「Once in a blue moon」(8)


※ こちらは「Half moon」という話のオリキャラ(蓮)が中心となった話で未来話です。
  爽風も出ますが、主人公ではないので受け入れられる方以外はゴーバックで。

★「Half moon」は 目次 から。こちらは「Once in a blue moon」        の続きです。 


☆ 瀬戸麻美は転勤してきた蓮に興味を持った。一体瀬戸麻美とはどういう女性なのか?
   麻美目線が続きます。
















・‥…━━━☆ Once in a blue moon 8 ‥…━━━☆



















*******



「瀬戸さん、明日同期会があるんだけど今回はどう?」

「あ・・・ごめんね、明日は用事があるんだ」

「そっか、分かった〜〜〜」


同期の女子が気を使って誘ってくれる。でも本当に用事があった。頑なに飲み会に参加

しないとかではないが、確かにあまり好きな方ではない。一人を好む自分に友人達には

”人との付き合いも大切だよ”と助言されるが・・・・。


『やっぱ瀬戸さんって付き合い悪いよね』

『何考えてるか分かんない。きれいな子だけど近づきにくいよね』

『一人が好きなんじゃん・・・』


(聞こえるっつーの)


別に一人が好きなわけではなく、上辺の付き合いが嫌いなだけなのだ。

それに、その用事は私の最も大切なことで絶対に外せなかった。



* * *



「昔、番町に青山鉄山という御武家さんの屋敷があった。そこに器量よしの腰元のお菊さん

 という女の人がいたわけだ。怖いもの見たさで、みんなで出掛けた。井戸の回りで待って

 いると、丑三つ時に、陰にこもって鐘が「ゴォ〜〜ン」と鳴って・・・」


わははは〜〜〜っ


麻美は落語を見に行くのが趣味だった。大学の時は落研に入っていた。

月一回の楽しみを麻美は満喫していた。この日はその”落語の日”で有給まで取ってい

のた。だから夜の飲み会に行くはずもなかった。


「あ〜〜〜面白かった」


その後に寄席の近くにお気に入りのカフェがあり、そこでお茶をするのが定番になって

いた。落研時代の友人と時間が合う時は一緒に行くが、社会人になってから合わない

日も多いので一人で行くことも多かった。この日も一人だった。


麻美はお茶を飲みながら、そこでいつも見かける親子をこの日も見つけた。


(また来てる・・・好きなんだな)


会社以外では人にも普通に目を向ける。人間ウォチングは結構面白い。

子どもは3歳ぐらいだった。いつも思うがとても大人しい女の子だ。そして母親が今日

の落語の話をしているのをすごく楽しそうに聞いている。やっぱり血は争えずというと

こか・・・。と小さい子が落語に興味を示すことが珍しくて、思わず微笑ましくなる。麻美

は特に子ども好きなわけではないのに関心を持っている自分に違和感を感じていた。


(・・・あっ)


すると、その子と目が合った。そしてその子はすくっと立ち上がると自分の方に

歩いてきた。思わず動作が止まった。


(え・・・?)


「あっ・・・ゆづちゃんっ??」


母親らしき女性もその子の行動に驚いたように後を追いかける。


「え・・・・?」


するとその子は一枚のCDを麻美に差し出すとにっこりと笑った。


「あっ・・・わわっゆづちゃん、だめだよ〜〜〜っす、すみませんっ」

「あの・・・?」


麻美は困惑気味に追い掛けてきた女性を見上げた。女性は長い髪を揺らして、恥ずか

しそうに言う。最初の印象はきれいな人だけど近づきにくい感じ。でも話しているうちに

印象は変わった。


「・・・たまたまラジオでやっていた落語をまねしてやってみた時に、娘が大喜び

 するので、録音してみると気に入って持ち歩いて・・・」


彼女は娘が差し出したCDを見ながら必死で説明していた。不思議なほど警戒心は全く

感じなかった。


「落語・・・するんですか?」

「いやっほんと、見よう、見真似で・・・お恥ずかしいっ!!でも大好きなんです」

「私も・・・大好きなんです」

「もしかして、今日の講演を見られた後ですか??」

「そうですっ!!」


思わず興奮して言うと、彼女は目を輝かせて、今日の落語の感想を話し出した。

私も大好きな落語だったので、彼女と夢中になって話していた。

いつの間にか私の中で彼女の印象が ”かわいい人” に変わっていた。


初めて会った気がしなかった。不思議なほどすぐに打ち解けた。そこには何の打算もない。

正直人を見る目には自信がある。好きなものが一緒というだけではなかった。直感で彼女

と友達になるような気がした。彼女の目があんまりにもきれいだったから・・。嘘偽りのない

彼女の目に惹かれたのかもしれない。そして不思議なほど引き寄せられる”ゆづ ”と呼ば

れた子供に興味を持ったのかもしれない。


それが  ”風早爽子” との出会いだった。



そして、彼女との出会いが私の人生に大きく関わっていくことになるとは、この時はまだ

知らなかった。









「once in a blue moon」  へ












あとがき↓

麻美のモデルは「砂時計」という漫画を描いた芦原 妃名子さんの今の話「Piece」の主人公の
女の子です。クールな感じだけど、実は熱いという。私が出すオリキャラは漫画の中のモデル
があるものもあればないものもあります。つまりテキトー( ̄0 ̄; しかぁ〜し、今月号の別マは
読めば読むほど深くて難しい。風早くんの弱さも含めて私は好きです。人間らしいから。そして
いかにも”少女マンガ”ではないのが好きです!

※ 二次のコメレス遅くなってすみませんっ。コメント欄にお返事しています。拍手コメント
  をして下さった方はもう少しお待ちくださいませっ!!感想とても嬉しいです。