「Cresent moon」 1

オリキャラ投票企画&リクエス

オリキャラ投票では4位だったのですが、リクエストもあったということで、光平の
話をちゃんと書こうと思いました。かつて(!?)は「Half moon」という話で主人
公だったはずの光平が最後の方は脇役に・・・(汗)というのもあり、光平の途中の
心理状態がうやむやになってしまいましたので、その辺りの話です。今頃こんな話、
興味がないですよね。しかもオリキャラで真剣に何やってるんだか・・・って感じな
ので興味ない人は見ない方がいいです。全くの自己満足ですので。でもこれが二次の
醍醐味かなと思ってます。


※「Half moon」を知らない人は楽しめないと思います。興味のある方は目次から。
 本編は長いですのであしからず・・・(汗)それでも見たい方は以下からどうぞ↓
































もし風早が full moon だとしたら、きっと俺は crescent moonだ。そんなことを

思いたくもなかった。でも分かってるんだ。彼女にとって俺は永遠に輝くことはな

いことを。あいつに会うたびに欠けていく心。俺はまだ彼女に会った意味を見つけ

られずにいる。どうして叶うはずのない恋をしてしまったのだろう・・・?

そしてどうして今も苦しみ続けるのだろう・・・と。





〜 Crescent moon Epi 1 〜






子供の頃から人が言い争ったり、喧嘩になったりする揉め事が大嫌いだった。波風を

立てずに穏やかに過ごしたい。家でも長男という立場から我慢をするのが常になって

いて、いい子でなければいけないと思っていた。進学校と言われる高校に入り、そこ

で成績は普通だったけど、それなりに良い大学に行き、親の期待に応えたと思う。


蓮とは家が近いということで幼少時からの幼馴染だった。色々と家がごたごたしてい

る蓮とは違って自分の家は特に何の問題もなく、蓮に対して心のどこかで優越感を持

っていたように思う。でも蓮は家がどんな状態でも何も変わらない。人に対して自分

を抑えることはしない。堂々と生きている蓮を友人として誇りに思う反面、羨んでい

た。恋愛でもそうだ。蓮自身に魅力があるから女たちは寄ってくる。そして極上の女

を掴むんだ。美穂さんは高校の時から男子たちの憧れだった。恋愛は勝ち負けなんか

じゃないのになぜだか敗北感を感じた。そしてやはり蓮にはかなわない・・・と。


俺は恋愛に対してもいい彼氏でいようと自然に自分の首を絞めているような気がした。

そして常に周りを気にしている。だけどそれが俺の生き方だと自分の弱い部分に気づ

かないフリをした。だから蓮が思いのまま行動する度に落ち込んでしまうのかもしれ

ない。自分らしく蓮のように生きたいって思ってた。


社会人になって北海道配属になり、故郷を離れることになった。最初は嫌だった。で

も今から思うと俺の転機だった。俺の人生を変える出会いが待っていたんだ。


かわいいからとか周りの評判がいいからとか、関係なかった。心の中から湧き出てく

るような熱い気持ち。とにかく顔を見たい。話したい。それが人を好きになるという

ことだと初めて知った。


それなのに・・・。


ある時、蓮がある男のことを興味深く語った。そんなこと初めてだった。表面的には

歓迎しているように見せても本当は悔しかった。長い付き合いの俺より信頼している

ような口調に。そして何の運命のいたずらか、そいつは俺が人生で初めて本気で好き

になった人の彼氏だったなんて・・・。


彼女に会うまで知らなかった。自分がこんなに人に執着する人間なんだって。そして

まさか、彼女を手に入れるために争いさえ惜しまないなんて・・・そんな自分を発見

してしまった。何回も諦めようと思った。恋敵が友達の友達なんてややこしすぎる。

それも蓮のダチなんて。蓮だけには軽蔑されたくなかった。必死で保っていた自分。


壊れた。手に持っていた食器が落ちるようにガシャーンッ・・・と。


どうやっても気持ちには嘘をつけなかったんだ。彼女の顔を見るたびに、彼女の声を

聞くたびに、仕草一つに引き戻される。彼女が側に居てくれるなら、俺に微笑んでく

れるなら何もいらなかった。俺はそんな恋に出会えたんだ。でも、彼女は俺に微笑ん

でくれなかった。彼女は側にいないあいつが好きで、例えどんなに彼女が苦しんでい

たとしてもすぐに助けてやれないあいつが大好きで、どんなに泣かされてもあいつを

選ぶんだ。


『私・・・今から最終の飛行機で風早くんに会いに行ってきます』

『・・・・・・』


告白の返事を聞きたくなかった。結果は分かっていたから。返事を聞くともう彼女を

想うことさえ許されないような気がしていた。


オフィスに一人残っていた彼女の机には大きめのカバンが置いてあった。俺はそれを

見た瞬間、彼女に言われる前に悟ったんだ。あいつに会いに行くんだって。


『風早が・・・拒否したら?』

『それでも・・・・やっぱり好きだから・・・』


真っ直ぐな瞳は未来を見ていた。もう迷わないんだな・・・。分かってた。分かって

たけど諦められなかったんだ。こんなに人を好きになったことはなかった。そして失

恋がこんなに悲しいものなんて知らなかった。



あれから半年の月日が流れて、北海道に来て1年の月日が経とうとしていた。季節は

こちらに来た時の季節、春になっていた。新入社員を見ると思い出す。1年前に会っ

た彼女のことを・・・。


「たぐっちゃ〜〜〜ん、新しい恋してるぅ?」

「沢渡?」


ある日、社員食堂で食べてたら沢渡が自分の食事を持って隣に座った。


「あれ?黒沼さんは?」

「あっそっか、たぐっちゃん午前中外回りだったもんね。爽ちゃん突然休みなんだよ」

「え??なんで」

「それが分かんないの。メールしたけど返って来なくて」

「それ、珍しくね?」

「うん・・・そうなんだよね」


沢渡はため息をついて心配そうな表情でラーメンを啜った。


(なんか・・・あったんだろうか?)


結局半年たっても何も変わってない。ちょっとしたことで動揺してしまうんだ。忘れ

ようと思ってるのに。


黙り込んだ光平を友香はじっと見つめた。


「・・・気になる?」

「えっ?」


どくんっ


俺は沢渡の言葉にハッとすると、食事の箸が止まっていることに気づいた。”まっ心

配だけどな〜”と笑って誤魔化したけど本当は気になって仕方なかった。なぜなら彼

女が会社を休むのは初めてだったんだ。


「それで、沢渡彼女の家行くの?」

「う〜ん、後で電話してみるけど、今日はどうしても外せない用があってさ」

「そっか」


あいつは知っているのだろうか・・・?


俺は首を突っ込んではいけないと必死で思い留まっていた。だけど運命ってやつは、

まだ俺を翻弄しようとしていた。



<つづく>


「Crescent moon」2












あとがき↓

だいたい6話ぐらいで収まると思います。短編にはできなかった。ちゃんと書ききれ
るか不安だけど、リクエストをもらって改めてうやむやにしていたなぁ・・・と反省。
蓮の話も途中だけど、この話を一気最後までUPできたらと思います。しかし妄想も
すごいところまでイッてるなぁ〜と時々ハッとします(笑)あ、ちなみにご存じかと
思いますが、”crescent moon”とは三日月です。