「Once in a blue moon」(82)


※ こちらは「Half moon」という話のオリキャラ(蓮)が中心となった話で未来話です。
  爽風も出ますが、主人公ではないので受け入れられる方以外はゴーバックで。

★「Half moon」は 目次 から。
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72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 の続きです。 

☆蓮の苦しみを理解しようとしてきた翔太だったが、自分自身が苦しみだったと知り・・・













・‥…━━━☆ Once in a blue moon 82 ‥…━━━☆












彼の彼女への愛は・・・
とてつもなく広くて真っ青な空のようだと思った。だけどその空には熱い太陽が燃え盛
っている。情熱的な愛。そんな風に思った。


庄司は改めて翔太の想いを目の当たりにし、蓮は究極なものに出会ったと思った。人生
なかなか出会うものではない。今まで沢山の人に出会ってきたが、この二人は特別だと
思った。二人の恋に憧れを抱いても不思議じゃない。現に妻の沙穂も二人の愛情の深さ
を知り、二人の人間性に惹かれ、自ら退いたのだ。
これをツインソウルというのだろう。二人はお互いの魂が惹かれあっているように思った。
でも蓮は憧れではない。


”心を揺さぶられる”


という感覚を味わったのだと思う。彼女と接している時に他の誰といても感じられない
温かさを感じたのかもしれない。その人の全部が欲しいと思った時・・それが恋に落ち
る時なのではないだろうか。そんな想いをせずに人生を終える人もいるだろう。だけど
蓮は出会ってしまった。


庄司は蓮のあの横顔を見た時から、こんな日が来るのではと内心恐れていたのだ。そん
な想いに出会えたことは奇跡だ。そんな奇跡に出会えたのに苦しむことになるとは。
きっと必死で忘れようとしただろう、なかったことにしただろう。
大事なものを二つも失ってしまうよりはと・・・


「・・・そう思うと、俺はどれだけ蓮を傷つけてきたのだろうと」


そして、同じ想いを抱いている男がここにも一人。
庄司は苦悩な表情で呟く翔太をせつない目で眺める。大事だからこそ悩み苦しむ。


(二人は優しすぎる・・)


だから、お互いを想い合い過ぎて自分を追い詰めていく。


「必死で苦しみから逃れようとしていた蓮に追い打ちを掛けるように瀬戸さんのことは
 本気で好きじゃないと責めよったこともありました。その本心に気づけずに・・」


その苦しみを翔太が一緒に背負えるわけがなかった。その時の蓮の心情を思うと庄司は
居た堪れない気持ちになる。そして今その事実に気づいた翔太の心情も・・・


「最終的には気づいても言っていたと思いますけど。そんな蓮は見たくないから。瀬戸
 さんに対してどうかと思うし」
「それは違いますよ」
「え・・・?」


翔太は庄司の言葉に驚いたように顔を上げた。庄司は穏やかな表情で言った。


「蓮さんは苦しみから逃れようとして麻美さんと付き合ったのではないと思います。確
 かに麻美さんのことを好きだったのだと思いますよ。ただ、爽子さんへの想いの方が
 強かっただけで」
「・・・」


翔太は呆然と庄司の言葉を聞くと、くしゃっと髪に手をかけ項垂れた。どうすればいい
か分からないとばかりに無言で項垂れる翔太を庄司は温かい目で見つめる。


「待ちましょう」


庄司は静かにそう言った。何の解決にもならない言葉だが今はそれしかないのだ。結局、
蓮自身が向き合ってこそ何かが変わっていく。翔太は顔をゆっくりと上げるとせつない
目をしてそっと頷いた。


「爽子さんは蓮さんの気持ちに気づいたんでしょうね。だから困っているのでしょう」
「・・だと思います。恋には鈍感な爽子が気づくということは蓮が告白したとしか考え
 られないんです。それが俺には信じられなくて・・なぜそんなこと出来たんだろう?
 そのきっかけって・・とそのことばかりが頭ン中をぐるぐる回ってて」


翔太は少し苦笑いをし、その笑みがすぐに消えた。


「・・爽子だけは絶対譲れないですから。例え蓮でも」
「・・・・」


庄司は強い意志を持った翔太の目をじっと見つめて考え込む。
確かに・・どう考えても蓮が想いを告げることは考えにくかった。あれだけ必死で守っ
ていたものを自ら崩すなんて。


「先生?」


翔太は黙り込んだ庄司の顔を不思議そうに覗き込んだ。庄司はハッとすると”すみませ
ん”と断り翔太にビールを注ぎながら言った。


「今はつらく苦しいこともきっと思い出になる時が来ます。人との出会いには必ず意味
 があります。でも人には繋がる縁と繋がらない縁があるように思います。どんなこと
 があろうと繋がる人は繋がっていくんです」
「・・・」


翔太は庄司の言葉を真剣な顔で聞いていた。そして考え込むように一点を見つめ無言に
なる。今は頭で理解していても気持ち的についていけないのだろう。


願わくば皆幸せになって欲しい。でもこの世の中、光と影があるのが現実だ。でもどち
らにも人はなりうるということ。どちらも必要でそうやって世の中は成り立っている。
だからきっと・・・


”『蓮さんが肯定できるような相手に・・・巡り合いますように』”


以前蓮にそう言った記憶がある。でもそれはきっかけを与えてくれるだけで本当の答え
は蓮が見つけ出さなければならない。それは蓮の修行であり、乗り越えなければならな
いことだ。翔太と向き合うこと・・それがテーマだったのかもしれない。
二人が出会った時からの・・・


「探さないで、風早さんの前に帰ってくるまで・・・蓮さんを待ちましょう」



それだけの時が必要ということなのだから





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あとがき↓

一応、庄司編終わり。蓮と翔太が向き合うまでもうすぐ。