After Glow 6

オリキャラ主人公、爽風CP揺らぎなし。爽子は新任の高校の保健の先生、風早は大学を
卒業して家業を継ぐという設定。原作高校卒業後のパラレルです。そしてただいま、風早
アメリカ在住中。


☆爽子と一緒にいる空間が心地よくなってきた九条。そんな時、何やら視線を感じるよう 
 になり・・・?

この話は ★ After Glow 1 2 3 4 5 の続きです。











After glow 6







あの視線はなんだったのか・・・


九条はあの日から嫌な予感がしていた。今までも悪意のある視線は何度となく感じてき
た。環境がら敵を作りやすい。あの一家に居れば致し方ないこと。羨望と敵意。それは
常に表裏一体で羨望が敵意変わることは一瞬だ。なぜか黒沼爽子と居る時にその視線を
感じるような気がしていた。それからはなるべく側にいるようにした。


そして黒沼爽子を知っていけばいくほど側を離れられなくなった。なぜなら・・・


「だ〜から、貞子先生、ここ診てってば。痛むんだよな〜〜」
「あの、それでは男性の先生を呼んできますので・・」
「あっ〜〜もう痛くて死ぬかもしれない。ね、先生ちょっと見てよ」


そう言ってズボンを下げ、下半身を大きくさせている男子に爽子は驚いて目を見開いた。


「わっ!?大変・・っっ」


保健室から聞こえた声に九条は鋭い視線を向け、”ったく・・”と呟きため息をついた。


「じゃ、俺が診てやるよ」
「!!」


柱にもたれかかりながら長い足をどかっとドアにかけた。低い声の主をその男子が確認
するといかにも凍りついたように固まった。


「く・・九条??あっ!先生、もう大丈夫かも。それじゃっ!」
「えっ・・あの」


そう言って慌ててズボンを上げると、ぴゅうと漫画のように走り去ってしまった。爽子
は呆然とその光景を見つめ、九条は呆れ気味に爽子を見つめる。二人の間にし〜〜んと
沈黙が走った。


「・・あのさ、”大変”じゃないし」
「く、九条くんっ!!」


そう、この女は異様なほど男子の”性”について鈍感である。ウブなんて死語を通り過ぎ
るぐらい無知で心配になるほどだった。そこが天然記念物所以なのか、最近は面白がっ
て近づいていく男子が多いように思う。


(確かに、22,3で・・今時いないよな)


爽子をじっと見ると、手をぎゅっと握りしめ眉を顰めている。


「先生?」
「大丈夫かな・・救急車呼ばなくていいのかな・・」


がくっ


本当に倒れそうになる。本気で心配している彼女に説教がましく語る気力が一気に失せ
る。九条はコホンっと咳払いをした。


(でも、言わなきゃな。この人には)


「先生、あれ、変態なんで。そこの区別はちゃんとしとかないと高校生相手に養護教員
 なんてやっていけないですよ」
「え?変態?ど・・して」
「・・・」


九条は思わず頭を抱えこんだ。きっと知識としてはある。でも生徒が自分に対してこの
ような行動を起こすこと自体を信じていないような気がする。じゃ、行為としては経験
あるのだろうか・・・


ズキッ


「・・九条くん?」


(そんな純粋無垢のような目で見られてもさ・・・)


爽子に覗きこまれるように見られた九条は、今感じた胸の痛みを奥底に閉じ込めるかの
ようにその視線を逸らし、話を続けた。


「とにかく、先生は生徒を信頼し過ぎですよ。あの”お悩みBOX”も大方変なもの入っ
 てるんでしょ」
「へ、変なもの・・?う”・・なんで分かるの??すごいっ・・九条くん」
「・・・・」


たまに入っていたとしても”ピーーーッ” 的に書かれた露骨な内容しかなかった。あの
”K”以外の手紙は。さすがにそれは本気の悩み相談ではないと爽子にも気づき、恥ずか
しそうに俯いて言った。


「あのね・・そういうのにも慣れなくちゃって思ってるのだけれど・・///だめだな、私」


ちらっと九条が横目で見ると、白衣から見えるスカートをぎゅっと握り、長い髪の隙間
から赤く染まった頬が見える。本気で自己嫌悪に陥っているようだ。


(この人って、本当に無自覚なんだろうなぁ・・)


性関係以外はかなりしっかりしていそうだし、すべてにおいて確実性も計画性もある。
ドジでもないし、無茶しているわけでもない。それなのに、彼女を知っていくと不思議
なほど庇護欲がわき、守ってやりたい気持ちになる。独占したい気持ちにも・・・。
彼女のことだから結果的には最悪なところまで行くと思えないが傷つくんじゃないかと
か思ってしまう。俺、重症かも。


「ま、俺がいるからいいけど」
「えっ?俺?」
「あ・・・」


珍しい九条の一人称の呼び方に爽子は笑みが零れる。


「やっぱり、九条くんも男の子なんだね」
「へ?」
「なんか、わ、ワイルドでしたっ!!」
「・・・・」


そう言ってグーを作って意気込んで言う彼女にとって俺は生徒以外の何物でもない。
彼女は気づいていない。”先生”でなく一人の人間として相手に対等する時に”僕”から
”俺”になることに。


「相変わらず、スーパーミラクル天然ですね。先生」
「え?何が?どこが?・・・教えてもらえないかな?皆によく言われるのでっ」


本気で悩んでいるのか真剣な顔の彼女が妙に愛しくなった。九条はかなり自分より低い
位置にある爽子の頭をぽんっと触れると、優しく微笑んだ。


「そのままでいいんじゃない?先生は」


彼女の頬が柔らかに緩む。この人は嘘をつけないのだろう。愛想笑いが出来ない。だか
らこそ彼女が笑った時は本気で嬉しい時のように思う。きっと今のは本物の笑顔。この
笑顔を見ると、不思議に温かい気持ちになれた。こんなことは初めてだった。


「っ!」
「九条くん?」


その時、またあの視線を感じた。九条はさりげなく爽子を隠すとドアの方を鋭く観察する。
そして廊下を見渡した。でもさきほどの視線の主はすでに立ち去っていた。


「・・・」


その視線は自分に向けられたもの。彼女を巻き込むわけにはいかない。
九条は廊下を見つめたまま、ぎゅっと拳を握りしめた。



After glow 7 














あとがき↓
ちょっと爽子が純情すぎるかな。でもこの話はこの設定で。さて、爽子は未経験か
経験済みか・・・もう少し先に出てきます!