After Glow 12

オリキャラ主人公、爽風CP揺らぎなし。爽子は新任の高校の保健の先生、風早は大学を
卒業して家業を継ぐという設定。原作高校卒業後のパラレルです。そしてただいま、風早
アメリカ在住中。


☆岸部に騙された爽子を助けた九条。あれから二人は・・・? 


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After glow 12















「・・さて、どうするか」


九条は目の前の光景にため息をついた。眠ったままの爽子をとりあえず自分の部屋に連
れてきた。自分の上着をかぶせて自分のベッドに眠っている爽子をどれだけの時間を見
つめ続けただろう。刻々と時間は過ぎていき、すでに22時を過ぎている。山野井あた
りに電話を入れて何とかしてもらうのが良いのだろうが変に誤解されるのも面倒だし、
誰かに連絡取ってもらうにしても服を着せないといけないし・・などと思いあぐねなが
らはたと気づく。


(・・俺が帰したくないだけか)


九条は手で顔を覆いながらかぁーっと顔面が熱くなっていくのを感じた。ちらっと見る
と白い首筋が月明かりに照らされ、艶めかしく感じる。九条はふーっと息を吐いた。


「紅茶にちょっと入れられただけの酒で、どうしてこんなになるんだよ・・弱すぎだろ。
 そんなじゃ、危なっかしいし・・目、離せないよ。俺じゃなきゃどうなってたか・・」


そんな独り言を呟きながら、吸い込まれるように爽子の髪にそっと触れていた。


「俺じゃなきゃ・・」


そう言いながらも正直、これは忍耐レースのようなものだ。


「あのさ、俺も男なんですけどね。気づいてる?」


そう言って九条は苦笑いをすると・・・


「爽子」


と呟いた。すると寝ている爽子の顔が嬉しそうに笑った。その顔は本当に幸せそうで不
思議に”女”を感じた九条はドキッと胸を鳴らす。もう一度見たくて再び名前を呼んだ。


「爽子・・」


穏やかな寝顔を見続ける。どんな夢を見ているのだろう・・・?
よく見れば本当にきれいだと思う。まつ毛は長くて、白い肌に赤い唇が魅力的に象徴さ
れている。髪は彼女の性格と同じように真っ直ぐで透き通るほど・・きれかった。この
人を知れば知るほど、きっと男は惹きこまれる。自分だけが知っていたい、他の誰にも
触れさせたくない・・自分が子供なことに焦燥感さえ感じてしまうほど、狂おしいほど
彼女を求めている自分がいた。九条はドクドクと激しい自分の鼓動を感じながら爽子の
頬に手を添えると顔を近づけた。そして唇まで後、5センチというところで爽子の口が
微かに開く。


「・・・え?」
「かぜ・・はや・・ん」


(かぜ・・はや?)


微かに聞こえた言葉。それが何なのかはっきり分からなかった。ただあまりにも彼女が
幸せそうなので何の夢を見ているのか知りたくなった。もし、その口にした言葉が名前
でしかも、男の名前だったとしたら・・・?


九条はそんなことを悶々と考えているといつの間にか爽子の隣で眠ってしまっていた。


* *


「う”・・え?うわぁぁ・・っ!?」


がばっ


横で言葉として成立していない叫び声で俺は目が覚める。するとふるふると小動物のよ
うに震えてシーツを身体に絡ませている黒沼爽子の姿があった。九条はポリポリと頭を
掻いて起き上がる。それは現実だった。


「・・目覚めました?気分は?」
「えっと・・大丈夫・・です・・」


どんどん語尾が小さくなっていく爽子は羞恥心でいっぱいなのか真っ赤になっている。
こんな顔もかわいいなぁ・・なんて思っている俺は本当に重症だと思う。でも彼女が焦
るのも無理はない。目が覚めると横に上半身裸の男がいて、しかも自分は下着姿。元々、
裸で寝るのが俺の通常だった。


「わ、私・・っ・・あのっ」
「はい。一緒に寝ましたけど」
「△×●◎〜〜〜☆☆!!」


いかにもパニックになってますと言う風な爽子に九条は顔を背けてぷっと噴き出した。
あまりにも想像通りの反応だったからだ。くるくると表情が変わる彼女にとりあえず
今までの状況を話した。酔っぱらって眠ってしまい、ここに連れて来るしかなかった
こと・・・


「ご、ごめんなさい・・ご迷惑を〜〜〜っ!!・・・あ」


そして爽子ははたと気づく。無断外泊をしてしまったことに。父の顔を思い浮かべると
さーっと顔面蒼白になっていく。九条はそんな爽子を察するように言った。


「大丈夫ですよ。お家の方には山野井先生に連絡しておいてもらいました」
「えっ・・?」


実はあれから思いあぐねた結果、どう考えてもこのままズルズルいくと面倒なことにな
ることが簡単に予測出来たので山野井に連絡した。すると”彼女の家の手配は俺にまか
せて黒沼先生のことよろしくな”と電話を切られてしまった。


(・・何考えてんだが。あの放任教師。俺のこと信頼し過ぎじゃね?)


「あの・・昨日は助けにきてくれて・・ありがとう」


爽子はシーツを握りしめながらおずおずと言った。そして段々頬を染めながら言葉を詰
まらせる。明らかに挙動不審だ。


「あ・・あのっ、そのっ・・・」


すると上半身裸の九条が膝を立てて色っぽく爽子を見つめるとニヤッと笑って言った。


「昨日何かあったか気になる?」
「////」


言いにくそうな彼女の代弁をするとさらに頬が真っ赤に染まった。今時は中学生でもも
う少しマトモな反応が出来るよと思うほど、純情すぎてからかいたくなる。


「・・下着姿の女と一緒に寝て、何もしない男がいると思いますか?」
「・・・」


(あ・・固まった)


「な〜〜んて冗談ですよ」
「えっ!?」
「っていうのも冗談」
「えっ・・えっ??」
「ぷっ」


笑いが堪え切れずついに吹き出した九条を見て、爽子はぷぅっと頬を膨らませた。


「か、からかってますねっ!」
「はい。だって青くなったり、赤くなったり、先生からかうの面白いから」
「うぅ”〜〜〜〜っ」
「すみません。うそうそ。何もしてないよ」


すると爽子はほーっと息を吐き、安堵の表情を浮かべた。そしてキラキラした顔で言う。


「九条くんが・・そんな悪い人じゃないこと・・知ってるから」
「え?悪い人?」
「あの・・相手の意思なしに、その・・っ」
「身体を求めること?」
「////う、うん・・っ」


なんか変な信頼感が妙に癪に障った。やっぱ彼女は何も分かっていない。九条は片膝を
立てながら射抜くような目で爽子を見つめた。


「あ・・あのっ」
「先生、俺いい人ってどうして分かるわけ?」
「分かります!!だって・・いい人じゃないと、こんな風に助けてくれたりなんかしな
 いでしょう」
「あなたが危なっかしいからでしょうが」
「あ・・そーですね」


しょぼんとする彼女がやっぱ可愛くて、これ以上苛めるのはやめようと思った。


「ま、あんまり信用しない方がいいですよ。俺も男ですから」
「え・・それってどういう意味?」
「まぁいいじゃないですか。ところで先生、昨日のこと覚えてますか?」
「えっと・・岸部くんとお話してから記憶がなくなって・・一体、誰があんなこと・・」
「・・・・」


九条はちらっと爽子を見ると言いにくそうに視線を泳がせた。
正直、本当のことを言うべきかどうか迷っていた。彼女を傷つけたくない。でも真意を
知らないのはきっと彼女の本望じゃないような気がした。”お悩みBOX”を設置するぐ
らいなのだから。九条はふーっと息を一つ吐くと決心したように爽子に向き合った。


「・・岸部が犯人なんだよ。だから守る必要なんてないんだ」
「!!」
「・・ごめん。俺への恨みだったんだよ。”K”を装って先生に近づき、俺を貶めようと
 していた。だから、はっきり言うけど・・悩みを相談する気なんかなかったんだ」
「・・・」
「もしかして・・知ってた?」


コクンと頷くと爽子は哀しげな目をして言った。


「岸部くんがあんなことしたって言うのはびっくりしたけれど・・酔って記憶が途切れ
 そうになりながら、岸部くんの独り言が聞こえていたの・・私のことも言ってた」
「じゃぁ、なぜっ!?」


そこまで分かっていながら、なぜあの時岸部のことを助けようとしてたのか九条には理
解出来なかった。完全に爽子のことを馬鹿にしていたのだから。


「つらいのは・・岸部くんじゃないかなって思ったから。九条くんと比較されることも
 嫌だっただろうし、お家を背負うこともきっと・・。こんなちっぽけな自分だけれど
 味方になれたら・・って思ったの」
「で、でもっ・・あいつに服脱がされて、体育用具室に閉じ込められたんだぞっ!!」
「怖かったけれど・・岸部くんを助けなきゃって思っていたのでそれどころじゃなかっ
 たというか・・それに」


と言う、とんちんかんな答えに呆然とする俺に彼女は爆弾を落としてくれた。それも最
高の笑顔で。


「九条くんが・・・助けてくれるような気がしていたの」
「っ・・!」


そんな笑顔で、しかも相変わらず下着姿の彼女を凝視するのはこれ以上危険だった。俺
はまだ彼女に想いを告げる権利も抱きしめる権利もない。俺にはやるべきことがあった。
大きな重い荷物を抱えて生きている限り、手を伸ばすことは出来なかった。


どんだけ純粋で馬鹿なマリアなんだと思いながらも・・ただ愛しい。この気持ちは本物
だと思った。こんな人、他にはいない。認めざるえない。俺は彼女に恋してる。


九条は爽子に優しく微笑みかけた。


「助けますよ。どんな状況であろうとね。・・・爽子」
「えっ??」


あたふたとしている彼女を横目に俺はワクワクした感覚を胸に覚えた。大きな荷物に立
ち向かおうという決意と共に・・・



After glow 13 














あとがき↓

久々の更新。お正月休み。ちょと・・暇。こういう時に妄想吐き出します。
いつも気まぐれすんません。