「Half moon」(17)

社会人の二人の物語。オリキャラ祭り。オリキャラ紹介⇒(1)をご覧ください。
皆と別れた二人は風早の家でやっと二人になれた。2日目の甘い夜。
こちらはHalf moon         10 11 12 13 14 15 16 の続きです。
それではどうぞ↓

















「ごめんな・・・もしかしたらって思ったんだけど」

「え?」


家に帰った二人はテレビを見ながら寛いでいた。そんな時風早がぽつりと言った。


「あの店、蓮が教えてくれた店だったから。爽子、緊張させちゃったね」

「そ、そんなことないよ!!すごくおいしかったし、皆に会えて嬉しかったよ。」


風早が申し訳なさそうに言うのは、人と会うと固くなってしまう自分のせいだと

ばかりに爽子は必死に否定した。


「それに、風早くんにあんなに高いところご馳走になって・・・私が牛タン食べたい

 って言ったばかりに・・・」


そう言って、爽子は体をぶるぶると震わせている。

高校の時から全く変わっていない爽子の性格に風早は小さなため息をついた。


「あのさ、いつも言ってるけど、俺だって男としてちょっとぐらいいいとこ見せ

 たいじゃん。それに爽子はここに来るまでお金かかってるんだし。ねぇ、

 そんな時は何て言うんだった?」


「ご・・・ご馳走様でした」


爽子は丁寧に頭を下げた。そして風早はにっこり笑って言う。


「どういたしまして!」


人からの好意に慣れていない爽子は風早の好意を最初はうまく受けることが

できなかった。しかしある日、風早に言われたのだ。”爽子と同じように俺も

爽子に何かをすることが喜びなんだよ”と。好意を受けることが相手の喜びに

なると知った爽子はそれからは素直に受けることができるようになった。


「でも・・・本当に緊張したけど、嫌じゃなかったよ」

「あ、今日のこと?」

「う、うん。だって蓮くんって人に会えたから」

「え・・・・」


風早の話しの中に出てくる”蓮”という人物に爽子は会ってみたかったと言った。

その話から出てくる爽子の蓮を褒める言葉・・・・。


「あ"〜〜〜〜っもう・・・やっぱりだめだ・・」


最初はじっと聞いていた風早だったが、爽子の話しの途中でばっと机にうつ伏せた。


「え?風早くん??どうしたの?具合でも・・・」


いきなりの行動に爽子はおろおろとした。額を触ろうと思った爽子の手が風早に

掴まれる。びっくりした爽子はひゃっと声を上げた。


「俺って、小さいよな」


うつ伏せながら、風早は拗ねるような目で爽子を見た。


「え?風早くん??大きいよ!私よりずっと」

「いやあの・・・背のことじゃなくてね」


明らかに照れてしまった風早は顔を見られないように、うつ伏せたまま言う。


「だってさ・・・爽子が田口と話してる時も気になって・・・・あ"〜〜〜っ!!」

「え・・・?田口くん」


さらに墓穴を掘った風早はさっきよりも真っ赤になった。


「俺って小さいからさ・・・世の中の男全部に嫉妬しちゃうんだ・・・」


そんな風早に爽子は、離そうとされた手をそっと両手で包み込んだ。


「私・・・風早くん以外・・・好きになれないよ。だって蓮くんって人に会えて

 嬉しいのも、風早くんが大好きな人だから・・・」


爽子は蓮が風早にとって大きな存在だということを感じていた。いくら風早と言えど、

見知らぬ土地に単身で乗り込んでいる。不安がないわけはないのだ。そんな彼を支えて

くれている人・・・と思っていた。


「それに・・・私だって、すごく・・・すごく小さいし、欲深いよぉ・・・・」


爽子は恥ずかしそうに呟くように言った。風早はそんな爽子の手を取り、一語一句

聞き逃さないように耳を傾けた。爽子が言うことには嘘がない。紡ぎ出される言葉は

全て素直な爽子の心だと知っていたから。


「何で?欲深いの?」


真剣な風早の目と目がぶつかり、爽子はさらにかぁ〜〜〜っと茹でタコのようになった。


「ちゃんと言って。爽子の言葉が聞きたいんだ」


言ってくれるまで目線を逸らさないといった様子の風早に観念した爽子はぽつりと言った。


「全部、欲しくなるから・・・」

「え・・・・・」


爽子の言葉はいつも風早の心を揺れ動かす。風早は心臓の音が大きく脈打つのを感じた。

そして、もっと欲しくなるのだ。爽子に欲されている自分への想いを。


「ちゃんと言って。もっと聞きたい。爽子の気持ち」

「ダ、ダメ〜〜〜〜〜〜ッ//////」


風早は、真っ赤な顔を両手で隠してうずくまる爽子の両腕を掴んだ。そして、力を込める

手を男の力で払いのけて爽子の顔をのぞいた。


「は、はずかしいので〜〜〜〜〜〜〜っ!」


その顔を見るだけで、風早の全身は一気に熱が帯びるのを感じた。


「・・・ったく。絶対、俺以外にそんな顔しないでね」

「え・・・・?」


爽子は熱いまなざしの風早を直視できずに目線を逸らした。そして、目に涙が浮かんできた。


「だ・・・だって、ほんと私って・・・欲深くて・・ぐすっ」

「爽子が欲深かかったら俺、どうなるの?」


そう言って両手を掴みながらくすっと笑う風早を見て爽子は今度は悲しそうに呟いた。


「だって・・・今日だって・・・風早くんが人気者だって分かってるけど・・・・

 やっぱり・・・・一人占めしたくなって・・・あっ!ご、ごめんなさい!!」


思わず言ってしまったという表情で爽子は風早を見た後、必死で風早から逃れようとした。

爽子は自分の浅ましい顔を風早に見られたくなかったのだ。そしてとどめなく溢れる涙。

風早は、そんな爽子の顔を熱病のような目で見つめた後、そっと唇を重ねた。


「〜〜〜〜もぉっ・・・っんとに!そんなかわいいこと言われたらさ・・・」


いきなり風早にキスされ、驚いたように爽子は目を見開いた。そしてすぐに、恥ずかし

そうに俯いた。


”ああ・・・溶かされていく。”


いつも風早に触れられると感じるこの感覚に爽子は酔いしれた。

風早はそんな爽子にもう一度口づけをして、頬を伝う涙を口で受け止めた。爽子の力を

込めていた両手が少し弛む。


「俺だって・・・今日ずっと二人でいたかった。俺の独占欲を全部見せてしまったら

 爽子はきっと・・・嫌んなるよ。俺のこと・・・」


風早はせつなそうな表情で言った。


「ははっかっこ悪いよな。いつも爽子の前で余裕なくってさ・・・」


風早はいつもの照れ隠しの癖、手で顔を覆って言った。

そんな風早を爽子は愛おしそうに見つめた後、風早の頬にそっと優しく口づける。


「嫌いになることなんて・・・絶対ないよ。これからもずっと・・・だ・・・大好き///」


風早はびっくりしたように目を見開いた。真っ赤になりながらも必死で想いを伝えて

くれようとしている彼女に涙腺が緩みそうになるのを感じる。彼女の柔らかい唇の

感覚が頬に残る。なんて優しいキスなんだろう。自分の汚い欲を全て洗い流してくれ

るような気がする。でも・・・君を好きになればなるほど、欲深くなっていく自分を

止めることはできない。そして、君に触れたいという欲も・・・・。


風早は爽子の腕を引き寄せて、ぎゅっと抱きしめる。そして、耳たぶまで真っ赤にして言った。


「そんなこと言われたら・・・・・またしたくなるじゃん////」

「え??わっ!!」


気がついたら爽子は宙に浮いていた。お姫様抱っこをされていたのだ。

風早はもう一度、爽子の唇に自分のを重ねた。そして、いたずら少年のような顔をして

にっと笑って言った。


「俺の全部あげる。だから・・・」


次に耳元で言われた言葉に爽子はかぁ〜〜〜〜っと顔を真っ赤にして頷いた。そして

そっと風早の胸に顔をうずめた。


二人の甘い二日目の夜は過ぎていく。今までの時を埋めるかのように・・・。


”「だから・・・爽子の全部ちょうだい―」”









あとがき↓

やっぱり二人のラブイチャは書いていて一番楽しいですね♪しかし、風早くん〜〜〜〜〜!
襲いすぎですよね。何回やってるんだ(汗)いくらなかなか会えないからってねぇ〜〜〜!
このお話ではいろいろなシチュエーションも書いて行けたらと思っています。(海とか旅行とか?)
夏物語と言う感じにしたいのですが〜〜〜。どうなるか。
それではまた遊びに来て下さい!

Half moon 18