「Half moon」(33)

社会人の二人の物語。オリキャラ祭り。オリキャラ紹介⇒(1)をご覧ください。
七夕祭り2日目、7人で回ることになっていた。仙台駅で待ち合わせした7人は・・・。
こちらはHalf moon         10 11 12 13 14 15 16 17  18  19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29  30 31  32 の続きです。
それではどうぞ↓
















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七夕祭り二日目――


それぞれの想いを抱えながら、7人が七夕祭りに行く日がやってきた。

すでに5人は仙台駅の待ち合わせ場所に集まっていて、風早と爽子を待っている状態だった。


沙穂は引けない想いにもう逃げるのは止めた。だからこそ二人から目を逸らさないことにしたのだ。

沙穂は異様な緊張感にごくっと唾を飲みこんだ。


一方、光平はあれからがむしゃらに仕事をしていた。仕事が忙しいというのが光平には

丁度良かった。無我夢中で考える余裕さえない。いや、考える時間を自分に与えなかった

というのが正しいのかもしれない。彼女が来ることは前から知っていた。会わずに済むとは

思ってはなかった。でもいざ彼女に会うとなると、迷ってしまった。光平は寸前まで行くのを

止めようと思っていたのだ。


「ごめんっごめん、遅くなった!」


風早と爽子は5人が待っていた、仙台駅の中心部に駆け寄った。太陽や昌が久しぶり〜〜っと

声を掛け、爽子はこんにちわ!と恥ずかしそうに頭を下げた後、5人に笑いかけた。沙穂は

そんな爽子を冷静に見ていた。


「とりあえず、行こうか」


蓮が言って、7人はぞろぞろと歩き出した。爽子は光平と目が合い、そっと爽子の方から光平の隣に

寄りそった。そんな爽子を気にしながらも、風早は昌や太陽たちと前を歩き出した。


いきなり隣に来た爽子に光平はドキッとした。


「田口くん・・・ごめんね、この間」

「え?何のこと?」

「お見送りできなくて・・・」


申し訳ないという風に頭を下げている爽子を光平は黙って見つめていた。


「田口くん・・・?」

「あっごめん。ぼーっとしてた。」


光平は暑いからかな〜と言って、軽く笑った。そして、また横目で爽子を見つめた。

ぎりぎりまで迷っていた。彼女に会うことを。でもやっぱりここに来てしまった。会いたかったから。


会いたかった・・・・。仙台に来てからも彼女を忘れたことはなかった。

光平はあれから夢中で仕事をしている。正直、夜遅くまで仕事をして、バタンキューの毎日。寝る前に

思い出すのは彼女のこと。いつの間にか、彼女が心の支えになっていた。


「なんか、人がいなくて大変だって。友香ちゃんから聞いたんだけど・・・」

「あ〜まあね。夏休みも取れるかな〜って感じ。早く戻りたいよ」

「田口くんの机、ちゃんとあるからね」


拳を握りしめて言う彼女に光平はふっと笑いが込み上げた。友香のメールに書いていた。毎朝、

彼女が自分の机を磨いてくれていること。


「・・・ありがとう」


光平と爽子はにこっと笑いあった。


「爽子ちゃん!仙台七夕祭り初めてでしょ!?」


そこに昌が話しに入ってきた。


「う、うん。よろしくお願いします。」

「光平に聞いてるかもしれないけどね〜七夕祭りはいろいろイベントあるんだよ〜」

「うん、うん」


昌の説明に爽子は目を輝かせて聞いていた。そんな爽子を沙穂は鋭い目で見ていた。爽子は

沙穂の視線に気づいて、頭を軽く下げた。沙穂はそれに応えるように引きつりながら笑い返した。

二人は先日の飲み会でも殆ど喋っていない。


昌はそんな沙穂をはらはらして見ていた。


(何も起こらないといいけど・・・)


昌は沙穂を心配そうに見て、風早は光平と話す爽子をそれとなく気にしていた。そして蓮はそんな

風早に気付いていた。


それぞれの視線が交差する中、絡み合った恋愛模様がすでに動き始めていた。


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「うわぁ〜〜すごい人だね!」

「はぐれそうだなぁ〜」


昌はと太陽は思わず声を上げた。


光平の隣を歩いていた昌は人込みに押されて、思わず光平の服の裾を握った。


「ごめんっ!」


慌てて離した昌に光平は優しく笑って言った。


「持っときなよ。浴衣だし、危ないよ」

「・・・うん///」


この日、沙穂と昌は浴衣を着ていた。


「ねぇっ!どう光平、似合う?」


昌は浴衣をひらりとさせて言った。


「うん。似合う。」

「///////」


昌は、自分で聞いときながら、光平の素直な返事に言葉も出ず真っ赤になった。


「馬子にも衣装だけど」

「もうっ!一言多いんだよ!!」


あはは〜〜〜っ


そんな二人の様子を蓮は見守っていた。そして、爽子の手をしっかり握り、人混みを歩く風早。

そして、それを冷やかに見ている沙穂。面白くなさそうな顔をしている時、蓮の視線に気づいた

沙穂は、そっと蓮の隣を歩き出して、吐きだすように言った。


「・・・・もう行くのやめたの?」

「・・・・・」


蓮は沙穂の言葉に何も答えなかった。


「二人のことは知らないけど、美穂のことで傷ついたのは蓮だけじゃないから」


沙穂は冷たい視線を蓮に送った後、足早に蓮の前を歩いて太陽に明るく話しかけた。蓮はゆっくり

歩きながら、嬉しそうに微笑み合う風早と爽子を目を細めて眺めていた。









あとがき↓

更新が遅くなってすみません。この場面は蓮の視線に気づいた沙穂は明らかに蓮に当たってる
状態。風早と爽子がラブラブなのに嫉妬してむしゃくしゃしていたんですね。それじゃなけれ
ばこの話は滅多にしません。蓮が傷つくのが分かってあえて話すという悪い子です。蓮は色々
気付く人なのでそういうのも沙穂は腹が立つところのようです。蓮のこともこれからはっきり
させていきますね。
それではまた続きを見に来てもらえたら嬉しいです。

Half moon 34