After Glow 4

オリキャラ主人公、爽風CP揺らぎなし。爽子は新任の高校の保健の先生、風早は大学を
卒業して家業を継ぐという設定。原作高校卒業後のパラレルです。そしてただいま、風早
アメリカ在住中。


☆九条が気になっている爽子。それには訳があった。その訳とは・・・?4月に遡ります。


この話は ★ After Glow 1 2 3 の続きです。










桜の花びらがちらちらと舞う、この季節になると必ず思い出す。
私の中でそれは一番キラキラと輝き、色褪せることのない思い出。


花びらに透ける日の光を通して、くったくのないお日様みたいな笑顔が重なる。
その笑顔はいつも弱気になった時に”大丈夫”と背中を押してくれた。


今までも、きっとこれからもずっと・・・





After glow 4











「じゃ、行ってきます」
「がんばってね!ご馳走作って待ってるからね」
「爽子は・・大丈夫だ!」
「ありがとう・・」


生徒の前に立つ初日。爽子は緊張した面持ちで両親に見送られて家を出た。母はいつも
と同じくにこやかに。父は爽子と同じく堅く笑顔が引きつっていた。札幌の大学に行く
ことになった爽子を泣く泣く送り出したのが4年前。長い4年を経て地元の高校に就職
が決まった娘と再び一緒に暮らせるようになった父はかなり浮かれていた。


「うぅ・・っ」
「やだお父さん、泣いてるの?」
「爽子・・立派な社会人だ。あんなに大きくなって」
「そうね・・一緒に住めるのもあと少しかもね」
「・・・ん?何言ってるんだ。帰ってきたところなのに」
「だってねぇ、もうお嫁に行ってもおかしくないし〜〜♪」
「・・なっ!!しゃ、社会人になったところじゃないか!」
「さってね〜〜。さぁさお父さんも会社遅れるわよ」
「あ、あぁ・・」


母陽子はショックを受けている夫の背中を見て、ペロッと舌を出した。でも本当にそう
思う。高校の時に初めて会った娘の彼氏は真剣に娘を想っているのが分かった。この縁
は先まで続いていくのではとその時に直感していた。まだ将来を確信しているわけでは
ないが、その証拠に遠距離となった大学4年間も変わらず愛を育んでいる。それに陽子
は娘が風早くん以外の男性を好きになるとはどうしても考えられないのだ。


「でも本当にすぐよ・・あなた。覚悟してね」


陽子は目を細めながら夫を見送り、そう呟いた。心なしか夫の背中が弱弱しく感じた。



* *



「あ・・きれい・・」


爽子は学校近くの大きな桜の木を見上げた。ちらちらと花びらが舞う。毎年、この光景
を見ると風早との出会いを思い出す。あの笑顔と桜の花びら。


「風早くん・・・がんばるね」


初日、正直ドキドキしている。生徒さんに怖がられないかな?困らせないかな?・・・。
そんな不安と同じくらい実は期待もある。最初に出会う生徒さんはどんな人なんだろう。
いつもこんな時、風早を思い浮かべて勇気を出していた。大学に入る時もそうだった。


「よし!」


決意新たに爽子は目に力を入れて意気揚々と歩き出したその時、足元に何か違和感を感
じた。


「あっ・・!」


そこに居たのは人懐っこい縞模様と子猫だった。足にすり寄るように甘えている子猫に
爽子の顔は破顔する。動物好きなのだが怖がられることが多かった爽子は嬉しくなり、
恐る恐る子猫を抱き上げようとした。


「来てくれたの?・・ちょこっと抱っこしていい・・かな?」


ドキドキしながらそっと手を出すと、その瞬間、子猫は爽子の手から抜け出し、道路に
走っていってしまう。


「わわっ・・!!」


そこに車がやってくる。その瞬間、まるでスローモーションのようにゆっくりになり、
必死で手を伸ばすが届かない。


ドクドクッ・・


(もう・・ダメッ!!!)


爽子は思わず目をぎゅっと瞑った。身体を強張らしたまましばらく目を瞑っていた。
力を入れた目を怖々開けると、目の前には特に変わりのない風景。胸のドキドキだけ
がリアルに響く。


(あれ・・?)


すると、向こう側の道路で着任先となる学校の制服を着た男子がその子猫を抱いてい
た。遠くてよく見えないが少し服が汚れている。


「お前、危ないぞ。自分の身は自分で守らないとな・・」


そう呟いた男子生徒の眼差しは優しかった。明らかにあの子猫を助けたのはその人だ。
何も出来なかった自分とは違い、子猫の命を守った咄嗟の行動力と優しさに感動して
しまった。


(なんていい人・・・)


桜の木の陰に隠れながら、爽子は憧れの眼差しでその男子を見つめていた。
その男子が”九条慧”だと言うことを着任後知ることになる。なので爽子にとって九条は
初めて出会った生徒であり、特別な存在なのだ。しかしあの時の優しい目をその後見る
ことはなかった。保健室の窓から見る彼の目は何だか投げやりで、冷たい目に見えた。
いつも一人あの木陰に佇む彼は何を抱えているのだろうか?あの優しい目を見ることは
もうないのだろうか?もう一度見たい・・・爽子はいつしかそう思うようになった。



* *


あれから2ヶ月が経過し、新緑の爽やかな季節からムシムシした夏に突入しようとして
いた。相変わらず保健室から見えるあの人は涼しげに木にもたれかかって本を読んでいる。


がさっ


「あの・・・」


その人物は何度目かになる訪問者の姿を確認することもなく、いつもと同様に本から視
線を外さずに言った。


「・・なんですか。また襲われたいんですか?」
「襲っ・・??」


爽子は最初に声を掛けた日から諦めずに九条に会いに行った。特に何をするわけでもな
い。日常の話をするだけだ。九条も大きく拒絶することなくその会話に付き合っている。
爽子はその真意は分からないが会話できることが嬉しかった。”襲う”と言う言葉に動揺
しながらも平常心を保とうとする爽子の様子を九条はチラ見するとふっと少しポーカー
フェイスが崩れる。本で顔を隠しながら口角を上げた。


「い・・いいですよっ!・・受けて立ちます」
「そんなこと言っていいんですかねーあの時、足が震えてたの知ってますよ」
「うぅ”・・そんなことありませんっ!お、大人なので・・」
「そーですよねぇ、あんなことの一つや二つ」
「う”っ・・」


少々涙目になりながらも必死に向き合うとする爽子の反応を九条は明らかに楽しんでい
た。爽子は知らなかった。九条がこんな風に関わるのは爽子だけだということを。二人
の関係に少しずつ変化が現れていた。



After glow 5













あとがき↓
君トド24巻見ました〜〜♪ 以下、ネタバレあるので要注意!!



もう、たっぷり爽風でしたねぇ。ラブラブ。やっぱこの二人いいわぁ💛風早くん、どんだけ
好きなの〜〜??って再認識した巻でもありました。というか風早君純粋すぎる。そして二
次でもあるように、その先のことをちゃんと心配してましたね。間違いなく、爽子はこれか
ら開花すると思われますよ。不安をまだ消化しきれてない、でも爽子のためには札幌の大学
に行った方が良いに決まってるし、やりたいことを応援したい。その葛藤を持ちながらも最
後に爽子に言う所、なんか・・せつなくて泣きそうになりました。先のことなんか誰も分か
らないし、絶対なんてこの世にない。でもたまらなく好きで、自分の中に閉じ込めておきた
くてもがく風早くんがやっぱ二次の創作意欲を生んだのだと改めて思いました。そして最後
の学校祭で爽子は皆に受け入れられてた。それが本当に良かったなぁ・・・と思いました。
風早の言う”刷り込み雛”説。うん、みんなそう思ってました(笑)本人も分かってたのね。
見つけられたら最後、爽子を好きになる人は本気になる人だよね〜〜。いやぁ心配心配。
しかし風早が爽子を好き過ぎてなんか痛くなった巻でした。次巻はもっと痛くなるのかなぁ。
別マ見たくなったけど、楽しみはとっておこう・・・。ちず龍もいい感じ。龍って肉食だよ
なぁ。そしてあやねは完全にピンに惚れとるな。いやぁ結局こうなるかぁ。これも先が楽し
みだよ。くるみの先もね。ドキドキ、せつない、あったかい・・・これが君トドだなぁ
とにかく待て!次巻でした。