「Cresent moon」 2

オリキャラ投票企画&リクエス

光平完全主人公の話です。はい、あくまでスピンオフではございません(笑)
光平の名誉のために(?)番外編にもしません(笑)

物語は光平が北海道に来て1年後の話です。(Half moonで95話から96話の間の話)


ある日、爽子が会社を休んでいることを知った光平はそのことがどうしても気になって
しまうのだが・・・。

この話は「Crescent moon」1 の続きです。

















〜 Crescent moon Epi 2 〜










「それでは、よろしくお願いします」


得意先の担当者に頭を下げた後、光平は会社を出てふぅ〜〜っと息をついた。そして

この日何度目かとなる時計を見る。この日は午後からも外回りだった。一緒に行くは

ずだった同僚が今回風邪のため欠勤して一人で回ることになった。この時一人じゃな

ければ思い留まれたかもしれないのに。また次のアポまで時間がなければ諦められた

かもしれないのに・・。何の運命のいたずらか、周りを気にする必要が全くなかった。


(・・・13時半か・・・)


気になってしまうものは仕方ない。さっきから電話やメールをしてもやはり返事がな

かった。彼女が無断欠勤などするはずがないのだ。何かあったに決まってる。そして

ここから彼女の家に行けないことはない。一回飲み会の後に何人かで送ったことがあ

った。家の前まで行かなかったけど、場所はだいたい分かる。俺の中の邪な気持がお

かしいんだ。何か一大事があったとしたら友人として心配するのは当たり前で・・・

と、言い聞かせてる自分がいた。


(でも、実家のはずだから親がいるはず??)


ピロロン〜〜〜♪


その時電話がなった。電話の相手は沢渡で黒沼さんから会社に電話があったと。俺は

急くように聞き返した。


「えっっ!それで?」

『うん・・・それがさぁ・・・たぐっちゃんっ聞いてる??』


俺はその時の記憶がない。ただ考えるより体が先に動いた。無我夢中で走っていた。


* * *


がらんっどんっ


「はぁ、はぁ・・・黒沼さんっ!!」

「え・・・田口くん?」


しぃ〜〜〜〜〜〜〜ん


ベッドの上に座っている黒沼さん、横に看護師さんと両親と思われる二人。皆が一斉

に驚いた顔でこちらを見ていた。


「えっっ?黒沼さん・・・大丈夫なの?」

「う、うんっ心配おかけして」


(あ・・・アレ?)


しぃ〜〜〜〜〜〜ん


「ちょっとっ、ごめん」


戸に手を掛けていた俺はそのまま戸を閉める。そして病室から少し離れると、携帯を

取り出し慌てて番号を押した。


『あっはっはっ〜〜だから言ったじゃん。でもすぐに電話切っちゃってさ〜』

「・・・・」


電話口の沢渡は大笑いしている。俺はどうもやっちまったらしい。沢渡から黒沼さん

が事故に遭ったというから慌てて言われた病院に駆け付けた。でも事故に遭った事実

しか耳に入ってなかったみたいで、”事故に遭ったけど軽症だったから簡単な検査の後

出社する”という黒沼さんからの連絡だったらしい。


(あ”〜〜〜っ何やってんだ)


光平は頭を抱えながら一人廊下で悶絶していた。


「田口・・・?」


その時、背後から聞こえた声に背筋が凍る感覚を覚えた。


(・・・え??)


光平は恐る恐るゆっくりと後ろを振り返る。すると予想通りの声の主が怪訝そうな顔

をして立っていた。


「か・・・風早!?」


冷や汗が出た。そして瞬時に思った。”どうして思い留まれなかったのだろう・・・”と。


「いや、あっあのさ・・・」

「・・・ふぅ〜〜ん」

「いや、ふぅ〜〜んってさ、変な誤解すんなよな。得意先の帰りにさ、ここ近かった

 し、たまたま沢渡から電話もらって・・・っ」


どんどん墓穴を掘っている気がした。明らかに動揺してる。風早はそんな俺をじっと

見つめた後、ふっと笑った。


「えっ・・・」

「サンキュな。わざわざ駆けつけてくれて。仕事途中?」

「ああ・・」

「少し時間ある?」

「うん。次のアポまで1時間ぐらいだけど」

「じゃ、ちょっと付き合えよ、爽子これから出社するらしいし」

「・・・・」


俺は困惑したまま、風早の後について行った。風早は先週末から急用でこっちに来て

いたようで、今日帰る予定だったのが、先に家を出た彼女が事故に遭ったと聞いて慌

てて病院に駆け付けたらしい。するとバイクに軽く当たっただけで大事に至らなかっ

たと分かって胸を撫で下ろしたと話してくれた。てっきり責められると思った俺は肩

透かしを喰らう。何の因果か風早とまた二人でお茶をしている。


まるであの夏のように・・・。



*********



「俺、こっちに居なかったらきっと知らなかっただろうな。今回のこと」

「え・・・」


風早は寂しげに笑ってコーヒーをひと含みした。


「爽子は言わないだろうから」

「・・・・」

「だから悔しーんだ」

「悔しい?」


風早は真剣な顔を俺に向けた。その真っ直ぐな瞳を捉えて離さないのは彼女だけ。そ

して彼女の純粋な瞳を捉えて離さないのはこの男だけ・・・。


「悔しいよ。側に居ないこと・・・」


風早はそう言って、本当に悔しそうに唇を噛んだ。


風早は俺が彼女に告白したことをきっと知っている。でも美穂さんの事件の時に会っ

たが何も言わなかった。それはフラれた俺への同情なのか、彼女に告った腹立たしさ

なのか分からない。ただ知っていることはこの男が思ったより嫉妬深いということと

思ったより自分に自信がないということ。


”『・・・なんでそんな顔すんの?いいじゃん。100%彼女の気持ちは風早にあるんだし』

 『余裕なんて・・・持ったことない』”


半年前の美穂さん事件の時、3人でホテルを出た後俺が言うと風早はマジな顔をして

そう返した。その時思った。二人の歴史なんて関係ない。ただ彼女が好きでたまらな

い真っ直ぐな男なのだと。それが悔しかった。だから、敵わないと思ったんだ。


なぜ彼女と出会ったのだろう?まだその答えが見つけられずにいる。ただ彼女を忘れ

るためにこの半年、必死に過ごしてきた。いや、ずっとそうだ。


「俺と一緒だろ?」

「え?」


風早の声で現実に戻る。すると真剣な目が俺を睨むように見つめていた。その目に少

し動揺した。


「身体が勝手に動いたんだろ?爽子のことを聞いた時」


どくんっ


言葉が出なかった。言い訳もできない。風早の鋭い視線を外せないまま沈黙が走る。


そっか・・・今分かった。


まだ未練たらたらじゃん。全然諦められてない。彼女の前で普通にいることで自分を

追いつめていたんだ。だから苦しかったんだ。


ごくっ


俺は息を飲んで風早を見つめた。


彼女が側に居る限りこうやって本当の自分を偽って生きていくのだろうか。

それはまるで欠けている部分の方が多い、crescent moon のようだった。



<つづく>



「Crescent moon」3











あとがき↓

雪が降りました〜〜。寒いっ早く春にならないかなぁと思いますが、春は忙しいので
嫌だな。しかしオリキャラと言っても書いていくと人格が固まっていくので不思議で
すね。ほんとマニアックですんません。それとなかなか更新できなくて・・・(汗)