「Once in a blue moon」(103)


※ こちらは「Half moon」という話のオリキャラ(蓮)が中心となった話で未来話です。
爽風も出ますが、主人公ではないので受け入れられる方以外はゴーバックで。

★「Half moon」は 目次 から。
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98 99 100 101 102 の続きです。 

☆ 翔太達とのわだかまりが解け、自然に過ごせるようになった蓮。そんな一コマです。











・‥…━━━☆ Once in a blue moon 103 ‥…━━━☆











「お姫様と王子様は結婚して、幸せに暮らしましたとさ!終わり。さー寝るぞ」


夜、ベッドの上で本を読んでもらっていた結月は素直に蓮の言葉に従って布団の
奥深く入る。基本、我儘をあまり言わない結月をじっと見つめると蓮は言った。


「ゆづ、嫌なことは嫌って言ってる?」
「??」
「我慢したらソンするんだぞ」
「そん??」
「う〜〜ん」


布団を目深にかぶりながら純粋な目がきょとんと蓮を見つめた。


(似てるな・・・)


その目は彼女の目だ。損得を考えることない、周りが損だと思うことも彼女にとって
は学びと捉えるような気がして。そもそもこの世の中、何が得で何が損なのか分から
ない。彼女は正直に生きている。でも誰もがそんな風には生きられない。だからこそ、
特別な人なのだろう。きっとこの子も・・・


「れ〜〜ん??」


蓮は愛しそうに結月を見つめると、くしゃっと頭を撫で” ま、いっか ”と呟いた。
そして改めて結月に伝えた。


「ゆづ・・ありがとなー。もう、絶対ゆづの前から消えたりなんかしないからな」
「・・うんっっ!!」


結月は幸せそうに微笑んだ。
この小さな胸をどれだけ痛ませたのだろうと思うと辛い気持ちになるが、今こうして
ここに居て心を通わせている。それこそが償いなのだと思う。


「ゆづ・・またいつか一緒に見たいな。blue moon 」
「あおいお月さま?」
「うん」
「・・れんと見たい。またあの丘に行こうね!!」
「・・あぁ。きっと」


やはりあの夜は夢なんかじゃない。俺とゆづの中に存在する。これからもずっと・・・


* *


「よ、蓮。ゆづ寝かしサンキュ。もう一人で寝るけどな」
「いーだろ、今日ぐらい」


1Fに降りてきた蓮に先にリビングで飲んでいた翔太はからかい気味に言った。既に
テーブルには酒のおつまみが用意周到とばかりに並んでいる。


「・・相変わらずすげー」
「懐かしーだろ。爽子の料理が恋しかったんじゃないの?」
「お口に合えばいいけどっ・・・」


蓮が感嘆の声を上げると、翔太は臆せず飄々と言う。心のどこかに複雑な想いを抱え
ながらも変わらず接してくれる翔太に嬉しくなる。色づいた感情がないと言えば嘘に
なるけど、大切に思ってくれている、その気持ちだけで3人で居ることが苦しくなか
った。徐々にでいい。関係が壊れることはもうないのだから。二人もそのつもりで以
前と同じように振舞ってくれているのが分かって蓮は胸が熱くなった。


「まぁ、簡単な退院祝いっつーことで」
「禁酒してたから、やばいな。とことんまでいきそう。いかにも酒が進みそうな料理だし」
「ほ、ほどほどに今日はして下さいっ!!・・・」
「爽子に怒られてやんのぉ」
「−っさい!」


あはは〜〜っ


この和やかな空気をここにいる誰もが感じていた。自然に笑みが零れる。
かしこまるのが嫌だろうと配慮した翔太がそれとなくグラスを合わせて乾杯をしよう
とすると蓮がそれを制止した。


「一応・・挨拶させて」
「えっあ、あぁ」


蓮の改まった雰囲気に二人に緊張感が走る。二人はグラスを持ったまま固まった。


「えっと・・まず、入院の間、いっぱい見舞いに来てくれて、今日迎えに来てくれて、
 それから泊まらせてもらって・・ありがとう」
「な、なんだよ・・改まって。そんな親友なんだから当たり前・・「−よ」」
「・・当たり前じゃねーよ。大人になってこんな風にしてもらえるのはやっぱ当たり
 前じゃねーよ。いくら感謝しても・・足らないと思う」
「蓮・・・」


翔太と爽子は目尻を下げてそんな蓮を温かい眼差しで見つめる。


「・・というわけでもう我慢できないから、乾杯!」
「はは、よし、カ〜〜ンパイ」


チーンとグラスを重ねて3人は美味しいご馳走、美味しい酒を堪能する。以前は一緒
にいてもどこか暗い翳りを感じる蓮に寂しい気持ちになっていたが今はそれがない。
それぞれがしっかり大切なものを見据えて、諦めなかったからこそ、今があるのだと、
同じ気持ちで感じている。通じ合うというのはこういうことなのだ。


(良かった・・・)


爽子は蓮を見て嬉しそうに微笑んだ。


* *


他愛もない話で盛り上がり、騒ぎ・・こんな飲み方は仙台の時以来だった。少年のよ
うにはしゃいでいる蓮と翔太を温かく見守る爽子。そして夜もかなり更けた頃、蓮が
ぽつりと話し出した。


「ずっと話したかった。ゆづの話・・・聞いてもらえる?」
「!」


突然始まった蓮の話に二人に緊張が走る。翔太と爽子は真剣な目で蓮に答えた。


「二人に・・聞いて欲しかったから。上手く伝わるか分かんねーけど」


すると爽子は言った。


「伝わるよ。ちゃんと・・受け止めるから、聞かせて欲しい」


蓮は爽子の言葉に目を細める。翔太はそんな二人を見て、ふーっと呼吸を整えると深
く頷いた。


蓮はしばらく無言で二人を見つめた後、ゆっくりと話し出した。





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あとがき↓
やっとゆづの話・・と思ったら風早家の小話入っちゃいました。次はゆづの話。不思議
すぎるけど二次なので許して。一応全部書き上げたのでこれからは間隔短くUPしていき
ます!全部で110話です。