「Oh My Angel」(10)

翔太は爽子に向き合おうと思った矢先、また新たな噂を耳にして・・・。
これは「Oh My Angel」          の続きです。
以下からどうぞ↓
























春の匂いが感じられるようになってきた今日この頃、彼女はいつものところ

にいた。こうやって、病室の窓から彼女を眺めるのが日課だった。

だから彼女を真正面から見た時、胸がどきんととび跳ねた。思ったよりずっと

きれいな人だったから・・・。

彼女が自分の担当になって、同じ時を過ごしてもうすぐ2ヵ月になる。一緒に

過ごした時間はかけがえがなくて、このまま時が止まればいいのにって思った。

この気持ちはもう自分で持っていられないほど膨らんでしまった。

翔太は彼女の口から本当のことを聞こうと思った。誰からでもない彼女のことを。


そんなある日のこと――




「爽子!!市東先生と結婚するんだって??」

「え?」


どんどん、二人の噂が広まっていた。


(何で?聖さんが言ったのかな?)


「おめでとう〜〜〜!!いいなぁ。市東先生なんて。幸せ者!」

「あ・・・ありがとう」

「もっと嬉しそうな顔しなさいよぉ〜〜!」



その日のナースステーションはその話題で持ちきりだった。


「いや〜最初は嫉妬したけどさぁ〜市東先生、爽子は特別ってのが

 見てて分かるっつーか。羨ましいよ」

「ね〜〜〜!」

「んで?結婚したら仕事どうするの?」

「あ・・・まだそんな話しは・・・。」



時々、ナースステーションに盗み見しに行く山中は、その時、受付

カウンターの下に居た。



(げっ・・・・!聞いちゃった。翔太くんピンチッ!)



***************



明らかに帰ってきた山中さんの様子がおかしい。


「ねぇ。何かあったんでしょ?言ってくださいよ」

「いや〜〜さすがにこれは言えないわ」

「・・・・。今、ナースステーションから帰って来たんでしょ?

 んじゃ、俺も行ってくるわ」


そう言って、翔太が立ち上がろうとすると、


「あっああああああ!!分かった。分かった」


山中が降参とばかりに両手を前に差し出した。


「俺、責任持たないからね!!」

「うん。いいよ。ちゃんと言って」


ごくっ お互い唾を飲み込む。


「黒沼さん・・・・」



****************



正直、あの時ほどのショックはない。だってまだ何も聞いてない。

でも嫌いなただの噂なのに、その噂に踊らされている自分が嫌だ。

彼女のことになったら、自分らしくいられなくなる。



「はぁ〜〜〜〜っ」



翔太は自分だけの隠れ家である、屋上前の非常階段にいた。


「!」


その時、屋上のガラス戸の向こうに見慣れた姿を捉えた。翔太は慌てて

ドアを開けてそこへ向かう。長い髪が風になびく。そこにいるのは愛しい人、

黒沼爽子の姿だった。



「えっ!!翔太くん?」

「「何してん(る)の?」」


二人の声が合って、思わず笑う。そして見つめ合う。


「・・・・・・」

「・・・・・・」


翔太は言葉が出てこなかった。想いが大きすぎて、今までのようには

いられない。


「どうして?」

「え?」


じっと爽子を見つめていた翔太がつぶやいた。


「どうして寂しそうな目をしているの?」

「え・・・・・」


爽子はその言葉に一瞬驚いたような目をしたが、そのまま翔太の

視線から逃れるように、俯いた。


「最近・・・ずっと寂しそうな目をしてる」

「・・・そんなこと・・・ないよ」

「・・・・・・。」

「もうすぐ・・・結婚するって本当?」


翔太の言葉に爽子は再び顔を上げた。そして、翔太を見る目が段々と

揺らぎ始めて、大きな瞳からは大粒の涙がこぼれ出した。


「!」



翔太の視界には肩を震わせて泣いている彼女。なぜ?君はそんなに悲しそう

に泣くの?

月明かりに照らされた涙は次々と溢れだし、光って落ちた。その姿は儚げで

きれいで、でも・・・今にも消えてしまいそうだった。



翔太は気がついたら、彼女を腕の中に抱きしめていた。










あとがき↓

結局、我慢できないのね。翔太くんは。本誌でも・・・・♪ストレートなところ
が彼のいいところなので。風早くんの好印象はきっと生まれつきですよね。
なんて分析してみる。人って良い印象をもたれると性格も良くなる気がする。
さてこのお話、次回はやはり相談事と言えばあの人!が出てきます。よろし
ければまた来て下さいな〜〜〜♪
「Oh My Angel」 11 へ