「Cresent moon」 5

オリキャラ投票企画&リクエス

光平完全主人公の話です。はい、あくまでスピンオフではございません(笑)
光平の名誉のために(?)番外編にもしません(笑)

物語は光平が北海道に来て1年後の話です。(Half moonで95話から96話の間の話)

この話は「Crescent moon」1 2 3 4 の続きです。


会社に戻った光平は爽子にも向き合うことになった。そして想いが爆発してしまった

光平は・・・?


















〜 Crescent moon Epi 5 〜










”『俺にもう・・・優しくしないで』”




「うぅっ・・・」


これで良かったんだ。もう今までの関係ではいられない。これで苦しみから解放され

るんだ。でも・・・胸の奥が堪らなく痛かった。

どうしてこんなに苦しい思いをしなくてはならないんだろう。そしてなぜこんなにも

諦めきれないんだろう。可能性のない恋をいつまで追いかけるつもりだ。そんな自分

が嫌でしょうがなかった。


「・・・たぐっちゃん?」

「!」


俺は居酒屋で飲み明かしていた。飲まずになんていられない夜だった。その時、背後

から聞こえた声にどきっとする。


「・・・・・」


なぜなら見せられない顔だったから。俺はちらっと後ろを振り返って素早く顔を戻す

と絶望するかのように頭を抱えた。


(・・・なんでこんなときに居るんだよ)


心拍数がものすごい勢いで上がっていくのが分かった。後ろに立っていたのは沢渡だ

った。てっきりからかわれると思っていたが、沢渡は何も言わずに俺の隣に座った。


俺は顔を伏せたまま、沢渡に話しかけた。


「・・・一人?」

「ん・・まぁ」


その時の俺は自分のことにいっぱいで沢渡の様子がおかしいことに気づけなかった。

ただ、惨めな自分を見られたくなかった。

沢渡は俺にビールを注いで、自分のグラスにも注ぐと勝手にグラスを合わせた。


チンッ


「飲も」


その日は本当に不思議な日だった。なんでこんなに色々なことが起こるんだろう。そ

の時の俺は普通の状態じゃなかった。酒の力ですべてを忘れようとしていた。それだ

けで終わったら良かったのに。何でこんなことになってしまったんだろう。


「・・・苦しいよ。黒沼さんのことを忘れようと思えば思うほど」


何でこんなことを沢渡に言ってるんだろう。


わっはは〜〜〜っ


後ろで大人数のグループが大騒ぎしていた。その騒ぎが逆に心地良かった。喧噪の渦

の中に飲み込まれそうだ。夢か現実か分からない。だから・・こんなこと話してんだ。


「・・・何で出会ったか分からない・・・」


その時、ふわっと人の温もりを背中に感じた。沢渡が肩を抱いていた。


「・・・分かるよ。世の中にはどうしようもないことってあるよね」

「沢渡・・・」

「爽ちゃんみたいな恋愛・・・できないよ」


光平は友香の言葉をじっと聞いた後、顔を歪めて唇を噛みしめた。


「俺・・・また彼女を傷つけた」

「え・・・」

「・・・っとに最低だよ・・・俺」


本当に不思議な夜だった。蓮にさえ出していない弱い自分。いや、蓮だから見せられ

ないのか。風早と黒沼さんのことだからだけではなくて・・・。


沢渡が側に居てくれてよかった。誰かに話さないときっと・・・壊れてた。


でもまさかこの後、あんなことになるなんて思わなかったんだ。



* * *


ピチピチピチッ


「・・・・」


しぃ〜〜〜〜ん


爽やかな朝、そして白いシーツ。起き上がった俺は頭に手を当て寝ぼけた頭で考える。


(シーツ、こんな色だっけ?・・・)


しぃ〜〜〜ん・・・・・しぃ〜〜〜〜〜〜〜んっっ


「う・・・うわぁぁ〜〜っ」


俺は飛び跳ねた。横に誰かいる。そ〜〜っとシーツをめくってみる。中を確認すると

ばっとシーツを被せた。

思わず目の前が真っ暗になった。両手で顔を覆う。


(・・・やってしまった)


覚醒していくと思い出す。昨日の失態を。そう・・・俺は・・・っ

その時、横のシーツがもこっと動いた。そしてゆっくりと存在が現れた。


「お・・・はよ」

「はは・・・おはよ」


横には裸の沢渡。思わず目が合い、お互い複雑そうな顔で引きつり笑いをする。


(ホテルだ・・・)


見慣れない天井を見て、俺はすべてを思い出した。昨夜あの店で閉店まで飲み明し、

二人で店を出た。そして・・・こういことになってしまった。


何でこんなことになってしまったんだろう。


俺は彼女に救いを求めてしまったんだ。そんな自分はどれだけ愚かなのかと思う。

でも後で知ることになる。


沢渡と俺は同じだったんだって。



<つづく>




「Crescent moon」6 へ 













あとがき↓

光平よ・・・こんな展開じゃなかったはずだっ!何でこうなるの。と皆さんがツッコ
ミたいってね。でもこうなったものは仕方がない。すみませんこの話もう少し続きま
す。人間というのは愚かなものです。はい。