「君までもうすぐ」3 


風、爽が高校3年、大学が決まった後の話。たった一日の話です。それなのに

5話ぐらいまで長くなってしまい・・・。


* ありえない偶然で一夜を共にすることになった風早と爽子だが・・・?
最初は風早目線、最後のほうは爽子目線です。


こちらは、「君までもうすぐ」   の続きです。

以下からどうぞ↓














「ごゆっくお寛ぎくださいませ〜」


俺はどきどきしながら近くのホテルに入り、鍵をもらう。


「・・・・。」


ごくりっ。思わず生唾を飲み込んだ。

後ろの黒沼の様子を見れない。ホテルに泊まることになって、何の拒否もなかったけど、

実際どう思ってるんだろう?一夜を共にするわけだし。

一夜を・・・・!?


風早は、か――っと身体が熱くなるのが分かった。


黒沼のことを考え、足並み揃えて、付き合ってきたつもりだ。本当はもっと深い関係に

なりたいといつも思っていたけど、俺の下心と一緒とは到底思えなかったから。


(今夜我慢できっかな。やっぱ一緒にいない方がいいかも・・・)


エレベーターの中でも沈黙が続く。彼女も緊張しているのが分かる。


チ〜ンッ


「行こっ」


エレベーターが目的階に着いたのを知らせると、風早はそっと爽子の手首を掴んで部屋

に向かって歩き出した。そして、部屋の前まで来て、くるっと爽子の方に身体を向けた。

そこには緊張な面持ちで、がちがちな彼女。


違うんだ・・・・。こんな風になって欲しくなんかないんだ。こうやって一緒に居られる大切な

時間なのだから。


「黒沼・・・・大丈夫だよ」

「え・・・?」

「ずっと朝までいっぱい話そうよ」


風早が爽やかに笑顔で言うと、爽子の顔がぱぁぁと輝いた。


「う、うん!」


残念じゃないと言ったら嘘になる。だけど、彼女に無理をさせてまで前に進みたくなんか

ないんだ。だってこれからも一緒に歩いていけると信じているから。


風早は穏やかな表情で部屋のドアを開ける。


「!」


目の前にはど〜〜〜んと構えるダブルベッド。


(ごくっ・・・・)


風早は一瞬で先ほどの気持ちを覆される。

穏やかな表情は崩れ去り、一気に焦った顔になった。


(あ・・・あれっ??ダブルだっけ?)


横の黒沼をちらっと見る。胸の前に手を置き、嬉しそうな顔をしている。


「うわぁ・・・素敵なお部屋!」


黒沼からはさっきまでの緊張はあまり感じられない。さっきの俺の言葉でリラックスで

きたのであれば良かったけど・・・俺がやばいよ。


思わず、天井を拝む。理性との戦いの夜。


風早は天国の夜になるはずが地獄の夜に思えてきたのであった。



***********


一方、爽子は――――


さっきから言葉も出ない。こんな夜を過ごすなんて夢にも思っていなかった。

風早くんといるとどんどん欲張りになって、もっと一緒にいたいとか、独り占めしたく

なったり、私の中で初めての感情も生まれた。”触れたい”って・・・・。


爽子は風早の大きな背中を見て歩きながら、不思議な夜に思いを馳せる。


あやねちゃんが言ってた。


”『風早だって男だからね〜もっと先に進みたいと思うよ』”


”先に進む”?風早くんとお付き合いして1年半が過ぎた。夢のような時間はまだ続いて

いる。少しずつ彼のことを知り、少しずつ彼に近づいていく。それが嬉しかった。でも、

彼を知れば知るほど、様々な感情が生まれてくる。そしてどうしたらいいのか分からなく

なるの。もっと知りたい。でも・・・・何かが変わるような気がして怖い。


「黒沼・・・大丈夫だよ」


そこには私の大好きな笑顔。こうやって風早くんはいつも私に安心をくれる。このまま

の私でいいんだ・・・と思わせてくれる。


爽子は嬉しそうに部屋に入った。



<つづく>


「君までもうすぐ」  







あとがき↓

このままじゃだめでしょ。風早だけでなく爽子も決心しなくちゃいけない時が来るん
でしょうね。まぁ、風早はヘタレだろうけど。爽子の気持ちを無視して進める人じゃ
ないしね〜〜〜。ほんと最後まで見たいですよ。二人の行く末。
それでは、まだ続きます。よろしければまた遊びに来てください。

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