「神様からの贈り物」


このお話は「Half moon」から「Once in a blue moon」に続く間の話です。もうす

ぐ爽子の誕生日ですね。初めて爽子の誕生日話を書いてみました。初めて読まれる方、

妄想で勝手に二人は結婚しています。それでもいい方は以下からどうぞ↓

晦日当日にUPできなくてすみません。

































「わっ・・・さぶっ」


翔太は会社の外に出ると室内との温度差にぶるっと身震いをしてコートの襟を立てた。

それもそのはず、今年も終わろうとしている冬の真っただ中だ。この時期になると翔

太はいつも悩む。”今年の爽子の誕生日は何にしようか・・・”と。誕生日は大晦日

ので毎年2年参りなのだが、いつもそこで誕生日プレゼントを渡す。結婚して2回目

の大晦日。昨年のプレゼントを渡した後、爽子が言った。


”何よりのプレゼントは翔太くんと一緒に居られることだよ”・・・と。


本当にそうだ。離れ離れだったから余計にそう思うのかもしれないけど、一緒に2年

参りをして一緒の家に帰る。こんな幸せあるだろうか・・・。


「・・今から思うと、よく3年も我慢したよな〜〜」


翔太は夜道を歩きながらポケットに手を突っ込み、ぼそっとひとり言を言った。仙台、

北海道で離れて付き合っていた遠恋時代を思い出す。今からまた離れて暮らせなんて

言われたら絶対無理だ。もう・・・この温もりは手放せない。今は1分1秒一緒に居

たい。仕事を終えて家に帰る時に何よりの幸せを感じる。

”もうすぐ爽子に会える・・・”それはものすごい原動力で、何でも頑張れる気がする。

爽子が待っている家に帰る。たとえ疲れていても、体調が悪くても、仕事で嫌なこと

があっても、爽子の ”おかえりなさい”ですべてがぶっ飛ぶんだ。いつもプレゼント

を貰っているのは俺の方・・・。そんな爽子に何を返せるんだろう?




★゜・。。・゜゜・。★゜・。。・。


そして、誕生日当日―


爽子はおせち作りに大忙しだ。俺が手伝えることなんかない。料理をしている時の爽

子はとても嬉しそうで、見ているだけでまったく飽きない。


(・・って俺はSTKかっ////)


翔太はソファーで新聞を見ながらちらっと台所を盗み見する。家に居るとどうしても

爽子に目がいってしまう。今日は誕生日だからかな?いつもよりご機嫌に見えた。


「爽子、何かいいことあった?」

「わわっ////びっくりしたっ」


翔太に突然肩を抱かれて、爽子はびくっと身体を揺らせた。その光景は何年経っても

変わらない。振り向いた爽子はいつも頬を赤らめて恥ずかしそうにする。


(やっばいなぁ・・・今から出掛けるのに)


そんな彼女にいつもスイッチが入るんだ。一つに結んでいる髪の下にうなじが見える。

翔太はその首筋にそっと口付けた。するとこの日の爽子は異様なほど大きな反応をした。


「あっ・・・だ、だめっ」

「え・・・」


このパターンは結構常で、何か作業をしている時は必ずこのように拒否される。それ

は恥ずかしさからで、その拒否は簡単に俺に解かれる。でも、この時は何だかいつも

より強い拒否を感じて何も出来なかった。微妙な空気が流れたけど、その後すぐにお

参りに出掛けたのでその時のことはすっかり忘れてしまっていた。



* * *



ぱん、ぱんっ


高校の時から同じ神社に今年も2年参りをする。手を合わせた後、二人は顔を見合わ

せてにっこりと微笑んだ。そしてどちらからともなく手を繋いで歩き出す。翔太は夜

空を見上げながら白い息を舞わして呟くように言った。


「こうやって外に出た時、いつも思うんだ・・・・同じ家に帰るんだって」

「・・・うん」


爽子が嬉しそうに微笑んだ。そして繋いだ手に力が籠る。


ぎゅっ


「それから・・・こうして一緒に爽子が生まれた日を祝えることを・・・幸せに思う」


そう言うと、真っ赤な鼻をしてもう目を潤ませるから堪らなくなる。俺は人目も憚らず

爽子を抱きしめた。爽子は俺の胸の中で”ありがとう・・・”と囁くように言った。

その温もりが幸せで、このまま時が止まればいいのにって思うんだ。


「このまま・・・ずっと二人で居たいな」

「えっっ!!」


俺の何気ない一言に爽子は大袈裟に驚いて俺を見上げた。


「え?」


その反応に逆に俺が驚く。爽子の大きな目がさらに大きくなる。


「う・・ううんっ」

「?」


また、微妙な空気が流れたが、翔太は時刻が0時になりそうなのに気付いて、爽子の

目の高さに身体をかがめて言った。


「誕生日、おめでとう」

「あ・・ありがとう。ふふっ・・朝も言ってくれたのに。2回も言ってくれた」

「だって終わっちゃうから」

「毎年・・・こうやって祝ってもらって幸せだな・・・」

「俺も幸せだから。爽子を祝えること」


二人はにっこりとまた微笑み合った。


「そう言えば、今日は着物着なかったんだね。珍しいね」

「あっ・・・そうだね」

「おせち作りに忙しかったもんな。それじゃ、あっち行こ」


翔太はわくわくしていた。今年のプレゼントは服にした。爽子にぴったりな服を見つ

けたのだ。この後、いつもの人気のない場所でプレゼントを渡す。家でもいいのだが

今年中に渡したかった。


(爽子・・・気に入ってくれるかなぁ・・・・ん?)


頭の中でいろいろ考えていた翔太は繋いでいた手が引っ張られていることに気づいて

後ろを振り向いた。なぜか爽子が俯いて立ち止まっていた。


「爽子?」


すると、爽子は目をぱちぱちさせて複雑そうに翔太を見上げた。お互いの頭には雪が

しんしんと降り積もる。爽子は白い息を舞わせて言いにくそうに言葉を発した。


「あ、あのね・・・翔太くんはずっと二人で・・・居たいのかなって」

「え?・・・そりゃすっと一緒に居たいよ。爽子はそうじゃないの?」

「わ・・私もなんだけど・・・その二人で?」

「??」


爽子は赤い顔をさらに紅潮させて言った。

俺はその後、やっと今日の微妙な空気の理由を知る。いつも爽子が側にいるだけで、

プレゼントだと思っていた。でも今年は神様からのプレゼントが用意されていたんだ。


”3人になるよ”・・・と。


その時の喜びは表現できないものだった。爽子は俺の嬉しそうな姿を見てほっとした

ように微笑んだ。”子供はまだいいかな?”なんて言ってたから、突然の妊娠に躊躇し

ていたようだ。俺はもう周りなんか見えないぐらい感激して爽子を抱き上げた。


「やった〜〜うれしっ〜〜!!」

「わわっ〜〜翔太くんっ」

「あっ・・・ごめんっ!赤ちゃんっ・・・」

「ふふっ・・・大丈夫だよ。まだお腹に入ったばかりだから」


俺はほっとして爽子のお腹に手を当てた。嬉しくて、むず痒いような不思議な気分。

俺と爽子の子供。爽子の・・・と思うだけで、胸の奥がじわっと熱くなる。

その時、時刻は0時になり新しい年を迎えた。


「あけましておめでとう。爽子。今年もよろしくな」

「あけましておめでとう・・・翔太くん。今年もよろしくお願いします」

「お腹の赤ちゃんも・・・・おめでとう。そしてこれからよろしくね」

「翔太くん・・・」


爽子はもうぼろぼろだった。俺はそっと爽子の涙を拭う。

いつもはここでプレゼントを渡すのだが、身体を冷やしてはいけないと思い、爽子の

手を強く握り、絶対転ばせないようにと家に戻った。

プレゼントの服は春物だったから”来年は着れないかもっ・・・”と爽子は申し訳ない

顔で謝ったけど、そんなことどうでもいいに決まってる。それよりその後俺の頭に浮

かんだ邪念に自己嫌悪に陥ったけど・・・。


まだまだ実感が湧かないが、来年父親になるんだ。


「ねぇ、爽子?気が早いけど、子供の名前に”月”って入れたいんだけど」

「わぁ・・・いいね」


そう言ってベッド横の爽子は目を輝かせた。俺は爽子の髪を優しく撫でながら、爽子

の背後にある窓に目を向ける。月がきれいな夜だった。


そして、9月に ” 結月 ” と名付られる元気な女の子が生まれることになる。


毎年、爽子の生まれた日は神様に感謝せずにいられない。”爽子をこの世に誕生させて

くれてありがとう”と。でも今年はもう一つ神様からの贈り物をもらった気分だった。

俺はこの時の気持ちを一生忘れることはないだろう。


夜空に蒼く浮かんで見える月と共に・・・。



<おわり>

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あとがき↓

翔太の邪念は・・・分かりますよね(笑)爽子の誕生日ということでお話を書いてみ
ました。今年はクリスマスのお話も書けなかったしなぁ。さて、今年も終わりますね。
これで今年の更新は終りそうです。12月はあまり書けなくてごめんなさいね。
お正月暇が出来たら連載の続きでも更新するかも。今年も沢山のご訪問をありがとう
ございました。来年1月11日にでこのサイトも2周年です。お礼も兼ねて何か書け
れば・・・と思っています。そして100万アクセス企画ももうすぐ終了です。投票
の多かったお話を一つ書こうと思います。それからリクエストのあった”光平話”それ
と、野島ハルくんのお話ももう一つリクエストが来たので妄想中です。あと、高校生
のウブな話なんかも書きたいなぁ。それでは今年もお世話になりました。来年もよろ
しくお願いします。どうぞよいお年をお迎えください。