「Half moon」(56)

社会人の二人の物語。オリキャラ祭り。オリキャラ紹介⇒(1)をご覧ください。
風早との電話を切った後、爽子は・・・?
こちらはHalf moon          10 11 12 13 14 15 16 17  18  19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29  30 31  32 33 34 35 36 37  38 39 40 41  42 43  44 45 46 47 48 49  50 51  52 53  54 55 

の続きです。
それではどうぞ↓


















************



あれから爽子はどうしていいのか分からず、ただ街を歩いていた。


(か・・・帰らなきゃ)


”「今は・・・会いたくない」”


風早の声が頭に残る。自分が彼を傷つけたという思いだけが残る。私のことで傷ついて欲し

くなんかない。爽子は風早が傷ついていることが一番つらかった。どうしてこんなことになった

のか・・・。必死で考えてみる。でも考えているといつも同じ思考に戻る。


”「私のこと・・・嫌いなった?」”


ただ単に自分のことを恋愛感情で見れなくなったのだと。恋愛にちゃんとした理由などな

いことを知っている。好きになるきっかけが自然にやってくるように終わりも自然にやって

くるものなのかもしれない。

爽子はその思考になると、やはり涙を止められず、瞳一杯に涙を浮かべた。


「うっ・・・・・うぅ」


風早と付き合っているという事実が、爽子にとって当然ではなかった。爽子の中でいつも

感謝に溢れていた。一緒に居られることのキセキ・・・・。いつまでも夢の時間は続かない。


爽子は自分の中で相対する真逆の二つの感情に戸惑っていた。当たり前ではない幸せ

の終わりを受け止めないといけないという感情と絶対離したくないという感情・・・・。


「ううっ・・・・ぐすっ・・」


”『今の状態をどうにかしたいなら、自分でどうにかするしかないんだよ』”


あやねちゃんに高校時代に言われた言葉・・・。でもどうにかできるのかな??どうすれば

いいのかな・・・。


爽子はただ、どうすればよいか分からず、街を彷徨っていた。その時、携帯音が鳴った。

爽子は涙で一杯になった目をぎゅぎゅっと手で擦ると、かばんに手を突っ込んだ。


ピッ


「・・・はい、もしもし」

『黒沼さん・・・?』

「あ・・・はい。」


電話を掛けてきたのは沙穂だった。爽子は今の感情を必死で押さえ込んで電話に出た。


『・・・・風早・・・帰ってきた?』

「え・・・・?」


爽子は状況が見えず、沙穂の言うことを必死で理解しようと頭を回転させた。沙穂=風早

がどうしても結びつかなかったのだ。しばらく考え込んだ後、爽子は口を開いた。


「えっと・・・あのぅ〜〜よく理解ができないんですが・・・」


沙穂の言っていることが分からず、とりあえず聞いてみた爽子は、沙穂の次の言葉に愕然とする。


『・・・・風早、昨日、私のうちに泊まったから』

「・・・・・・」


爽子の思考が止まった。今までずっと頭の中でぐるぐると繰り返し回っていたこと。


”「私のこと・・・嫌いになった?」”


すでにマイナス思考に陥っていた爽子は沙穂が意図する訴えをそのまま感じ取った。

普段の爽子なら、とんちんかんな思考に発展しがちなのだが、この時はまさに男女間

のものだと分かった。


『・・・・かなり体調悪そうだったから心配で・・・』


無口な爽子に追い討ちをかけるように沙穂は話を続けた。


『朝、帰ったんだけどね』

「・・・・・・」


電話からは緊張感が漂う。沙穂はごくっと唾を飲み込んでしばらくの沈黙の後言った。


『黒沼さんが・・・・風早の彼女だって分かってるけど・・・・。私・・・・。もう止められないの。

 風早のことが・・・・・好きなの』


爽子は携帯を当てている耳からはっきり聞こえた言葉を、まるで現実のものではない

ように聞いていた。



***********



「さて、終わりっ!」

「・・・・・」


荷物をまとめた爽子はかばんを抱きしめて、一点を見つめた。

あれから爽子は何も言えなかった。ただ沙穂の言葉を受け止めるしかできなかった。

爽子は風早を純粋に想えば想うほど、自分にとって”彼女”という言葉は肩書きでしか

なかった。ただ、爽子の中にあるのは”好き”という気持ち。ずっとその気持ちは変わ

らなかった。そして風早も同じ気持ちいるということ。それが崩れたのであれば、今は

前に進むことができない。


とにかく気持ちを届けたいと思っていた爽子の気持ちは消えていった。


まとめた荷物を持ち上げて服を整えると、さっと立ち上がった。部屋をぐるっと見渡す。

色々な思い出の詰まった部屋を爽子は哀しそうに見つめると、静かに目を瞑った。

そして、気持ちを切り替えるようにアパートのドアを閉めた。


「・・・・・・」


がちゃがちゃっ


鍵を閉めると、合鍵をもう一度強く握りしめ、ポストに入れた。











あとがき↓

いよいよ、次回でちょっと休憩になると思います。また気分乗ったら書きます。暗い場面

で終わってすみません。嫌な方はもちろんスルーでお願いしますね!!

※ レスに関してですが、皆様のご意見の中に、わざわざ拍手コメントで一日使うのは

という意見がありましたので、コメント欄に返信させてもらいました。すでにレスさせて

もらった方以外で、コメントを頂いた日のところに返信してありますので、よければ見て

頂けたらと思います。何回かコメを下さった方にもその日ごとにお返事していますので、

見てくださいませ〜〜〜!返信不要と書かれた方はお返事を書いてません。

どうぞよろしくお願いします。


Half moon 57