「Once in a blue moon」(44)


※ こちらは「Half moon」という話のオリキャラ(蓮)が中心となった話で未来話です。
  爽風も出ますが、主人公ではないので受け入れられる方以外はゴーバックで。

★「Half moon」は 目次 から。
こちらは 「Once in a blue moon」 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19
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☆ 風早家と蓮カップルの食事会、麻美は現れるのか?今までと何かが違う麻美に戸惑う
蓮と爽子だが・・・? 



















・‥…━━━☆ Once in a blue moon 44 ‥…━━━☆















がやがや、わいわい


「すげー混んでる。やっぱ人気の店なんだな。良かった間に合って!」

「余裕だったじゃん」

「ごめんなさい・・・蓮さん。さっきから」

「あ・・ゆづ?」


翔太達が合流してしばらく広場で遊んだ後、予約した店に移動した。結月は久々に会

えた蓮の手をぎゅっと握ったまま離れない。そんな結月を見て爽子は申し訳なさそう

にしているが、翔太は少し皮肉っぽく蓮に言った。


「ゆづ、さみしそーだったよ。誰かさんがなかなかウチ来ないから」

「・・・マジで?」


麻美も蓮も1ヶ月来なかったので、結月はずっと二人を待っていたようだ。今回久々

に蓮に会った時、結月のはしゃぎようは普段見たことがないものだった。麻美が月2

回、風早家に来るようになってから二人に会えるのが結月の中で定着していたのかも

しれない。蓮はその話を聞くと複雑な気持ちになった。


純粋な心を傷つけてしまったのではないか・・・と。


蓮は結月の小さな手をぎゅっと握ると、結月の目線までしゃがみこんで言った。


「ごめんなゆづ。隣で食べよっか」


結月はぱぁぁっと表情を明るくしてコクコク頷くと、二人は和解したように笑い合った。

蓮は背後にいる翔太の視線を感じてニヤッと笑う。


「翔太、やかない、やかない」

「なっ!やいてねーし///」


わはは〜〜っ


「ところで・・瀬戸さんから連絡来た?」

「あぁ、翔太がトイレ行ってる間にメール来て、急用ができたって」

「え?そーなんだ」

「・・・・」


爽子はやはり少々不安になった。麻美のドタキャンは初めてだった。


(体調でも悪いのかな・・・やっぱり何かあったのかな・・)


「大丈夫。あいつ今忙しそーだから」

「蓮さん・・・」


表情が曇った爽子を見て、結月と遊びながら蓮がさらっと言う。自分よりも気になっ

ているはずの蓮に配慮してもらったと思った爽子は申し訳ない気持になった。そして

気持ちを切り替えて明るい顔で言った。


「そうだね・・・わぁぁ〜〜すごい料理!美味しそうだねっゆづちゃん」

「よっしゃ、取り行こ!」


今日のレストランは大人気のバイキングで予約が取れないことで有名だった。なので

偶然2ヶ月前に予約が取れ、5人で行くことを決めたのだった。麻美もとても楽しみ

にしていた。


「うめっ・・・。爽子、これもおいしいよ。ゆづもほらっ」

「ありがと〜〜〜おいしいねっゆづちゃん♪」


結月もぱくぱくと嬉しそうにバイキングで取ってもらったものを食べている。幸せそ

うな3人を蓮は穏やかな気持ちで見ていた。その視線に気付いた翔太は何気なく言った。


「そ〜いえば、最近瀬戸さんウチ来ないね。忙しいの?」

「・・まぁ、仕事というよりプライベートじゃね?この間も旅行行ってたみたいだし」

「へぇーどこ行ってたんだろ?」

「さぁ」

「・・・・」


蓮は表情を変えずにマイペースに食事をしながら言った。その様子に爽子は不安そう

に瞳を揺らす。麻美の話題を出すと妙な空気が流れることに翔太ももちろん気づいて

いた。普通彼氏なら、彼女の行った旅行先ぐらい知ってるものだろう。

美味しい食事、気の置けない仲間での楽しい会話。しかしその空間はいつもとは違っ

た。風早家に麻美が来るようになってすっかり5人の空気が出来ていた。爽子も翔太

もそして・・・蓮も一つぽっつりと空いた椅子を寂しげに見つめた。


何かが変わり始めている。


それぞれが何か今までと違う違和感を感じながらも楽しいひと時は過ぎていった。


* * *


その時麻美はー


待ち合わせ場所の向かい側ビル横に居た。そのまま動けず皆が移動した後も佇んでいる。

まだ、足ががくがくと震えていた。


どうしてもあの場に出て行けなかった。


「私・・・何やってんの」


麻美はその場にうづくまり、身体を抱えてひとり言を呟いていた。


ほんの10分前・・・・


****


仙台から帰ってきてこれから蓮との未来を頑張って築いていこうと決めていた。でも

実際、なぜか連絡できなかった。上手く接することができるだろうか?人のプライバ

シーに土足で踏み入った私を蓮は許してくれるだろうか?ものすごい罪悪感に苛まれ

た。そして・・・私は頭の中から追いやった美穂さんの言った有り得ない幻想を心の

どこかにまだ残しているのか・・・爽子さんに会うのが怖かった。今までと同じよう

に接することができるのだろうか?何か変わらないだろうか・・・と。


こんなことになるなら仙台に行かなければ良かった。


そう思ったりもしたけど蓮を少しでも知れたことは私にとって大きかった。美穂さん

にも会って良かったと思ってる。それにあの場に行けばまた前に戻る。

あの5人の空間に・・・。

そう信じていた。そのきっかけが今日の食事会だった。以前の私とは何も変わってい

ない。普通に現れたらいい。そう言い聞かせながら現地に向かった。


それなのに・・・。


* *


あはは〜〜っ


『ゆづったら大事な時に寝るんだもんなぁ〜〜』

『しょーがないよな、眠かったんだもんな〜〜ゆづ!』

『ふんっまた蓮とゆづでタッグ組んでやな感じ』

『出たよ、翔太のヤキモチ』


うっせ〜〜っあはは〜〜


待ち合わせ場所に遅れて来た私は皆の雰囲気を見て妙に懐かしくなった。

たった、1ヶ月の間会ってなかっただけなのに・・・。


”早くあの輪の中に入りたい・・・っ”


私は心からそう思った。やっぱりこの人たちと一緒に居たい、この先もずっと。

麻美は思わず涙ぐむ。


(泣いてたら変に思われちゃう・・・っ)


麻美はごしごしと涙を拭って、呼吸を整えた。そしてス〜〜ッと息を吸うと一歩踏み

出した。


「ごめんっ遅れ・・・・っ」


次の瞬間、麻美の目が凍った。


(え・・・・?)



この世のすべての時間が止まったかのように・・・動けなくなった。







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あとがき↓

いやぁ、恐ろしき本誌のパワー、今も引きずっております(*´д`*) 二次を書けるかな
と思ったほど。でも次号待ちきれない私は二次を書くしかない!この話も折り返し地点
にやっとなった感じ。ということはHalf moonぐらいいくのか??あぁ・・・コワイ。
でも妄想した時点で長くなる話だろうなぁと思っていたのですが、ここまでとは。長ら
くお付き合いしてくださっている方、いつもありがとうございます!