「Half moon」(73)

社会人の二人の物語。オリキャラ祭り。オリキャラ紹介⇒(1)をご覧ください。

北海道の爽子の続き。会社前で友香に呼び止められた爽子は・・・?
あの方がついに登場しますっ。

こちらはHalf moon          10 11 12 13 14 15 16 17  18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29  30 31  32 33 34 35 36 37  38 39   40 41  42 43  44 45 46 47 48 49  50 51  52 53  54 55 56 57 58 59  60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 の続きです。
それではどうぞ↓































会社前で呼びとめられた爽子は友香の言うがまま、近くの店に入ることになった。そこは

時々ランチで食べに行く店だった。

そして、料理など注文してお水を飲み、二人の間に自然に沈黙が走った。


「私さ・・・・」


いつになく緊張した面持ちの友香が沈黙に耐えられなくなって言葉を発した。


「爽ちゃんと友達になれて嬉しかったんだ」

「!」


爽子は友香の言葉に大きく目を見開いた。


「ほらっ私って軽い感じで物事を慎重にできなかったり意外と後ろ向きだったりするんだよ。

 だから・・・爽ちゃんみたいな子に憧れるのよ」


爽子は信じられないという顔で友香を見ると、段々と顔を紅潮させた。


「わ・・私こそっ友香ちゃんは憧れだったよ。明るくて人との間に壁がなくて。こんな風に

 笑顔になれたらいいなとか・・・こんな風に人と接することができたらって・・・」

「ふふ・・・ありがと。でもさ・・・私最悪な人間なんだ」

「え・・・?」


爽子はいつもと違う雰囲気の友香を不思議そうに眺めた。


「・・・爽ちゃん、軽蔑するかも」

「軽蔑なんて・・・絶対しないよ」


爽子の言葉に友香は少し微笑んだ。そして、決心したように爽子を見た。


「私・・・・・不倫してるの」

「!」


友香は爽子の顔が見れずに俯いたまま話しだした。爽子の驚く顔が見れなかった。


「今まで・・・言わなくてごめんね。初めの頃、爽ちゃんが仙台に行く日のロッカーで

 ”私も彼氏いるんだ”なんて言ったけど・・・・彼氏なんて呼べる人じゃない」

「・・・・・」

「不倫なんて・・・蚊帳の外なんて思ってたの。でも好きになった人が・・・たまたま。

 な〜んてね。そんなの理由にならないって分かってる」


爽子は真面目な人間だ。軽蔑されるかもしれない。友香はずっとこのことを話せなかった。

高校の時からずっと付き合っていて、正当な恋愛している彼女に言えなかった。

友香は話し終えた後、ぎゅっとスカートを握りしめたまま俯いていた。ただ、爽子の反応

に怯えていた。すると、爽子は友香が予想もしなかった言葉を発した。


「嬉・・・しい」

「え??」


友香はバッと顔を上げた。そこには優しく微笑んでいる爽子の姿があった。


「言ってくれて・・・嬉しいよ」

「・・・軽蔑しないの?」


爽子はせつなそうな表情を浮かべると、静かに顔を横に振った。


「・・・軽蔑なんて・・・しないよ」


友香はほっとした表情で爽子の言葉を聞いていた。


「友香ちゃんが幸せだったら・・・いいと思う。・・・幸せ・・なんだよね?」

「・・・・うん。今は」

「良かった・・・」

「うん・・・ありがとう。爽ちゃん」


友香はぐっと涙を引っ込めて、爽子に笑顔を見せた。


「でね、何でこんなこと言い出したかというと、爽ちゃんが何も言わないからだよ」

「え・・?」

「どうして彼氏のこと相談してくれないの?」

「・・・・え?」

「爽ちゃん見てたら悩んでるの分かるっつーの!」


爽子は呆気に取られて友香を見ていた。そして真剣な顔をして聞いた。


「え・・・相談していいの?」

「あのねぇ〜〜〜〜!!」


友香はがばっと立ち上がって怒りを露にした。そして思いっきりどんっと座ると大きく

ため息をついた。


「友達・・・・じゃないのかな?」

「あ・・・・」


爽子は高校時代の大切な友人を思い出した。


”友達ってね・・・・気づいたらなってるものなの”


「・・・うんっ」


爽子は大きな目を潤ませて、こくこくっと頷いた。


「ほらっ・・・久々に見た。その顔」

「あ・・・・」


あはは〜〜〜〜っ


私、周りの人に迷惑を掛けないように必死で繕っていたのだけれど・・・やっぱり嬉しい・・・。

人にこんな風に言ってもらえることがこんなに嬉しいなんて・・・。


「・・・ありがとう。」


友香はそんな爽子に温かい目をして微笑んだ。


「う・・・上手く話せるか分からないけれど・・・」


爽子は今までの経緯を一生懸命話し出した。



* * * *



「マジで?・・・あの休みの間にそんなことがあったなんて・・・」


話を聞き終えた友香は大きなため息をついてから呟いた。


「でもさ・・・彼氏くんが何も言ってないのに”別れる”なんて・・・」


すると、爽子は目線を下ろして固い笑いをして言った。


「・・・うん・・・別れを切り出されるのが怖かったんだと思う」

「・・・・そっかぁ・・・そ〜だよね」


彼を苦しめるなんて言い訳だ。都合の良い言い訳だ。


爽子の目から一滴の涙が零れ落ちた。


「・・・爽ちゃんっ」


友香は爽子がまだまだ想いを残していることを悟った。


「ごめん、ストレートに聞いていい?」

「えっ・・・うん」

「爽ちゃんはさ、彼氏くんがその女と寝たと思ってんの?」

「ね・・・寝た??」

「うん、体の関係を持ったか?っていう話」

「・・・・・分からない・・・でも、もし・・・」

「・・もし?」


爽子は顔を上げた。友香は爽子の目を吸い込まれるように見ていた。


(・・・なんて純粋な目だろう・・・・)


「もし、そういうこと・・・だったとしたら、いいかげんな気持ちでそういうことを

 する人じゃない・・・」

「・・・・・・」


友香は思わず言葉を失った。爽子を見ていると自分の不純さを感じてしまう。自分と相手

の間にはもう嫉妬とか憎悪とか愛憎とかそういうものしかないことに気づいた。誰でも自分

が幸せになりたくて人のものを奪ったりする。


「だから・・・やっぱり・・・つらくって・・・」

「その女・・・許せないね」

「・・・・分からない。よく知らないの。でも彼女は私と同じ気持ちで風早くんが

 好きなんだって分かった・・・・」


友香はたまらなくなった。この子は人を恨むとか怒りとかないのだろうか・・・。それともそんな

感情を知らないのだろうか・・・?なんとなくそう感じた。そして、ある意味爽子に危険に感じた。

この純粋さが人の嫉妬を呼ぶのではないだろうか?その彼を寝取ったという女もそうだったの

ではないだろうか?


「とにかく・・・まだ諦めるのは早い気がする」

「う・・・ん」


爽子と長い付き合いではなかった。だから生半可なことは言えなかった。ただ目の前の儚げな

彼女を助けたいと思った。このままでは消えていきそうに思った。


友香は帰り道、携帯から滅多に出さない電話番号を探していた。



* * *


火曜日――


「こっち〜〜」

「お久しぶりだね〜びっくりしたよ。あれ?爽子は?」


先に来ていた友香は、店に入ってきた艶やかな人物に手を振った。


「今日は二人」

「え・・・?」


友香が約束していた人物とは矢野あやねだった。一回だけ、爽子を通して会ったことが

あったのだ。友香はその時にメルアド交換をしていたことを思い出した。いきなりでどう

しようかと思ったが、この一大事を助けられるのはこの人しかいないと思った。爽子には

二人の高校の大親友がいると聞いていた。


「今日・・・呼び出したのは・・・」



* * *



「・・・・・」


話し終えた友香はあやねを見つめる。あやねは深刻な表情で一点を見つめていた。


「・・・・ありがとう。言ってくれて」

「私・・・もういてもたってもいられなくて・・・でも何もできなくて・・・」


目の前でつらそうに身体を震わせている友香を見て、あやねはふっと笑った。


「爽子は・・・・会社でもこんないい友達ができたんだね」

「え・・・・?」


友香はあやねの言葉にバッと顔を上げた。


「自分のことを言えない子だからね・・・。自分で何でも背負いこんじゃって。根本的には

 前向きでさ、強いんだけど、こんなことは初めてだったんだね・・・・」

「あやねさん・・・」


あやねは不安そうな友香を見るとにこっと笑った。


「後はまかせて。私もさ・・・最近爽子と連絡取ってなかったから・・・。でも何年連絡取らな

 くても変わらないから・・・・。私たちの関係は」


あやねはそう言うと友香に目で挨拶してその場を去って行った。友香はあやねの背中に

自信を感じた。ずっと変わらない関係・・・。

自分は友達も多いし、騒ぐのも大好きだ。でも爽子のように”本物”の友人は何人いるの

だろう。そして”本物”の恋人は・・・。しかし友香は曇った顔をぱっと変えて上を向いた。


「・・・よろしくねっ!あやねさん」


そしてにっこりと微笑んだ。












あとがき↓

73話目にしてこの人登場。最初は最後まで登場させる気はなかったのですが、爽子を救える
人は誰だろう・・・?と考えるとやっぱりあの二人しか浮かんでこず。爽子は最後は自分で立ち
直るのでしょうが、ちょっと背中を押してくれる人が必要かなって。それも恋愛経験豊富な人。
頑張ってとりあえず75話までいきますよ!!
ところで、アニメDVD特典のポストカード、別マで見たものと違うと書きましたが、映画版の
ポストカードを見ていました。やはりどちらも欲しくて映画DVDも買っちゃいました。まぁ映画は
映画って感じで、あまり見そうにもなさそうだけど・・・。安かった。
それではまた明日〜(多分)良かったら遊びに来てください。

Half moon 74