「Once in a blue moon」(64)


※ こちらは「Half moon」という話のオリキャラ(蓮)が中心となった話で未来話です。
  爽風も出ますが、主人公ではないので受け入れられる方以外はゴーバックで。

★「Half moon」は 目次 から。
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☆ 美穂と対面した麻美。ついに抑えていた想いが爆発する。それはずっと麻美が向き合い
たくない醜い感情だった。麻美視点です。




















・‥…━━━☆ Once in a blue moon 64 ‥…━━━☆















自分の中にこんな感情があるなんて。この醜い感情と向き合う時がくるなんて。

でも、今の私は私ではなかった。いや・・・これも私なのだ。

自分が鬼のような顔になっていたとしても自分を止められなかった。麻美は感情のま

ま蓮に迫った。


「爽子さんが・・・好きなんでしょ?」

「違う」


即答する蓮に麻美は冷たい目のまま口角を少し上げる。


「好きなんでしょ?私に気を遣わなくていいよ。ね?ちゃんと言ってよ。美穂さんが

 言った通りだよね?」

「違う。どう考えてもそんなこと・・「ーだって・・っ」」

「理屈じゃないじゃん!人を好きになるって。蓮だって本気で人を好きになったこと

 があるなら分かるでしょ。感情だけには嘘を付けないこと」

「麻美・・今日はもう止めよう。明日ゆっくり話そう」

「やっぱり私からも逃げるの?ねぇ?蓮、なんで私と付き合ったの?美穂さんと別れて

 から誰とも付き合わなかったんでしょ?なぜ転勤になっていきなり私と付き合ったの?」

「麻美、落ち着いて」

「言ってあげようか?・・・蓮は畏れていたんでしょ、北海道に来ること。爽子さん

 の側に行くこと。だから私と付き合った。自分が壊れてしまうから。絶対掘り起こ

 してはいけない感情だから」

「・・・・」


蓮は何を言ってももう無駄だと思った。大きく息を吐いて悲しげな目を麻美に向ける。


「違うって言っても信じてくれないだろうけど、違うことを”そうだ”とは言えない。

 美穂の前で言ったことが全てだ。俺が大切な人は麻美だけだよ」

「・・・本当のこと教えてよ。ね・・・私、これ以上、苦しみたくない。苦しいのっ・・・」


麻美は声を振り絞るように言った。まるで悲痛な叫びのように蓮は感じて胸の奥に悲

しみが突き刺さってくる。


「蓮は爽子さんのことが会った時からずっと・・・好きなんでしょ」


ホテルの一室で哀しみの感情だけが漂っている。静寂が長く続いた。麻美は蓮の目を

一時も離さず見つめる。全てを見逃さず捉えたいというただ、それだけで・・・。

蓮は麻美の目を真っ直ぐ見つめて言った。


「・・・違う」


麻美は蓮の言葉を微笑を浮かべて聞いていた。自分ではそんなつもりはないが、口角

が自然に上がっている。あまりにも目の前の男が滑稽で。いや、自分が滑稽なのだ。

そして麻美は虚ろな目で一点を見つめると、ひとり言のように呟いた。


「・・・ゆづっちは・・・だから特別・・」

「え?」


蓮は聞き返したが、麻美はそれ以上の言葉を飲み込んでしまった。

その夜、最後まで認めない蓮と一緒にいるのが嫌だと、麻美は違う部屋を取ることを

申し出た。すると蓮が違うところに行くと部屋を出て行った。


パタンッ


「うぅぅ・・・っ」


蓮がいなくなったがらんっとした部屋の中、麻美の嗚咽が響く。


”『世の中・・・どうしようもないことがあるんだよ』”


美穂の前で蓮が言った言葉を聞いてしまった。その言葉は決定打以外のナニモノでも

ない。身を裂かれるぐらい悲痛な思いだと分かっていても自分は蓮を追い込む。


どうしようもない想いだから、私に逃げたの・・・?


仙台を楽しみにしていた。蓮とずっと一緒に居られるのではと夢見ていた。

でも、本当はいつかこうなることを畏れていた。だって私は真実から目を背けただけ

だったのだから。あの日の蓮の目を見た時から、こうなることを知っていたのに。

私が離せなかっただけ。



”『爽子ちゃん以外、みんな一緒』”


いっしょ・・・そう。一緒なんだ。

悔しいほど、美穂さんの気持ちが分かった。私はただ離せなかっただけなのだ。

本気で好きになってしまったから・・・。


その夜、きれいなハーフムーンが夜空に浮かんでいた。まるで半分のまま彷徨ってい

る二人の心のように・・・。





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あとがき↓

あぁ・・暗くなってきた。ここからどんどん暗くなる。最初に言っていた通りです。
ダメな方、スルーしてくださいね。でも基本この話は爽風の幸せに揺るぎはないで
すのでご安心を。明日は別マ発売日なのに、全く見れず、PC触れられずなので一日
感想遅れます〜〜!