「Once in a blue moon」(10)


※ こちらは「Half moon」という話のオリキャラ(蓮)が中心となった話で未来話です。
  爽風も出ますが、主人公ではないので受け入れられる方以外はゴーバックで。

★「Half moon」は 目次 から。
こちらは「Once in a blue moon」          の続きです。 


☆ 麻美は社内で蓮が見せた柔和な顔に驚いた。そして、翔太と蓮は今もお互い
   を思い合っていた。昼食後の続きです。

















・‥…━━━☆ Once in a blue moon 10 ‥…━━━☆


















★゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・



「知り合い?」

「いんや・・・・って何だよ?」


翔太が嬉しそうに笑っているのに気付いて、蓮は表情を変えずに返す。二人は食堂

から出て、別れ際立ち止まった。


「夏はもうすぐだなって思ってさ!!」

「・・・分かりやす」


伸びをして言う翔太を蓮は苦笑いをして見ていた。そして眩しそうに手を翳す。太陽

の光が翔太に似合う。窓から差し込んだ光と翔太の笑顔が重なり輝いて見える。

蓮は遠い目をしてあの夏を思い出す。


あの夏からもう何年経つのだろう。


あの頃の翔太・・・あの頃の自分。


この世に確かなものがあることを知った夏。その確かなものは今も輝いている。まるで

宝石の原石のように、磨けば磨くほど輝き続けるのだと、実感した。二人を知って・・・。


「やっぱ憧れるな・・・・」

「え?」

「いんや・・・こっちの話」

「?」


そう言うと、蓮は”仕事仕事〜〜!”と張り切って廊下を歩いて行った。風早はそんな

蓮を切ない目をして見つめると、蓮を呼び止めた。


「・・・ゆづ、ずっと待ってるからさ。もっと遊びに来てよ」

「・・・会いたいけどさ、邪魔もしたくね〜〜〜しな」


からかい気味にいつも蓮は言う。しかしそれが本心ではないことに翔太は気付いていた。

蓮の闇の部分・・・いつまで経っても自分が入ることはできない。


それは成育歴だったり、過去の恋愛だったり、色々な部分がある。それを全部受け止

めるなんておこがましい。しかし、自分ができることをしたい。蓮が苦しんでいたなら

少しでも助けになりたい・・・・。翔太はずっとそう思っていた。


蓮は翔太の優しい目を見て、相槌を打つように頷いた。


「うん・・・今度行く」

「ーおうっ!」


翔太は満面の笑顔で手を振った。


一方蓮は、翔太が受け止めてくれること・・・それは分っていた。誰よりも心のどこかで

受け止めて欲しい相手なのかもしれない。しかし、自分の問題は自分で解決するしか

ないこと悟っていた。そして、心のどこかでいつもあったこと。


” 俺とアイツは違う ”


太陽と月のような俺たち。だからこそ全部をさらけ出せなかった。そして・・・。


蓮は光の中を歩いていく翔太の後姿を翳りのある目で見つめた。


そんな蓮の姿を麻美はずっと目で追っていた。



*******



「今日の落語も最高だったね。私○○師匠好きだぁ〜〜」

「わ、私も・・・ゆづちゃんは?」


爽子に言われて結月も”うん、うん”と興奮気味に頷いた。


「ゆづっちさ〜〜全部分かってんだね」

「うん。ちゃんと分かってるよ」


爽子と麻美はすっかり落語仲間になり、月一回、同じ日に設定して落語を見に行き、

その後お茶や食事をするようになった。


「旦那さん、特に縛らない人なんだね〜〜夕食とかまでいいの?」

「大丈夫だと思う。いつもそう言ってくれるので・・・ありがたいです」


今日はお茶をした後、3人でショッピングでもして夕食も一緒に食べるということになった。


「でも、あの・・・もしよければなんだけど、ほんと、麻美ちゃんが嫌でなければなん

 だけど・・・っ」

「??」


緊張気味に拳を固めて言う爽子を麻美も身構えて見つめる。


「わ、私の家で、お食事しませんか??って・・・嫌だよねっ!!」


あわあわしている爽子を麻美はきょとんと見つめると、首を傾げて言った。


「え・・・普通に嬉しいけど?」

「えええ〜〜〜〜ほんと??じゃっ・・・今から帰って作りますっ!!」

「いいの〜〜〜?」

「う、うんっ。ゆづちゃん、嬉しいよね?麻美ちゃんが来てくれたらっ」


爽子に言われ、ゆづはぱぁぁ〜〜っと顔を輝かせてこくん、と頷いた。そして二人

で目を輝かせている。そんな二人の様子を見ていた麻美は思わず吹き出した。


「やっぱ・・・・爽子さん好き。何か年上って思えないね〜〜〜」

「あぁ・・・そうですよね〜〜!!ほんとお恥ずかしい・・・」

「いや、かわいいってことなんだけどね」

「か・・・かわいい??/////」


麻美はあたふたする爽子を柔和な顔で眺めていた。


なんてかわいい人なんだろう・・・。


私が川嶋蓮の次に興味が出たのが彼女だ。3つも年上なんだが、最初の印象と違って

かわいい。髪が真っ直ぐで黒くてきれいな彼女はもっと大人っぽい人だと思っていた。

知っていくと、なんでも一生懸命で自分に真剣に向き合う。そんな彼女の中には年と

か立場とか関係ないのかな?それとも自分以外の人間とは違う付き合い方をするの

かな?・・・と興味は尽きない。そして、知りたくなる存在。


ゆづちゃんのお父さんで爽子さんの旦那さんってどんな人・・・?


興味本位で探るようであまり聞けなかった。もともと人に聞けない方なので、興味ば

かりが進んでいた。正直、今日の誘いは嬉しかった。ずっと知りたいと思っていたから。


麻美は結月と手をつなぎ、爽子の家の方に向かった。

彼女の家は電車で30分ぐらいのところだった。閑静な住宅街にかわいい一軒家が

あった。そこは持ち家ではなく賃貸だそうだ。小さな庭には沢山の花が飾られていた。

すぐに彼女の家だと分かった。落語が好きなこと以外はあまり知らなかったけど、何

となく思っていた。花の手入れや料理が上手そうと・・・。


「なんか、爽子さんって絵に描いたような理想の奥さんだよね」

「え??そ、そんなことないよ〜〜〜っ。ど、どうして??」

「花や植木の手入れが上手そうだし、きれいにしてるし・・・」

「好きだけど・・・上手なのかな?でも、それが理想なの??」

「・・・う〜ん、どうしてだろ?確かに」


女の子らしいことが理想だというのは誰が決めたんだろう。でもきっと自然にそれが

似合う人だということを感じた。そんな彼女を旦那さんは好きなんだろうか・・・・。


鍵を開けると、結月ちゃんはさっとスリッパを出してくれる。


「わ・・・ありがとう。ゆづっち。気が効くね〜〜」

「いつもとっても助かるの!」


彼女は母親としてもとても素敵だった。ふんわりとしてかりかりしたところがなくて。

こんな人だからこんな子が生まれたのか。果たして逆なのか。分からないけど、見て

いて優しい気持ちになれる親子だった。こんな風に思ったのも初めてだ。


部屋の中はモスグリーンで所々に植物が飾られていた。家具もセンスがよく、居心

地の良い空間に麻美はすっかり魅せられてしまった。また出されたお茶も彼女らしく、

薬草入りの香りの良いアイスティーだった。


そして、麻美はリビングに飾られている沢山の写真たちに目を留める。そこには二人

の写真と結月の赤ちゃんの頃からの写真がかわいい写真立てにそれぞれ入っていた。


「あ・・・・」


麻美は思わず声を漏らす。


ぴったり・・・。


彼女の旦那さんはとても素敵な人だった。写真で見る二人はお似合いで、写真から幸

せそうな家庭生活が思い描かれた。


「素敵な旦那さんだね」

「えっ??あわわ・・・そうなの////」


恥ずかしそうに言う彼女は、私の言うことを素直に肯定した。それが自然で彼女らし

いと思った。ますます会ってみたくなる。でも写真を見ながら何かが引っ掛かった。


なんだろう・・・。


「これ手作り??」

「そうなんだけど・・・大丈夫かな?」


まもなくして彼女が手作りクッキーを持ってきてくれた。一口食べるとまるで魔法に

かかったように幸せな気分になる。


「おいし・・・・」

「良かった〜〜〜!!」

「こんなおいしいクッキー食べたの初めてかも・・」

「う、嬉しいです〜〜っ」


彼女はぱぁぁっと顔を赤らめて言う。隣で食べてるゆづちゃんも幸せそう。何だろう

この空間。居心地が良すぎる。


27年間生きてきて、周りが”結婚”のことで騒いでも特に意識したことはなかった。

結婚した友達の家に行っても何も思わなかった。逆に生活を感じて疲れた。

初めてだ・・・。こんな気持ちになったのは。ここにはアルファー波というのかあふれ

ているような気がした。



麻美は夕暮れ時に風に揺れるレースのカーテンを、お茶を飲みながら眺めていた。

その表情は会社では見せない穏やかな顔だった。










「Once in a blue moon」 11 へつづく


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↑マニアックすぎますが、よければ感想ください(* ̄ー ̄*)





あとがき↓

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万アクセスになったら何かやりたいなぁ〜〜とは思ってるのですが。考えておきます。