「ストレスの理由」

こちらは「Once in a blue moon」の中の風早家の話です。直接描写はありませんが、

ちょっと大人な内容なので自己責任で読んでください。



結月が生まれたばかりの風早家、翔太はあるストレスを抱えていた。そのストレスとは!?


※ このお話は「Half moon」と「Once in a blue moon」の中の爽風の話ですが、この話

を読まなくても大丈夫です。簡単に言えば爽風結婚して子供が生まれる。風早は会社員、

爽子は専業主婦という設定です。よろしければ以下からどうぞ↓



























家族が増えて、さらに幸せを噛みしめる毎日。娘は爽子にそっくりで、言葉では形容

できないくらいかわいい。二人を幸せにしたいという気持はもちろん強くなり、仕事

に精が出る。でも一日24時間、一年365日の中、仕事がかなりの時間を占める。

娘はかわいい。小さいから爽子の仕事も増える。それは当然のことで、自分も出来る

限り手伝いたいし、娘の世話をしたい。でも・・・その気持ちと反比例するように表

われる真逆の感情。


・・・爽子をひとりじめしたい。


分かってる。分かってるのに・・・。


「爽子、好きだよ」

「翔太くんっ・・・んっ」


一日で一番幸せを感じる時間。今日は週末の夜。どれだけ心待ちにしていたか分から

ない。爽子の柔らかい唇にすべての想いを込めるように自分のを重ねる。月明かりが

俺たちの寝室を幻想的に照らす。こうやって彼女と触れ合うことが当たり前じゃない

と自分でいつも戒めていたつもりだった。側にいるだけで幸せだと。だけどそれは俺

の本心じゃないって結月が生まれてから思った。こんなにこの時間が嬉しくて幸せに

感じるなんて・・・。

俺しか知らないこの時間の彼女の吐息とか表情とか全てが愛しい。

パジャマの肩紐を解くと、きれいな鎖骨が見える。そのすべすべで柔らかい肌に指を

這わせながら耳元で囁くといつも真っ赤になるんだ。


「かわいい爽子・・・」

「は・・・恥ずかしいよっ///」


初めて身体を重ねた時からその姿は変わらなくてそれだけで俺はもう・・・・全て投

げ出してずっと爽子を抱きしめていたい、離さないでいたいと思ってしまう。

俺の胸に全て・・・。


いつの間にこんなに欲張りになっていたのだろう?一緒に居られるだけで幸せだった

はずなのに、どうしてこんなに全部欲っしてしまうのだろう。留まることない欲望は

俺の全身を刺激し、興奮を高めていく。本能的に動く手、身体、唇。

お互い顔を紅潮させ見つめ合ったその時・・・・。


おぎゃぁぁっ〜〜〜〜っ


「・・・・・」

「・・・・・」

「ご、ごめんっ・・・翔太くん。」

「あっ・・・うん」


爽子は遠慮気味に言うと、さっとベッドから起き上がり娘を抱っこした。


翔太は頭をがしがし掻いて、横の結月を眺める。3ヶ月の赤ちゃんの仕事は泣くこと、

寝ること、乳を飲むことだ。分かってる。分かってるのに・・・。


(はぁぁ・・・・っ)


最近、最後まで爽子を抱きしめられていない。

こんな毎日はいつまでも続かないのは分っている。でも無理をしているのは正直な

ところで・・・・。



* * *


「いやぁ、正直さぁ奥さんが子供に夢中じゃん。だから思わず浮気してしまいそうだ

 よ。あっちの方がたまっちゃってさぁ・・・」

「そうだよなっ。妊娠中とか授乳中とか厳しいよな〜〜〜風早はどうなの?」

「・・・・え?」

「なんか元気ないからさ」


ある日翔太は同僚達と昼食をとっていた。同じような立場の同僚の話に目が点となる。

まさに渦中の話題だからだ。


(やっぱ・・・出てるかな)


「別に・・・」


カッコつけるわけじゃないけど、話してどうなるものでもない。


「ソープとかいっちゃう?」

「え??」


同僚の言ったことに目を疑う。男なら普通に話題に出ることだが、驚いたのはそんな

ことではなかった。


「奥さんじゃなくてもいいってこと?」

「・・・ここだけの話だけどな。ヤレればいいって思うことない?」

「ない」


風早の即答に同僚は目を点にさせると、ぶはっと吹き出した。


「な、なんだよっ」

「いや、ごめん〜〜。正直だなぁと思って」

「え?」

「風早さ、あんま奥さんのこと言わないじゃん。だからよく分かんねーけど、もしか

 して奥さんバカ?」

「は?」


思わず眉を顰めた風早を見て、同僚は”なんでもな〜〜〜い”とからかうようなポーズ

を見せて言った。


「こういう時期は外で浮気しても許されると思うんだよな。だって身体だけなんだし」

「だよな〜〜〜俺もそう思う」

「・・・・・」


俺が遊びでそんなことできる方じゃないからと言って同僚を責めるつもりはない。ただ、

同僚達の話を聞いていて分かった。そっか・・・皆、ストレスを溜めているんだ。だが

俺は身体が溜めているんじゃない。そんなことで解消されるわけがないんだ。


結局・・・こーいうことだ。


* *


がばっ


「わわっ・・・翔太くんっ!あ・・危ないよ」


翔太はこの日、直行直帰の仕事で早めに帰ってきた。スーツを脱ぎ終わった後、夕食

を作っている爽子を後ろから抱きしめる。


「今日のご飯はなぁに?」

「ハンバーグにしようと思うの。翔太くん好きだよね?」

「うん。爽子の作るものは何でも好き」

「わわ・・・思いがけないサービスありがとうございますっ」

「ははっ・・・サービスなんかしたことないし」


サービスなんかじゃなくっていつも本心だった。爽子に何かしたくて、喜んでもらいた

くてすることは全部心から自分がやりたいことだ。


「あれ?結月は?」


すると、爽子の顔が一気に赤く染まっていく。


「?」

「あ・・・あのね」


爽子は庖丁を置くと俺の方に身体を向き直し、どっきゅーんっといつも心臓をぶち抜く

必殺の上目遣いで俺を見上げた。


どくっ


「今日の夕食前まで・・・お母さんが預かってくれるの」

「え??ど・・・して?」


すると爽子はぎゅっと目を瞑りエプロンの裾を握りしめると、恥ずかしそうに言う。


「きょ、今日ね・・・翔太くん、早めに帰れるって言ってたから・・・あのっ///」


俺は爽子が全部まで言わないでもすべてを悟った。そして熱い感情がこみ上げて来る。

胸の奥が熱い・・・涙腺も緩みそうになる。


「きゃっ////」


俺はひょいと爽子を抱き上げると、寝室に連れて行った。


「・・・こーいうことでいいんだよね?」

「/////」


さらに真っ赤になった爽子にキスを落とす。


爽子は全部分かってくれていた。俺は身体が溜まっているんじゃなくて(それもあるか

もだけどっ)爽子と触れ合える時間が少なくなったことにストレスを溜めていた。

きっと世の夫婦はそうだろう。同僚もあんなこと言ってるが寂しいだけなんだ。


みんな・・・・奥さんをひとりじめしたいんだ。


一日24時間、一年で365日。あっという間に時間は過ぎていく。そんな中、爽子

も同じように俺と一緒にいる時間を大切にしてくれていると思ったら泣けてきた。


「きれい・・・・」


出産をしてからますますきれいになったと思う。思わず心の声が漏れると、爽子は恥

ずかしそうに微笑みながら身体を隠すんだ。その姿はやっぱかわいくって我慢できな

くなるのは”君のせいだよ”とも心の中で勝手に言い訳してる。


「好きだよ。爽子」

「翔太くん・・・私も大好き」


まだ夕日が差し込む寝室で俺は一分一秒惜しむように爽子の身体を抱きしめる。

今は二人だけの空間。


夕食前までの短い時間、感情が爆発するように身体を重ねた。夜も3時間おきに起き

なければならない爽子に無理をさせるのは分かっていたけど、やっぱ止まんなくて・・・。


一つになった時、ふわぁっと幸せそうに笑う爽子を見てすべてが満たされていく。

爽子だから感じる、爽子だから欲する。・・・・こんなに愛しい人いない。


子どもができたことは奇跡だった。たまらないほど愛しい存在。だけど・・・ほんの

ひと時、真逆な感情を持っていることを許して欲しい。


ひとりじめ・・・したい。


「・・・この前、同僚に言われた」

「え?何を」


甘い営みが終わった後、お互いまどろみながらベッドに横たわる。翔太は爽子の長い

髪に指に絡めながら照れた表情で言った。


”奥さんバカだってさ”


二人はおでこをつけながらお互いふふふっと恥ずかしそうに笑った。



<おわり>

web拍手 by FC2












あとがき↓

このお話すでに読んでる方も多いと思います。すみません・・・最近あまりにも書く時間

が取れないのと甘エロっぽいのUPしたくなって。もう一個修正してUPするかも。ご存じの

方は目を瞑ってくださいませ。蒸しっと暑い日が続きますが皆さんお身体壊されませんよーに!