「Cresent moon」 6

オリキャラ投票企画&リクエス

光平完全主人公の話です。はい、あくまでスピンオフではございません(笑)
光平の名誉のために(?)番外編にもしません(笑)

物語は光平が北海道に来て1年後の話です。

この話は「Crescent moon」1 2 3 4 5 の続きです。


居酒屋で飲んでいた光平は友香に偶然会ってしまう。そのまま飲み明かした光平は友香
と一夜を共にしてしまい・・・。


















〜 Crescent moon Epi 6 〜


















あれから一週間が過ぎた。黒沼さんとも沢渡ともあまり会ってない。無理やり外回りを

多く入れた。こうやって会社を出ると安心する。逃げてるって分かってるけど。


「はぁ・・・」


大殺界だ。人生って上手くいかないもんだ。


(俺が招いたことなんだけどさっ・・・)


Plululu〜〜〜〜♪


外を歩いていると、会社の携帯が鳴った。取り出して表示を見る。会社からだった。


ピッ


「はい、田口です」

『ーたぐっちゃん・・・?沢渡です』

「え・・・・」


思わず携帯を落としそうになる。時計を見ると、仕事中。


(デスクから掛けてんな・・・・)


「今仕事中だろ?」

『ははっなんかこそこそと不倫みたいだねぇ〜〜』

「・・・・」


冗談にならない・・・。


「で・・・何」

『だってたぐっちゃん、避けてんじゃん』

「避けてなんか・・・『ーないことないよね?』」

「・・・・」


俺は思わず言葉に詰まった。避けてるっていういか、どう接すればいいか分からなか

った。あの後、沢渡は”私も同じだから”と言った。真意は分からなかったけど同じ気

持ちだって言いたかったのかと思った。事故的なもの?でも、罪悪感は拭いきれない。

やってはいけない相手とやってしまったのだから。


「はぁ・・・まじ俺って最低」


電話を切った後、大きなため息をついた。沢渡と夜に会うことになった。ちゃんと話

さないといけない。


さすがにここまで人生で落ちたことはない。この時の俺はもう半分人生を投げかけて

いた。人間落ちるのはあっという間だ。


しかしこの出来事が後々、俺に大切なことを気づかせてくれることになる。



* * *



「ちょっと・・・自殺でもするつもり?」

「わっ」


店で待っていた俺の前にいきなり現れた沢渡に身体をびくつかせる。かなり陰を醸し

出していたらしい。


「あ、コーヒー」


デーブルにやってきた店員に注文を告げると、沢渡はどすんっと椅子に座った。さす

がにあんなことがあった後なので酒が飲める席はやめておいた。


「・・・たぐっちゃんはさぁ、真面目すぎんのよ」

「え・・・?」


沢渡は頬杖をつきながら上目遣いで俺を見て言った。その瞳はなぜか温かく感じる。

身構えていた俺の力が少し抜けた。


「そんで優しんだな。人のことばかり気にしすぎなんじゃない。もっと私みたいにさ

 自分のこと考えたらい〜のに」


そう言って沢渡は大袈裟に笑う。不思議なことにあんなことになっても雰囲気は何も

変わらない。それは沢渡がそうしてくれるからだ。


「女の肌でちょっとでも気持ちが楽になるんだったらそれでい〜んだよ」

「おまっ////」


いつも通りの沢渡を見ていて、俺はふと思った。あの時の沢渡はいつもと違ったんじゃ

ないか・・・と。


「でも・・・ごめん。俺、あの時・・・」


言い淀んだ俺に、沢渡はにっこりと魅惑の微笑みを返す。


「うん、分かってるよ。たまたまあそこに居たのが私だったからね。念のために言っ

 とくけど、私、たぐっちゃんには恋愛感情ないから」

「・・・そっか」

「ちょっと〜〜明らかにほっとしたでしょ。なんかムカつくわ。そういうとこが男と

 して魅力ないんだよなぁ」

「・・・・・」

「だからぁ〜〜冗談だから。落ちてんだねぇ・・・たぐっちゃん」


言い返せない俺を沢渡はいつも通り大笑いしてその場を明るくする。でも沢渡の表情

が段々と曇っていった。


どうしてこんなにつらい想いをするんだろう?どうして自分だけが上手くいかないん

だろうって・・・この時の俺は思っていた。

でも違ったんだ。悩みのない人間なんていない。


沢渡はコーヒーを一口飲むとふーっとため息をついて語り出した。


「・・・。ごめんはこっちもなんだ。たぐっちゃんとこんな風になっちゃったから言

 うけど、私・・・不倫してんの」

「!」

「ははっ・・・あの夜、彼がさ奥さんと一緒に居たのを見ちゃったんだよね。最初は

 求めてないって思ってたのに、悲しくってさ・・・十分求めてんじゃんって思った」

「・・・・」


沢渡がそんな事情を抱えていたなんて驚いた。それは普段の沢渡からは考えられない

ことだった。


「はは・・・びっくりした?」

「いや・・・うん」

「でもさ、たぐっちゃんには言いやすかったな。一番言うのに緊張した人は・・・」

「?」


沢渡はそう言ってがばっと机に臥せると俺の顔を伺うようにちらっと見る。


「何?」

「爽ちゃん・・・なんだよね」


どくんっ


「黒沼さん・・・知ってんの?」

「うん」

「で?・・・黒沼さんなんて?」


純粋に興味があった。略奪とか不倫とか道徳に反していることを彼女はどう思うのだ

ろうと思った。


「・・・私が幸せならそれでいいって」

「・・・・」


その時、沢渡の目を見てはっとした。彼女が苦しんでいるのが分かったから。

皆、正直に生きたい。純粋でいたい。でも人は大人になっていくと汚れていく。だか

ら苦しいんだ。今まで誤魔化してきた自分と向き合うことになるから。


彼女といると・・・。


俺は自問自答した。自分だけが苦しいと思っていなかったか?自分だけが可哀そうだ

と思っていなかったか・・・と。


そんな自分は浅はかだと・・・その時、やっと気づいたんだ。




<つづく>



「Crescent moon」7













あとがき↓

光平は罵倒されがちですが、私は普通の人だと思うんです。日本人らしい世間体にが
ちがちに固められながら自分を模索していくという。私はそんな光平を一応オリキャ
ラの中で愛しております(笑)が・・・萌え度は上がりきれず主人公になりきれなか
ったんですねぇ〜。人のことを考えられるというのは余裕があるからじゃないでしょ
うか?だから爽子ってすごいって思うんですよ。この話で光平が自分勝手な恋から成
長するところを書きたいなと思っています。8話で終わりそうです。