「大人のキス」

本誌を見ていて書きたくなった話。キスがテーマです。ちょっと関係が進む二人の話。
短編です。初めてシリーズに入れたいと思います♪
よければ以下からどうぞ↓


















「大人のキス💛」







高校生の時、初めてのキスをした。ドキドキして心臓が破裂するかと思った。軽く触

れるキス。その感覚は忘れることはない。好きな人とキスすることがこれほど嬉しく

って暖かい気持ちになるものだって知った。

あれから4年、私たちは大学4年になった。お互い就職も決まり、穏やかな冬を迎え

ている。あのキスから何度キスを重ねたかな・・。どの場面も思い出してはドキドキ

するの。でも最近ちょっと違う。彼の顔を近くに感じたとき、心臓が本当に破裂した

んじゃないかと思うほど、痛くなる。きゅ〜〜んっと。

だってその顔は・・・


「爽子・・・」


どくん・・・


お互い実家から通ったので通学時間は長い。この日も遅くなったので風早くんは私の

家の近くまで送ってくれた。いつも別れる裏の公園で彼は立ち止った。そして私に向

き合うと彼の熱い目が私を見つめていた。その目に耐えられなくて私は思わず目を逸

らす。


「あ、ありがとう・・いつもごめんね、遠回りなのに」

「そんなの全然・・むしろ少しでも長く一緒に居たい」

「私も・・・」


暗くて良かったと思う。だってきっと顔がすごいことになっている。恥ずかしくて彼
の顔を満足に見れない。


「・・じゃ、また明日」

「う、うんっまた明日」


なぜかホッとしている。でもなんだか胸にぽっかり穴が開いたみたいで。最近、よく

分からなくなる。自分の気持ちが。


でも・・・


別れ際、彼の寂しそうな表情に気づいて思わず服の裾を引っ張っていた。


「爽子?」

「あ、あの〜〜っそういえばゼミの高橋くんも就職決まったんだって!」

「へぇ〜マジで!どこに?」


別れがたくて思いついた話題を振ってみたのだけど、それが墓穴を掘ることになる
とは・・・!


「それがびっくりなんだよ〜〜私の内定先の会社の近くなの」

「え・・・」


(・・・アレ?)


俯いたまま黙り込んだ風早くんに私は何か変なことを言ったか思い出してみる。


(えっと・・なんだっけ??)


「か、風早く・・・んっ!?」


一瞬真っ暗になった。気づいたら風早くんの熱い唇の感覚を覚えた。そして・・・胸

が破裂しているような感覚。


「・・・んっあっ」


深くて長くて熱いキス・・・口の中に感じた舌の感覚に体の力が全部抜けていく。頭

が真っ白になる。


(うわぁぁ〜〜〜っ////)


触れるだけのキスから、最近・・・変わってきたキス。これが大人のキス??


「んん・・・っふわぁ・・・っ」


唇がやっと離れると私は大きく息を吸い込んだ。彼の熱い目がまだ近くにある。いつ

の間にそんなに大人になったのだろう。最近の風早くんの表情に私はドキドキが止ま

らなくなる。すっごく色っぽくて・・・


ドキドキ・・ドキドキ


(どうしよう・・ドキドキが止まらない)


「・・ごめん」

「え?」

「嫉妬しちゃった」


その顔はいつもの風早くんだった。少し照れたような真面目な顔に私は思わずホッと
する。でもドキドキは止まらない。


「こんなキス・・・いや?」

「・・・」


違う・・・私も本当は求めている。でも変わっていくことが怖かったんだ。大人にな

ることが。

爽子は頭を横に振った。そして頬を染めて風早を見つめた。


「いや・・じゃない。ただ・・・」

「ただ?」


風早は心配そうに爽子の顔を覗き込んだ。


「ド、ドキドキして・・・心臓が壊れるんじゃないかって///」

「////」


風早は一瞬、顔を手で覆って髪をくしゃっとすると、今度は爽子の口に軽く触れる

キスをした。


「!!っ」

「だ〜か〜ら、もう我慢できなくなるんだってっ!!」

「えっ??」


ぎゅっ


風早は爽子を抱きしめた。真綿に包み込むように優しくでも強く。そして爽子の髪

を優しくなでながらくぐもった声で言った。


「爽子といるともっと、もっと・・って欲張りになっていく。全部欲しくなるんだ。

 好きだから・・・」

「私も・・・」


そう、私もどんどん欲張りになっていろいろ期待していたんじゃないかな。知らな

い風早くんを知りたくて・・・


「好きだから。もっと知りたいの」

「え?」

「違う風早くんを///」

「そ、それって・・・///」


風早は一気に脱力して爽子に体を預けると、しばらくの間の後、爽子の耳元で囁く

ように言った。


”『じゃ、もっと近づいていい??』”

「〜〜っ///」


そのあと、私はどう気持ちを伝えたらいいのか分からなくなってしまって頷くのに

精一杯だった。そんな私にお日様みたいに笑ってくれる風早くん。

キスも形を変えていく。近くに風早くんを感じられるキス。彼の熱い吐息、表情に

ドキドキしてまだうまく応えられない私だけど、風早くんとなら新しい扉を開くこ

とは怖いことじゃない。風早くんとなら・・・


「いつか・・慣れるね、このキ、キス///」

「えっ!///」


すると、風早は悶絶するようにしゃがみこむと上目遣いに爽子を見上げてにっと笑

って言った。


「じゃ、もっと練習しなきゃね」

「〜〜〜っ///」


私のことを無意識で理性を崩してくれると風早くんは言うけれど、風早くんもそう
だと思う。いつもやられてしまうの。その笑顔と熱い瞳に。
そして”もっと・・”と求めてしまうの。大人のキスの先も全部


「大好き・・」


風早くんと一緒に・・・


二人はお互いおでこをくっつけて笑いあった。




≪おわり≫

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あとがき↓

またまたよくある話ですみません。でも大人のキスの話を取り上げてなかったかなと。
一応初めてシリーズに入れておきます。