「はつこい」20

※ パラレル、オールメンバーは同じ。もちろんオリキャラ沢山出ます( ̄ー ̄)ニヤリ
※ 爽子と千鶴、あやねは同じクラス。風早は別クラスで交流がなかったという設定。
※ 爽子は高2の時に東京に転校してしまう。
※ 登場人物紹介は「17話」を見て下さい。


アキに連れて行かれたニューハーフの店に神楽が働いていた。そして人気NO1という
子がテーブルに来るが、姿を消してしまった。実はその子は翔太の大学の友達、大和
武だった。その事実に翔太は気づかず・・・?


こちらは 「はつこい」 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 1819 の続きです。


興味のある方は以下からどうぞ↓

























それからオリオンが帰ってくることはなかった。


「いったいどこ行ったんやろな。神楽が探したけどおらんかったって」

「ふぅ〜〜ん」


3人は店を出て帰り道を歩いていた。翔太はオリオンに何か引っかかったが、それ以上

追及することはなく、そのことは忘れていった。そしてアキは歩いている途中、知り合い

の女の子に会い、あっという間に二人を残して去って行った。


「・・・・・」

「・・・・・」


思わず黙り込む翔太と永遠。


「・・・さすが勝手男だな。アキさん」

「ま・・・でも憎めない」


永遠も”だな〜”と言って二人は思いっきり笑った。そして笑い合った後、翔太は

ふと真顔になった。二人の間に沈黙が走る。先に口火を切ったのは永遠だった。


「ずっと気になってるだろ?」

「え・・・・」


永遠は立ち止まって翔太を真っ直ぐ見て言った。


「爽子ちゃんのこと」

「!」


ネオン街の真ん中で、二人の男が真剣な顔で向き合った。



*********



ばたんっ


「オリオンちゃんっ!!どこ行ってたのよ!」

「・・・すみません」


先ほどの店ではやっと姿を現したオリオンに店の者は驚きの声を上げた。そしてママ

が言った。


「オリオン、仕事だからね。やる気あるの?」

「・・・はい」

「・・・じゃ、どんな事情があっても二度目はないわよ。分かってる?」

「はいっ」


オリオンは”すみませんでした”と深々と頭を下げた。そして業務に戻る。一番人気

のオリオンを待っている客はたくさんいるのだ。オリオンは客の相手をしながら、窓

の外を虚ろな目で見つめていた。


* * *


「なんか腹空かない?」

「・・・うん」


永遠に言われて、ネオン街からいつも遊んでいる街中へと移動して近くのラーメン屋

に入った。


ズルズル、ぐい〜〜〜っ


二人は黙々とラーメンを食べた。


「うまいな、ここ。龍んとこには負けるけど」

「龍?」

「うん、友達の店」

「ふ〜ん」


他愛のない会話が続く中、永遠はちらっと翔太を見るといきなり核心に触れる。


「俺さ、この間告ったよ」


ぶっっ!!


「ちょっ汚いなぁ〜〜〜」


翔太は思わず口に含んでいたスープを吹き出す。そしてまじまじと永遠を見た。


「早すぎるって?会って間もないのにって?」

「いや・・・」


翔太は戸惑った表情で飛び散ったスープを拭きながら返事した。


「だって可愛かったからさ」

「・・・・・」


素直にすごいと思った。なんてシンプルなんだと。


永遠は、大きく目を開け驚いた表情をしている翔太を見て苦笑いをすると”分かりやす〜”

とひとり言のように言った。


「俺は爽子ちゃんが好きだよ。時間なんて関係ないって思ったんだ」

「・・・うん。関係ないよな」


翔太はラーメンスープに顔を映しながら、自分に言い聞かせるように呟いた。


そう、きっと恋するのに時間なんて関係ない。知り合いだったからって関係ない。

好きな気持ちに先も後もないのだから。

翔太は爽子の笑顔を思い浮かべた。


「・・・永遠はすげーな」

「へ?」

「自分の気持ちに正直だ」


すると永遠はふっと笑って言った。


「・・・翔太がいなければ違ったかもな」

「え?」

「いや・・・・で、返事は気になんないの?」


どくんっ


翔太は胸の奥に一瞬鈍い音を感じた。でも視線を下ろさずに永遠を見つめる。


「・・・気になるけど、それは二人のことだろ?俺には聞く権利ないよ」

「はは・・・翔太らし。でもすでに付き合ってたとしたら?」

「え・・・・」


あはは〜〜〜〜〜〜っ


「??」


すると、永遠は思いっきりお腹を抱えて大笑いした。


「その顔、写真に撮っておけばよかった。はぁ〜〜〜〜おかしっ」

「な、なんだよっ!!」


翔太はぷぅっと頬を膨らませてあさっての方向を向いた。


「ごめんっ。でも初めてそんな顔見たもんで。・・・な、そんなこと言ってらんないだろ?」

「・・・・・」


沈んだ顔の翔太を見て、永遠は頬杖を突きながら少し情けなさそうに言った。


「・・・ない」

「え?」

「付き合ってない・・・というか伝わってない」

「え?告白が?」

「うん」


永遠にその時の話を聞いて、彼女らしいと思った。内心、ホッとしたのが正直な気持

ちだ。永遠がどうとかではなく、スタートラインに立ってない自分がこのままでは後悔

するのが分かっていたから。そして正直に話してくれた永遠に嬉しくなった。


「・・・サンキュな、永遠」

「別にライバルに礼言われる筋合いないけど?」


永遠がにやっと笑うと、翔太もくったくのない顔で笑った。二人の間にいつもの空気

が戻る。永遠はスープを全部飲み干すとふーっと息を吐き、今度は真剣な顔を翔太に

向けた。


「俺、本気だから。いくら翔太が好きでも引かない」

「!」

「・・・・好きだろ?」


翔太と永遠はしばらくの間見つめ合う。永遠の目は本気さを物語っていた。永遠が

正々堂々と向き合おうとする以上は、引くわけにはいかない。


翔太はこくんと唾を飲み込むと、永遠に負けないぐらい強い瞳を向けた。


「好きだよ。どうしようもないくらい・・彼女が好きだ」

「・・・・・」


翔太は自分の気持ちを初めて人の前で口にした。そして、”好き”という言葉を口に

すると、どんどん彼女への気持ちが広がっていくのを感じた。


”好き・・・”


しばらく沈黙していた永遠がにっこり笑って言った。


「じゃ、ライバルだね。よろしく」

「・・・ん」


永遠に握手を求められて、少し躊躇しながら翔太も手を差し出す。そしてそのまま

なぜか腕相撲になる。


「くっ・・・・翔太やるな」

「うぅ・・・永遠もっ・・・くっ」


二人は腕を振るわせながら真剣勝負をする。”う〜”とか”あ〜”とか言って唸って

いると、店長が”あの〜〜〜〜”と声を掛ける。


「「え?」」


二人が一斉に顔を上げると、店長が後ろを指差した。


「「わわっ!!」」


後ろには沢山のカウンター待ちの人の群れが二人を睨んでいた。翔太と永遠はお互い

顔を合わせて苦笑いした。


「勝負はこれからな」

「おう」


永遠が言うと、翔太が清々しい顔で答えた。


二人の恋の戦いは、今始まったばかり・・・。








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あとがき↓

何か一話が長いな。上手く切れない。さて、この話最後までいっちゃおうと思います。
30話ぐらいを目指して。どうか最後までお付き合いください。