメリカ在住中。


☆ 爽子と一緒に居ることが多くなった九条を周りはどう見ているのか・・・?



この話は ★ After Glow 1 2 3 4 5 6 の続きです。












After glow 7










「最近真面目だね。九条くん」
「これが本来の僕です」
「そっかぁ・・最初だけだったんだね」
「それで信じるのはあなたぐらいですよ」
「え?」


爽子の側に居るようになった九条と爽子が廊下を歩くと当然目立つ。二人の姿に誰もが
振り返った。一匹狼の九条が誰かと話しながら廊下を歩いている姿は異質そのものだっ
たからだ。それも隣は教員と言えど女性だ。しかし九条は元々周りを気にする性格では
ないし、爽子自身も訳が分からずその視線に気づかない。二人ともいつも通り話をして
いた。


「あ、そうだ。九条くん。この間のクッキー、美味しかったって言ってくれたからパイ
 でも試してみたの。それからわらび餅にも。保健室寄ってくれる?」
「和洋菓子なんでもありなんですね」
「美味しいといいんですが・・」
「や、うまいでしょ」


二人にこやかに通り過ぎる姿を美咲と由奈は見つけると、一瞬黙り込んだ後、ニヤ〜っ
と口角が上がった。


「・・見た?」
「見た」


それからも普通に見られるようになった光景は九条の”冷酷”な印象を少しずつ払拭させ
ていることに二人は気づいていなかった。


* *


「うわっ!!うま」


放課後保健室。いつものメンバー美咲と由奈にクラスの男子も合わせて4人遊びに来て
いた。先日薬草クッキーを九条に食べてもらっておいしいと言われ嬉しかった爽子は他
の人にも食べてもらおうと沢山作って訪問者達を待ち受けていた。ドキドキしながら遠
慮気味に皆の前に出した爽子の様子に反してあっさり受け取りパクパク食べる生徒たち。
爽子はその姿に目をぱちくりさせる。


「なにコレ?せんせ〜そんな特技もあったの?」
「まじ、うまいし」
「プロの域だよ」
「お粗末さまです・・図に乗ってしまって」
「何それ、あはは〜」


自分の好意を上手く受け取ってもらえるか?そんな風に思ってしまった自分を爽子は恥
じた。新しい環境では無意識に臆病になってしまっている。嬉しそうにクッキーを頬ば
る生徒たちを見ると爽子の顔に自然に笑顔が溢れていた


「え??・・・貞子先生、笑った?」
「マジかよ・・・」


そんな爽子の顔を見て二人の男子が目を丸くする。


「やば・・先生かわいいじゃん」


男子の一人がそう呟くと、もう一人も驚いた顔のまま頷く。すると美咲や由奈が呆れ気
味に鼻で笑った。


「今頃気づいたの?・・惚れんなよ」
「ばっ!///何ってんだよ」


あはは〜〜


美咲がからかい気味に言ってケラケラ笑っている横で由奈が黙り込んでいる。


「ん?由奈どーした?」
「うん・・ヤな気持ちになっちゃった」
「何、ソレ」
「先生ってあんま笑わないじゃん。・・私らだけが知ってたのにとか思っちゃって。引
 くよね〜〜〜!!」


すると美咲も少しの間の後、う〜〜と唸って頷いた。


「なんか、分かるかも」
「お前達こえ〜よ〜〜っ」
「冗談、冗談!せんせ、もっとクッキー食べたい」
「あっどうぞっ!」
「わぁぁ〜〜いっ!」


無邪気に笑う生徒たちの姿に爽子は再び微笑んだ。訪問者が増えていくのは嬉しい。で
もきっと生徒たちの中には心に闇を抱えていても誰にも言えずにもがいている人がいる
かもしれない。そのための”お悩みBOX”だが折角手を伸ばしてくれた”K”という人が
誰かも分からず未だ何も出来ずにいる自分自身の無力さが哀しい。こうやっている間に
もきっと苦しんでいる。


(どうやったら”K”さんに近づけるのだろう・・?)


「−って聞いてるせんせ?」
「あっ・・ごめんなさい、えっと?」
「だから、最近九条くん変わったね、ってば」
「えっ!?九条くん?」


爽子はその言葉にドキッとした。


「うん。最近、授業サボらないで出てんだよねー」
「まじ?あの九条が?」
「・・・」


そう言えば・・・最近はちゃんと校舎の方で会うことが多いように思う。と言っても昼
下がりの時間はあの場所にいるのだが。


「私、同じクラスじゃん。たまたま隣なんだけど、この前さ数学の田島にいきなり当て
 られてさ、それも習ってない問題。”まだ習ってません”て言うとあいつなんて言った
 と思う?」
「え?なんて?」
「”どうせ塾でやってるだろう”って。ムカつく―!!答えられないで黙ってると今度は
 化粧のこととか服装や派手な交友関係なんかのことも言いだしてさ、”関係ないじゃん”
 ってすげー腹立ってさぁぁ」
「私も見てて、ちょームカついた」
「うわっ田島ってメンドクセー。あの中年男。頭いい奴だけ贔屓するしなー」
「でもさ、そこで隣の九条くんがそっと紙を差し出してくれたんだよね。何だろう?
 って思ったら答え書いてたの。そんで”あいつの口を黙らしてやれ”ってぼそっと」
「うきゃぁぁ〜〜〜っ!!それ惚れる」
「でしょ〜でしょっ!!さすがの田島も何も言い返せず青筋を立てたままだったわよ」
「・・・」


何が彼を変えたのか?爽子には分からなかったが確かに最近、自分の誘いにも普通に乗
ってくれるようになったような・・・


「まぁ・・九条くんにならせんせのこと譲ってもいいかもなぁ」
「??」


由奈の言葉に爽子はきょとんとさせる。すると由奈はぶはっと吹き出した。


「やっぱ気づいてないんだねーせんせ。最近、九条くんが変わってきた原因」
「・・原因?何だろう・・?」


生徒たちは最近、九条の顔が優しくなったことに気づいていた。由奈と美咲はニヤニヤ
と口角を上げながら爽子を見つめる。


「元々イケメンだし、近づきにくい雰囲気なくなったらチョー女子が寄っていきそうだ
 からせんせ気を付けてね。私は年の差や、立場なんか気にしないから」
「えっ??」
「好きになる前で止めとくわ。九条くんのあんな顔見てたらねぇ〜〜あははっじゃ、
 クッキーもらってくね」
「えっ??」


そう言って美咲と由奈は楽しそうに帰って行った。後に続く男子もなぜか笑っている。


「えっと・・星野さん・・川村さん??あ、行っちゃった」


爽子は頭がはてなになりがらも、皆が意外に九条のことを気にしていることを知って、
嬉しくなった。それに真面目に授業に出るようになったことも嬉しい。


「皆に愛されてるんだなぁ・・九条くん」


・・と、皆の話題とはまるで違うとんちんかんな感想を漏らしていた。


トントンッ


その時、ドアをノックする音がした。


「忘れ物かな?星野さん?川村さん?」


そっとドアを開けると、二人ではなく、先ほどの男子でもない違うクラスの男子が俯い
たまま立っていた。


「あの・・・?」


黒髪で眼鏡をかけた真面目そうな男子がそっと顔を上げる。


「えっと・・2年4組の岸部くん・・ですね」
「!!」


爽子に名を呼ばれて一瞬眉を顰めたが、すぐににっこりと嬉しそうに顔を輝かせる。


「僕の名前、知ってたんですね。嬉しいなぁ」
「岸部・・海人さん」
「へー下の名前も。もしかして生徒全員の名前と顔が一致してるとか?」
「あ・・一応」
「さすがだなぁ」


岸部は口角を上げると、じっと爽子を見つめた。爽子は訪問した理由が分からず、身体
をちらっと見て何か不自由はないか探した。


「怪我じゃないですよ。ヘルプです」
「え?」


岸部はそう言って、保健室前の”お悩みBOX”を指差した。そして爽子に視線を移して
含みのある笑みを浮かべた。


「”k”は僕です」


爽子は驚愕の表情で大きく目を見開いた。



After glow 8 














あとがき↓

ところどころ変えてはいますが、漫画のストーリを追ってます。でもあまりにもイメージ
が違うので全くオリジナルっぽいですが。爽子が個性的なんでどんな漫画に当てはめても
オリジナルっぽくなります。あの漫画の主人公とかけ離れているしね。ただ”九条くん”に
あたるあの男の子をモチーフに書きたかっただけなんですが(笑)あの子と爽子を絡めた
いというね。本当にオリキャラだけで風早くんごめんなさい〜〜!!もうすぐ出てきます。
本当にオリキャラって楽しいわ♪相変わらず暴走してます。この二次サイト、マニアック。
お付き合いして下さる方もマニアック・・・(笑)